学際に降り立つ、隠忍

 

 

 

学園都市、麻帆良。この都市は今、都市ひとつ丸ごと行う、学園祭が行われていた。

 3日間で40万人は訪れるその学際は、規模からいえばもはやブラジルのリオのカーニバルに匹敵する。

 そんな学際最終日、例年よりも派手に行われた最終イベント。

 火星からの侵略者に対抗して麻帆良を防衛せよというイベントは、大勢の参加者と共に大成功で終わった。

 実はこのイベント、裏では魔法使いという裏世界の人間たちによる、ある1人の世界を変えようとした少女との小規模戦争であった。『世界樹』と呼ばれる百メートルを越える大きな大樹が綺麗に発光し、この時に願いが叶うとされる樹。

 膨大かつ特殊な魔力が最大発光量を記録した瞬間、少女・超鈴音と子供教師のネギ・スプリングフィールドとの対決は終わった。

「我々学園防衛魔法騎士団の、完全勝利です!!」

 綺麗な花火が夜空に打ち上げられ、世界樹は紫の光を輝かせて綺麗に彩る。

 戦いでボロボロになったネギや超鈴音、そしてその仲間である明日菜・刹那・木乃香・夕映・ハルナ・古・小太郎。

 彼等は激闘の末に勝者となったのだ。

 生徒たちの大歓声と共に勝利の実感が湧き、皆にも笑顔が灯る。

 空に浮かんで見物していたエヴァンジェリンや学園長の近衛近右衛門は、酒を片手に楽しそうに見物していた。

 人々は綺麗な世界樹に酔いしれ、そして大成功を収めた学園祭に歓喜する。

 それが、徹夜で続く、はずであった。

 だが。

 それは世界樹の光がある空間の一点に集中して穴が開いた瞬間に収まりを見せることになった。

「なんだ!? 何かが来るぞ!!」

 いち早く異常に気がついたエヴァンジェリンはマントを翻し、光が集まり割れた空間を見つめる。

 近衛近右衛門は朝倉の下へ急行し、一般人を誘導するように指示する。

 そんな動きをしている間に、世界樹の前に出現した穴から、まるで妖怪とでも形容できる異形が中から現れた。

 その異形は鬼や悪魔と違い、もっと生々しく、視る者に恐怖を与える。

 よって、麻帆良学園に来ていた人たちは一瞬でパニックに陥ってしまったのだった。それも仕方が無い。

 アレは、もはや『死』を撒き散らす存在でしかないように思える。少なくても、この世の存在ではない気がする。

 人々はなるべく世界樹の前にいるソレから逃げようと、必死で逃げ惑っていた。

 一方で広場に降り立ったソレを睨みつけるように佇むのは、魔法関係者たちである。実力者たちは悉く超鈴音との戦闘で離脱中。高畑すらいない現状で、アレに対抗できそうなのは学園長とエヴァンジェリンだけのように思えた。

 しかしそれを言っていられる状況じゃないと察した皆は、自然とソレと相対するように屋根の上に集まっていた。

「皆、アレと戦うのは危険じゃ。じゃがここでアヤツを止めないと被害は甚大になる事は感じ取っていると思う」

 皆がコクリと頷く。

「魔力も限界に近いじゃろうが、ワシも前線に出るので援護を頼むぞぃ」

「ふん・・・・・・私も前に出る。あの敵は正直いって危険だ」

 エヴァンジェリンの参戦するという言葉に、少し安堵する一同。ネギも明日菜と刹那に支えられて立っていて、学園長の言葉に神妙に頷いた。

「もはや魔法がバレるとかそんな事を言っている場合ではない。アレは放っておくと死を撒き散らす存在じゃ。幸い学園祭でかなり近い事をやっていたお陰で誤魔化しも効くじゃろう。ネットの方も茶々丸君が削除してくれとるそうじゃ」

「長谷川さんも情報封鎖をしているそうです」

 これで何とか戦える。

 そう思った瞬間だった。

「―――みな、回避じゃ!!」

「「「「!!!???」」」」 

 突如自分達がいる場所を襲った衝撃。

 それは属性が何かサッパリ分からない暗黒の黒鉛弾で、家を吹き飛ばした。

 どうやら、異形が自分達に攻撃を開始したらしい。

「魔法の射手・光の11矢!!」

「紅き焔!!」

「神名流奥義!! 雷光剣!!」

「エクスキューショナーソード!!」

「戦塵の鉄槌!!」

「我流犬上流・空牙!!」

 全員の力がその異形に命中する。

 胴体と両腕が大きく際立つソレは、爆炎に包まれる。

 しかし。

 煙が晴れた所に現れたソレは、全くの無傷。いやダメージはあるのだろうが、それが効果があったのかと訊けば、ないと言わざるを得ないほど平然としていた。

「くっ・・・・・・何なんだこの化け物は!!」

 エヴァンジェリンが歯噛みして呟く。

 自分の吸血鬼という化け物の身が可愛く思えてしまうほど、目の前の異形が恐ろしく思えた。

 このままでは効果をまったく与えられないのではと全員が思った。

 すると、次の瞬間。

 また更に、その異形の後ろから空間が割れる現象が起った。

「・・・・・・まさか、更に増援が来るんじゃなかろうな」

 学園長は冷や汗を流してソレを見つめた。

 全員も、仲間が現れたら、絶望的な今の現状にトドメが刺されるようなものだと判断した。

 だが全員の心配事は、中から現れたその人物によって霧散した。

 中から現れたのは気持ち悪い異形ではなく、人間であった。

「アレって人じゃない!?」

 遠くで見守っていた明日菜や夕映たちは、その人物に目を見張る。

 その者は、古臭い印象を抱かせる男モノの着物を着た男であった。

 男は自分達とそこまで年が変わらない程度の男の子で、巨大な黄色の札をたくさん貼り付けて鎖によって封印してあるような外観の巨大な剣を持っていた。

 容姿も野生児を思わせるような印象の子で、だがその瞳は鋭くてカッコイイ。

 全員の視線が空間から現れた男の子に集まる中、彼は広場に漂う異形の目の前に降り立った。

そして男の子はギロリと異形を睨みつけて言った。

「やっと見つけたぞ・・・・・・小角!!」

【しつこい・・・・・・この時代まで追ってくるか、司郎丸!!】

 地獄の底から這い上がるようなおぞましい声が街中に響き渡り、その声が異形からだと気付くのに少し時間がかかった。どうやら異形は小角というらしく、男の子は司郎丸というらしい。そして司郎丸は小角を追いかけていたようだ。

 この時代まで、という言い方をするという事、空間から現れたという事。これらを踏まえると、この者たちは違う時代から来たのだろうか。

「貴様ら五行軍がいた所為で、倭国は混乱に陥った! 隠忍(おに)の一族も、もはや俺だけだ!! お前の欲望の為だけに!!」

【ククク・・・・・・この小角の力の一部となれるのだから光栄に思うがいいわ!】

「きっさまぁあああああああああああああああああああああああ!!」

 少年は巨大な剣を鞘に閉まったまま持ち、小角という異形に襲い掛かった。

 その大きな獲物を持ちながらも、目を見張る速度で縦横無尽に振るう。

紅蓮疾風斬!!」

 少年の斬撃の上から巨大な火の玉が降り注ぐ。

 その火の玉は胴体を避けて両腕のみに命中する。

【こざかしいぃ!!】

 耳をつんざく咆哮を上げた小角は、巨大な手から黒炎が吹き荒らし、少年を包み込む。

 皆が、少年はやられてしまった、死んだと思って顔を逸らした。

 だが少年は黒炎の中から五体満足で現れる。

 やけどは負ったようだが、まだまだ元気そうだ。

「鵬翼鳴動斬!!」

 大振りで即座に襲い掛かった少年の攻撃は、小角の両腕に受け止められた。

 だが次の瞬間、目に見える炎色の衝撃波が小角の両腕を切り刻む。

【ぐっ・・・・・・・・・・・・】

 その瞬間上がる呻き声。

 明らかに少年の攻撃は効いていた。

 少年は白を基調とした着物を一払いし、赤の襟を正す。

 その横にエヴァンジェリンが近づいた。

「おい、おまえ」

「ん? なんだお前・・・・・・その髪の色にその目の色、病か?」

「違うわ!! というより、そんな事はどうでもいい。お前はアレを知ってるのか?」

「ん? ああ。あれは小角。五行軍の長にして冥界と霊界の門を開き、全ての亡者を取り込んで人間の身を棄てた、最強の化け物だ」

「冥界と霊界の門、だと? しかもそれを取り込むとは・・・・・・なるほど、真正の化け物らしいな。だがお前にアイツを倒す方法があるのか?」

「ああ。あの両腕を先に倒して、それから胴体を攻撃するんだ。既に1回両腕を倒した。すぐに復活したけど、もう蘇生はできない身のはずだ。あとは・・・・・・」

「なるほど・・・・・・両腕から先に攻撃しないとダメージを受け付けない訳か・・・・・・まったくデタラメにも程があるわ」

「・・・・・・協力してくれんのか?」

「ああ。お前が現れるより先にソイツと戦っていたのは我等だからな。ここは共闘といこうじゃないか」

「・・・・・・いつの時代か知らないけど、やけに人がいいな・・・・・・」

「何を言っている。こういう場合は協力してやった方がいいに決まってるだろ。些か自分の実力だけで勝てないのは癪だがな」

「俺の知っている時代の人は・・・・・・俺や知り合いを迫害するし、恐れたし、自分達の都合しか考えない奴らばかりだったからな」

「・・・・・・ふん。人間なんてそんなものだ」

 エヴァンジェリンは前を見つめ、両腕を天へ掲げて詠唱開始した。

「魔法の射手・氷の36矢!!」

「紅蓮疾風斬!!」

 エヴァと司郎丸のダブルアタックは、小角の両腕を焼き切る。冷却と灼熱の炎は、その温度差ゆえに傷口から崩壊を起こさせる。

 その行動で、司郎丸の傍に皆がやってきた。

「私達も力を貸させてもらいます!」

「共闘しましょう!」

「ふむ。少年よ、ちとこの麻帆良の地を守るために力を貸してくれるかのぉ」

 皆が力強く頷きあい、そして一斉に襲い掛かる。

 刹那は白い羽、烏族の力を解放して飛び掛った。

 司郎丸はその刹那を見て目を丸くしていたが、すぐに視線を戻して剣を振るった。

 全員の魔法は小角に攻撃の隙を与えない。

 このまま押し切れる。そう思った。

だが、小角もそれだけで終わらなかった。

【こざかしいわ! 人間風情が!!】

「「「「「「きゃあああああああああああああああああああああああ!!」」」」」」

 小角の体が黒く包まれ、真っ黒の粒子が全包囲に開放されたかと思ったら、大爆発が起った。

 その強烈な爆発に、エヴァと学園長と司郎丸以外は戦闘不能になってしまう。痛みで動けなかった。

 そしてその痛みは普通の武術や魔法を喰らった時の痛みではない。まるで全身の骨に刷り込まれるような痛みと寒気が襲ってくるのだ。

 それは魔法などではなく、小角の攻撃術が霊界の力を帯びているからに他ならない。そしてそれは精神力で破るしかなく、歴戦の学園長とエヴァ以外には振り払うことはできなかった。

「くそっ・・・・・・何て奴だ」

「老骨には・・・・・・この攻撃は堪えるわい」

「クッ・・・・・・」

 ボロボロになった司郎丸達もは辛うじて立ち上がる。

 その時、後ろから走ってきた明日菜たちが倒れ伏した皆に駆け寄った。

「大丈夫なの!? ちょ、刹那さん!」

「せっちゃん!」

 このかが刹那に駆け寄り、慌てて治癒魔法を施す。夕映たちも安全な地帯に負傷者を運んだりと大忙しだ。

「このちゃん・・・・・・ありがとうございます。でもここは危険ですから、下がっていてください」

「ちょ、その体でまだ戦うの!?」

「せっちゃん、無茶や!」

「無茶でも・・・・・・アイツに勝たないと、この麻帆良は・・・・・・いえ世界は、滅んでしまいます。それくらいアイツは危険です!」

「そんなに・・・・・・!?」

 明日菜はここにきて、やっと事態の切迫さを悟ったようだ。

 あの死の象徴のような異形は、おそらく放っておけば世界を飲み込むのだと、このか達も気付いた。

「だけど、みんな満身創痍じゃないの!?」

 全員の姿を見れば、誰だって無茶だって思う。

 それほど皆がぼろぼろだった。あのエヴァでさえ肩で息をして疲れを露わにしているのだから。

 戦場に、敗北するという重たい空気が立ち込める。

 その中、一人の人物が立ち上がった。

 その人物の名は、司郎丸。

「俺が必ず倒す!」

 司郎丸に、皆の視線が集まる。そんなにボロボロでどうするんだという顔だ。

 だが司郎丸は不敵に笑いながら巨大な剣を掲げた。

 そして大声で、どこかにいる人物に話しかけるように声を上げた。

「親父!! 鈴鹿!! あんた達との約束、破るからな!! これで、全てにケリをつけるために!!」

 その大きな剣、2メートル以上の大太刀は封印の為のもの。

 数多くの呪符は、刀本来の力を抑えるためのもの。

 その大太刀の名前は・・・・・・。

「大通連!! 開放しろ!!」

 初めて鞘から抜いた、大太刀。

 彼女から、鈴鹿という女性から受け継いだ神器の刀。

 それは、自分自身の力を封印する為のもの。

 それが母親の愛情の形。

「!!」

 エヴァと近右衛門は、いや皆は息を呑んだ。

 その刀の桁外れの魔力の量に。神々しさに。

 だがそれは序の口でしかなかった。

 おそらくソレを視た時、一番衝撃を受けたのは、刹那だったであろう。

 皆は、刹那は、それを目撃した。

 人が変化するのを。

「転身!!」

 ゴキゴキゴキという嫌な音。

 真っ赤な髪の色に変化していく、少年の黒髪。

 服は弾け飛び、筋肉や骨格、全てが華奢から強靭なものへと変わっていく。

「な・・・・・・・・・・・・」

 その呻き声は誰のものだったろうか。

 だが確かに、目の前の少年は、人ではなくなった。

 人から化け物へと変わってしまった。

 

「緋焔童子!!」

 

 鮮烈な少年は、醜いとはいえないが、確かに化け物になってしまった。

 誰も声を発することはできなかった。

 手だって腕だって、毛がフサフサに生え、手も獣のように骨格を変化させている。

【・・・・・・相変わらず凄まじい。さすがに伝説の隠忍・愛染紅妃の息子なだけはある。人間との混血とはいえ、その人間も天地丸という最強の対魔士であった訳だしな】

「2度と転身なんてする気はなかったがな・・・・・・転身すると、人間に迫害されるからな」

 司郎丸の言葉に、刹那はズキリと胸に痛みが走る。

 彼女は気付いてしまった。司郎丸の言葉に、『実感』が籠っていた事に。

「ならばワシがお前を喰ろうてやるわい。そうすればお前の力もワシのものだ!!」

 小角が初めて動いた。

 両腕がズザザザザと滑るように襲い掛かってくる。

 司郎丸は大通連を地面に刺し、両腕を交差させてシャランという音と共に鬼神のごときスピードで腕の襲い掛かった。

「爆竜天翔連弾!!」

 それまでとは桁違いの威力。

 もはや、攻撃魔法とか方術とか、そんなレベルではなくなっていた。

 それが、最強の妖魔に許された領域。

「光破輪!!」

 腕を掴んで、暴力的な爪牙を振るう。

 光の輪が両脇から襲い掛かり、腕を破滅させた。

 その衝撃により、両腕が消滅した。

「さあ・・・・・・俺の転身ももうそろそろ限界だ。決着つけようじゃないか、小角」

【ふん、よかろう! この最強の役小角! 参る!!】 

前方より小角の胴体が黒煙を纏いながら突っ込んでくる。

司郎丸は迎撃しようとし、そして隣に来た人に驚いて振り返った。

「・・・・・・お前は」

「私も一緒に戦わせてください。同じ人外に血を引く者として、私は貴方と共に戦ってアイツに勝ちたい」

「・・・・・・いいぜ。お前の名前は?」

「桜咲刹那です。刹那と呼んでください」

「わかった・・・・・・いくぞ、刹那!!」

「はい!!」

 小角と刹那と司郎丸。

 3者が世界樹前広場で激突した。

 

【地烈爆炎弾!!】

錬獄爆炎滅砕!!」

「神鳴流対魔決戦奥義!! 斬魔剣・弐ノ太刀!!」

 

 両陣の激突。

 それは広場を吹き飛ばし・・・・・・。

 そして小角を見事に斬り飛ばした。

 刹那の攻撃は小角の力の源・亡者の魂の塊を切り裂いた。

「やった・・・・・・っ!」

「すごおおい!!」

 刹那が声を漏らし、皆が歓声を上げた。

【こんなはずでは・・・・・・!! まさかワシがこんなところでっ!!】

「・・・お前は人間たちの心を巧みに誘導し、俺たち隠忍の一族を全て葬ろうとした。妖怪になって妖魔にだっていい奴はいるのに。その報いだ!!」

【万物の上に立つ人間に・・・・・・服従・・・・・・するのは・・・・・・当然で・・・・・・あろう・・・・・・ワシは・・・・・・すべてを・・・・・・こ・・・・・・ろ・・・・・・し・・・・・・て】

 その言葉を最後に、霊界の冥界の門を開き、全ての力を手に入れ不老となろうとしていた男は消滅した。

 これが、五行軍の長・役小角の最後である。

 小角がいなくなった広場の前には、静寂がやっと戻ってきていた。

「ぐっ・・・・・・」

 呻き声と共に蹲った司郎丸は、あっという間に人間の姿に戻った。

 目の前で起った、人間から化け物へ、そして化け物から人間へという生々しい現象に、一般人の明日菜たちは話しかけることも近寄ることもできない。エヴァと学園長と刹那だけであった。近寄れたのは。話しかけれたのは。

 刹那は学祭で使ったマントを脱いで、彼に掛けてやり、心配そうに話しかけた。

「大丈夫ですか? 司郎丸さん」

「大丈夫か、小僧」

「無茶したようじゃのぉ」

「ええ・・・・・・転身は、すごく負担をかけるんです。だから普段は大通連で封印しているんですが」

 目の前にある大通連を鞘に戻し、再び封印状態に戻す。

 司郎丸はゆっくりと立ち上がり、まるで自分には触ってはいけないと言わんばかりに離れようとする。

「ちょ、その体でどこに行こうというのですか!」

 刹那は呼び止めようとした。

 彼女は目の前の少年を放っておけなかった。

 そして初めて、このかよりも自分に近い、家族に近い親近感が沸いたのだ。

 だから。

「すこしこの学園で体を休めてからでもっ!!」

「申し訳ない・・・・・・もとの時代で、仲間が他の五行軍と戦ってるんだ。戻らなくちゃ」

 司郎丸は自分の能力、時代を渡る能力を発動させて空間に穴を開ける。

 司郎丸は帰る。自分がいるべき時代に戻るために。

 自分を待っている少女の下へ。

 化け物の自分を愛してくれた、少女の下へ。

「ありがとう・・・・・・美しい羽を持つ、烏鶏族の子。そなたの周りには良き理解者が多いようだ・・・・・・そなたの道に幸多からんことを」

「・・・・・・っ! 貴方も、お元気で!」

「ありがとう、外套を羽織った子。貴方が最初に参戦してくれたお陰で勝つことができた。感謝する」

「なかなか楽しめたぞ・・・・・・またこの時代に来ることがあったら、私の元にこい。歓迎する」

 エヴァは笑っていた。

 彼が自分が好む屈託した人生を送ってきたことを。そしてその道が苛烈であることを。

 

 

 

こうして司郎丸は消えていった。

 僅かな時間だったけど、彼女たちの心に大きな影響を残して。

 

 

 

 

 

                              終わり

 

 

 

あとがき

 一発ネタ。

 何か急にこのクロスを書きたくなりました。

 とは言っても場面を端折るし、短いしで、何か駄作になってしまいました。

 これを機会に、隠忍:ONI零に興味をもってくれたら嬉しいです。

 では。