第4話 お金の亡者・チキチキ娘、レミーナ登場!!






 俺は男として強くなる! そしてディアーナをハーレムの一人に!

 夜空の星に、そう誓った。






 ロイヤルガードの2人と出会ってから1ヶ月。
 俺は少し変わった。
 毎朝、早朝に起きて特訓を始めたのだ。


 だが誤解しないで欲しい。俺は勇者になるつもりなんかない。
 ただ俺はあの2人に幻滅されるのが怖くて、友人でありたくて特訓を始めたのだ。
 通常の俺ならムカツクはずの、超×100イケメンのアルフォンス。
 あまりにも爽やかでイイヤツで、俺はこいつと親友でありたかった。


 そしてディアーナ・シルヴァネール。
 俺は彼女に惚れた。その美しさと性格、民を想い守るその在り方。いわば魂に惹かれたのだ。
 だからといってメイドのビビたちを嫌いになった訳ではない。彼女たちの事だって大切だし大好きだ。
 しかし、それとこれとは話が違う。
 俺は彼女を手に入れたいのだ。彼女に好かれたい、愛されたいのだ。
 誰だって自分の理想の美人に好かれたいと思うだろ? カッコイイところを見せたいだろ?


 俺の心境は、まさにソレだった。


 しかし漫画じゃあるまいし、数年で強くなれるとは思えない。それに俺は勇者の力がなければ凡人才能のしがない男だ。
 ならば、方法はただ一つ。
 勇者の力を己の体内に取り込むことだ。
 ひたすら使い込む事で体をソレに慣らし、自然と宝珠なしでも使えるように身体を変化させるのだ。
 正直言ってむちゃくちゃだが、それしか方法がない。
 きっと勇者として覚醒か契約か何かをすれば、俺は後には戻れないはず。
 だから現段階の状態で、慣れなければいけないのだ。


 従って、俺は宝珠を使いまくって体に染みらせることを試み、そして剣をがむしゃらに振るって練習していた。
 勇者の剣を使っていると、やはり身体能力が遥かに上昇するので、やはり強い。
 しかし普通に木刀を使うと、一般人と何ら変わりない。


「勇者の・・・・・・宝玉、か」


 庭に座り込んで、ポツリとつぶやいた。
 そもそも『勇者』とは何だろうか。ドラ○エでいう伝説の勇者のことか?
 しかしアレは歴史があるものだった。天空の勇者などが良い例だ。
 ではコレは?
 そもそも勇者には『証』や『印』のようなものが存在しないといけないのではないだろうか?
 宝玉の役割は?
 じいさんの手紙には詳しいことは書かれてなかった。
 不明点が多すぎる。
 俺は宝玉を弄繰り回して、この力を取り込まずしてコピーできないものかと、思考錯誤を繰り返していた。


 そしてもう一つ、最近おかしなことがある。
 それは夢だ。
 最近、誰かが話しかけてくる。
 そして討ち取ったドラゴンが語りかけてくる。


『何故そなたが私を・・・・・・何故・・・・・・我はまだ秩序の1人として螺旋から外れていないのに』


 正直、意味がわからない。
 ただひょっとしたら、俺はどんでもないことをしでかしたのかもしれない。
 イヤな予感がしていた。










「ふむ・・・・・・やはりなかなかに面白い人物のようだな、コウイチは」

 王宮のロイヤルガード執務室にて、己自身で調べた結果の書類を眺めて呟くディアーナ。
 コウイチと出会って王都に戻った翌日、近衛兵を徹底的にしごいた。近衛兵は強くなくてはならない。
 鬼のような特訓を課した傍ら、ディアーナは初めてできた友について少し調べてみた。


 ロイヤルガードとなったディアーナには、友と呼べる人物がいない。
 兵隊時代の友人も、ロイヤルガードになったディアーナに気を遣うし、どこか余所余所しい。
 それはアルフォンスも同じであり、ロイヤルガードは尊敬される対象であるが故に親しい者たちにも初対面の者たちにも一歩引かれる。
 しかしコウイチは違った。
 確かに最初は敬語だったが、呼び捨てで呼び合うことになった途端にコウイチは、とても馴れ馴れしい態度で接してきた。
 それは親友の立場の馴れ馴れしさで、アルフォンスもディアーナ自身もとても嬉しかった。


 しかしそれとは別に、ロイヤルガードとしては一応調べておかなくてはならない。
 心苦しい限りだが、ディアーナとしても責務がある。
 その結果、コウイチのギルドとしての戦歴が明らかになり、ここ数ヶ月の行動も明らかになった。


「やはり戦歴は素晴らしいな・・・・・・我が隊に加わって欲しいものだ。しかし数ヶ月分しか出てこないのは何故か・・・・・・」


 そう。
 ギルド戦士としての戦歴を見ると、本当に素晴らしかった。間違いなくその実力はギルドでもトップクラス。
 王国でもロイヤルガード級とみている。
 しかし彼の出身など、ここ数ヶ月より以前の記録が出てこない。全く『無い』のだ。
 例えば魔物により出身地が滅んだとしよう。しかしそれでも記録だけは残るものだ。
 いや、国外出身の者という線がある。流石に魔法王国ヴェーンや神都オーディンスフィアのデータまでは分からないのだから。
 そして何より、コウイチと話して掴んだ彼の人格や人物像が、不審者という線を打ち消した。


「やあ、ディアーナ。何をそんなに難しい顔をしてるんだい?」
「アルフォンス。いや、コウイチのデータを見ていて、な」
「ほう・・・・・どれどれ」


 執務室にやってきたアルフォンスも、ディアーナが纏めた書類に目を通し、感嘆のため息を吐いた。


「やはりコウイチは近衛隊に欲しい人材だ・・・・・・確かに経歴は少し怪しいが、それでも彼は信じられる人物であることに間違いない」
「ああ。それは分かっている。アルフォンス、その最後を見てくれ」
「ん? ・・・・・・へえ、彼はあの奴隷市に参加したことがあるのか」
「そのようだ・・・・・・その際に奴隷となっていた女人3人を購入している」
「ふむ。しかしその奴隷となってしまった子たちのデータを見るに、彼は人助けとなったとも思えるが」


 実はディアーナもアルフォンスも奴隷市には反対の人間だった。そしてそれを潰そうとがんばってもいる。
 しかし奴隷という長年の歴史があるソレは、いくらロイヤルガードといえども容易に潰せるものではなかった。
 そして彼が購入したという女3人も、それだけ見ればなんだか厭らしい事のように思えるが、奴隷の経歴を見ると実に哀れな過去を持つものばかりだ。


「まあ、それは今度彼の家に遊びに行った時に分かることだ。そうだろう、ディアーナ」
「ああ。その通りだ。その通りなんだがな・・・・・・」
「気になるのかい? 彼のこと」
「も、もちろん友としてだ! 私は親友として彼を信じている。しかし他人には違うように映るだろうから心配しているだけだ! 友として!」
「ハハハ。分かってるさ、ディアーナ。そんなに焦らなくてもいいじゃないか」
「アルフォンス!! 怒るぞ!!」


 事実、ディアーナに恋愛感情など欠片もない。というより、彼女はこれまでの人生で恋愛や恋など一回もしたことがなかった。
 それ故に、彼女は恋愛ネタでからかわれるのが物凄く弱い。それは同僚のアルフォンスやミュンツァー卿しか知らないことだが。
 アルフォンスは苦笑しながら謝り、しかし楽しそうに言った。


「ああ、そういえばディアーナ。今度コウイチの屋敷に遊びに行くとき、ミュンツァー卿を誘うのはやはり無理なんだろうか」
「無理だろうな。ロイヤルガードが3人同時に休暇などとれるはずもない。私たち2人同時ですら無理を言ったのだから」
「やはりそうか・・・・・・ミュンツァー卿もコウイチに興味を持っていたから、会わせたかったのだが」
「ほう・・・・・・あのミュンツァー卿が。コウイチより同等もしくは上のギルド戦士は他にもいるのだが・・・・・・」
「そうだな。しかし彼には類を見ない例外がある」
「ああ。それは―――」
「「パーティーを組まずに一人で戦っているところ」」


 それは、恐るべきことだった。
 たった一人でドラゴンを討伐したというのだ。
 これは・・・・・・異常であり興味が尽きない事実である。








「ん・・・・・・あ・・・・・・ああっ・・・・・・も、もう! い、いま、お掃除中、なんですよ・・・・・・ああっ!」


 真昼間っから、自宅の2階廊下にて艶かしい吐息が響いていた。
 必死に声を噛み殺しているようなその声は、あまりにも厭らしい。
 窓拭き掃除をしていたシズルは、朝の訓練でかいた汗を風呂で流した俺と3階でばったりと会った。
 そしてしばらく家の中の雑貨、掃除道具の購入相談などしていたのだが、俺が後ろからガバッと抱きついた。
 豊満な胸をやさしく揉みしだいてきたのだ。
 綺麗で艶やかな茶髪を腰元まで伸ばし、優しい瞳、柔らかな声、太陽のような暖かな笑みを浮かべて、メイド服を着て掃除するシズルに欲情した。
 姉妹がいる俺だが、こういう包み込むような年上の優しい女が、姉が欲しかったのだ。
 そして慕って懐いてくる妹が。
 あんな迷惑かけるだけの自己中我が侭女姉妹じゃなく。
 そういう点だけでも、シズルは最高の女だった。


「あ、も、もうっ」


 裾から腕を入れて、片手で豊満な胸を揉みしだく。
 もう片手でスカートを捲り上げて下着の中に手を突っ込み、慎ましい恥丘を撫で割れ目を擦った。
 小さな豆をこすって手首に感じる毛を撫でながら、乳首をコリコリと刺激した。
 声が洩れるのを必死で我慢するシズルの耳を噛みながら更なる刺激を与えた。彼女の横顔を覗くと、決して嫌そうな表情もなければ嫌悪感もない。


「ん・・・・・・んっ・・・・・・ちゅ、ちゅ」


 小ぶりでさくらんぼのような唇に吸い付き、ついばむキスを繰り返す。


「ん、ん、コウイチさん・・・・・・」


 頬が紅潮してくるとほぼ同時に、下腹部が熱を帯びていき、割れ目が潤滑油で濡れてくる。くちゅっと音が響き始めると、人差し指を差し入れた。
 ヌルヌルと膣が指を締めてきて、熱すぎる膣の奥はどんどん指を引きずり込もうと絡み付いてくる。
 処女貫通の時はキツすぎてとてもじゃないが奥にひっぱりこむようなものではなかったが、今は違う。


「あ、挿入って、きた・・・・・・あ、はああああああ」


 息子を取り出して先端を粘膜の入り口に押し当てる。ぬちゃっと濡れた音が立った。
 ああっ・・・・・・と、上擦った声を洩らしてシズルはわずかに身体を震わせ仰け反った。もちろん仰け反った時のおっぱいを揉むのを忘れない。
 ゆっくりとペニスを突き入れていくと、ぬるぬるした膣道を押し広げ、肉襞を巻き込むようににして奥へと進む。


「ああ・・・・・・入ってる・・・・・・温かい」


 白いうなじに何度もキスを浴びせて痕をつけ、根元までイチモツを埋め込んだ。
 ひだが多く、膣前壁に沢山の細かな突起が並んでいる。膣壁がざらざらしているので、亀頭がかなり刺激される。
 エミィの膣は普通の膣で気持ちイイのだが、シズルは明らかに違う構造。比べる対象があるので分かる、これは『カズノコ天井』といわれる先天性の名器だ。
 ぶっちゃけキツイ。
 洒落にならない。あっという間に射精感が込み上げて来る。早漏とかいうなよ?
 これは誰だろうが耐えられるものではない。致命的な遅漏でない限り。


「んあぁぁぁぁっ、コウイチさんの・・・・・・一番、奥にぃっ、ああんっ」


 幸い、シズルは敏感気質で感じやすく、また抱かれると感極まり易いのかイキやすい。
 だから短時間しか持たなくても、俺たちは十分だった。


「くっ、シズルの中、すごくいいぞっ」
「あ、あ、あ、本当で、すか? んっつうっ!」


 汗ばんだ太腿を抱えなおし、フィニッシュに向かって激しくペニスを突きたてる。
 メイド服を抱えながら激しく腰を打ちつけ、手を伸ばして前のボタンを外して隙間から胸を露にして掴む。
 振動でプルプルと揺れる胸が手のひらに当たり、その感触が気持ちいい。つるつるした乳首が硬くなって何度も摘んでしまう。


「ああっ、そんな、胸までっっつぅ!」


 声を発する余裕がないのか、まともな言葉を喋れずに必死で快感に堪える。


「中に出すぞ、シズル」
「は、はい! ああっ、ふぁ、あっ、ああああああああああああ!」


 コツコツと子宮をノックして、お互いに痺れるような快感電流が走り抜けた。


「ああああああああああっ、コウイチさんっ、コウイチさぁぁん!!」


 ぎゅううっと膣壁が収縮し、名器特有のねっとりと縛りつく、そして吸い込まれるような感覚と共に、膨張しきったイチモツがドクンと大きく脈を打った。


「ひゃあああああ! あ、出てる、出て、る・・・・・・」


 俺の腕の中で、シズルの背中が突っ張り、エビ反りのように仰け反った。
 ペニスは何度も脈動を繰り返し、ビクンビクンと痙攣する膣の一番深いところで白い粘液を吐き出していく。
 シズルはガクガクと振るえ、イッた衝撃からか意味不明な言葉を洩らしながらピクピクしていた。
 俺はその名器と彼女の包み込むような優しく甘い体臭を嗅ぎながら、バックから対面立位のような格好にして抱きしめた。











 こうしてシズルと激しくヤッて体力を消耗した後、お互いにお風呂で背中を流してゆっくりと入った。
 一緒にお風呂に入って背中を流し合って、湯船でくっつきながらゆったりとした。
 最高に幸せだった。
 その後、旅支度をした俺はとある洞窟へと進入するために家を出た。
 場所は魔法王国ヴェーンと聖王国レイアースの国境近く、ヴェーンの直轄領である洞窟だ。


 実はこの洞窟。
 どれだけ深度があるのか判明していない謎の洞窟なのだ。
 しかし地下3階まではヴェーンの魔法学校の卒業実技判定試験の場所となっているらしい。
 今回俺が行く理由は2つある。
 一つはギルドの依頼で地下10階のところに落し物をしたという商人がいて、大事な書物だから拾ってきて欲しいという依頼だった。
 ちなみにこの洞窟は物理攻撃が効き難い魔物が多く危険な場所。魔法が使えないものは死亡率が高すぎるところであった。
 その為に、報酬も1000万と高額だ。そしてその書物も商人にとって貴重らしく、どうしても取り戻して欲しいとのこと。そこで魔法が使える俺が行くことになった。
 もう一つは、未だ誰も行ったことのないという、地下15階以降の階層にあるというお宝だ。
 何かとんでもない宝があると言われていて、しかし魔物もケタ違いに強いものがいるらしい。
 そのお宝とやらが、俺の自力が強くなれる為の魔法薬や装備品かもしれないのだ。
 これは行くしかないだろう。


 誰も行ったことがないのに、すごいお宝があるという噂に、激しい突っ込みを入れたいが、まあ噂なんてそんなものだ。
 俺は心配してくるメイド3人のシズル、ビビ、エミィに留守を任せ、脱出の為の『穴抜けの紐』を持っていることを確認して出かけた。
 そして移動すること2日。勇者の剣で上がった移動速度でそこまでかかった場所に、俺はいた。


 一見普通の洞窟にみえるが、なにやら寒気がする場所だった。
 覚悟を決め、ランプに火を灯して剣を構え、腰に宝玉入りの袋をぶら下げて入った。


「燃え散れ!」


 宝玉を使って燃え盛る火炎を繰り出し、ガス状のモンスターやら岩石モンスターを焼き殺し、どんどん先に進む。
 正直、めちゃくちゃ怖い。
 お化け屋敷なんかじゃなく、リアル洞窟なのだ。
 かなりビクビクしながら、カバンと棒を繋いで立てて先端にランプをくっつける。おかげで両手が開いたことから手には勇者の剣、片手に宝玉入り袋を持ち、戦闘体勢で冒険をした。
 ゲームのようにお宝やアイテムが宝箱に入っていることはないので、地面や壁を慎重に見ながら落ちてないか確認する。
 その作業を繰り返し、ようやく地下10階まで来た。
 幸い商人の本はすぐに見つかった。売り上げや仕入れ、得意先の情報が書かれた本らしく、確かに重要だろう。
 それ以外には回復用の薬や、売ったら高い鉱石、湧き水の中に落ちてる魔法関連の指輪や、その原石などを拾った。
 しらみつぶしに探すのは大変なので、下に降りれるところを見つけたら素直に降りた。
 こうして地下10階まで来たが、確かに剣では倒すのは大変な敵ばかりだった。
 やはり『適正』や『相性』というものも存在するのだと納得した。


 そしてついにやってきた地下15階。
 人類が誰も辿り着いていないという階層に辿り着いた。
 生臭い臭いやら、腐った肉の臭いなど、悪臭が漂うなか、俺はふと何か変な音に気が付いた。
 奥の方から、何やら変な音が聞こえるのだ。
 それはおそらく、誰かが魔法を使って戦う音。
 どうやら一足先に誰かがこの領域まで来ていたらしい。


「〜〜〜〜〜〜! 〜〜〜〜〜〜〜!」


 何やら怒鳴っているが、声からして女の人の声だ。
 もしかしたら苦戦して殺されそうになっているのかもしれない。
 俺は慌てて駆け出し、声のする方へと急いだ。
 すると、どんどん声が鮮明になっていく。
 途中にいた敵は無視して、角を曲がった先に少し広めの広間に出た。


 するとそこにいたのは、ガイコツが騎士の格好で立っていて腕が8本もある、これまでとは格が違う魔物だった。
 そしてその前にいたのは、金髪のウェーブがかかった女の子。
 紫の服と紫のロングスカート、白いマントに茶色の杖、指にはいくつもの指輪がしてあり、纏うオーラからかなり上位の貴族だと判断できる。
 そして子供っぽい横顔だが年齢は同じ位だ。でもすごく可愛らしい。
 俺はそこまで考えて、助太刀するために剣を抜いて斬りかかろうとした。
 するとそこで、少女は驚くべき言葉を口にし、そして信じられない光景を見せてくれた。


「ふ〜〜〜ん、ここで魔法が効き難いガイコツ剣士、しかもボーンファイター級。門番かしらね。
 きっと多くの冒険者がここで足止めを喰らったんだろうけど・・・・・・甘いわ!
 魔法王国ヴェーン・当主の娘を舐めないでよ!」


 当主の娘だと!?
 思わず驚き硬直する中、その女の子は杖を高々と掲げ、杖の玉から激しい光があふれ出す。
 ガイコツ剣士が八つの剣を振り下ろそうと跳躍したその瞬間、ついに発した。


「燃え上がれ、炎よ――――――――インフェルノ!!」


 炎熱系最強の魔法、インフェルノ。
 俺が適当に名前を付けて使っている魔法などとは威力も熱量もまるで違う、圧倒的な魔法がガイコツ剣士に襲い掛かった。


「■×○△&%〜〜〜〜〜〜!!」


 聞き取れない断末魔の叫びが洞窟内に響き私、ガイコツが炎に包まれた。


「ふぅ、終わった終わった。ま、このレミーナ様にかかったらこんなものね♪」
「・・・・・・・・・・・・(唖然)」
「そう思うでしょ、そこのキミ」
「!!」
「でも驚いたな。ここまで来れる人がいるなんて。私が初かなぁと思ってたのに。あ〜あ、名声を使って生徒をがっぽり、お金もがっぽり、うっはうは作戦が台無しね」


 なんだろう、この少女は。
 驚きすぎて声が出ない。可愛い顔してるのに、なんだか不穏な単語もちらほら見受けられたし。
 しかも声が・・・・・・どこかで聞いたことがある?
 ―――って!

 俺は視界にその姿を捕らえた瞬間、反射で女の子を追い抜き飛び掛った。


「え!?」
「でりゃああああああああああああああああああああ!!」
「■×○△&%!!」


 ―――ザンっ!!


 最後の力で襲い掛かってきたガイコツ剣士の一太刀を迎え撃ち、その剣を砕いて身を引き裂いた。
 着地して懐に飛び込み、炎に包まれる体に構わずに更にもう一撃。
 最後に胴体を力で断ち切って後方へと飛び退いた。
 ガイコツ剣士はついに動かなくなった。
 俺はそれを見届けると、女の子へと振り返った。


「あ〜っと、大丈夫? 危なかったな」
「え、ええ。助かったわ。ありがとう」
「いや。ほとんとキミが倒してたしね。最後の悪あがきだったみたいだ。それよりも凄い魔法だったね、驚いたよ」
「それはもちろんよ。私はなんていったって、あの魔法王国ヴェーン・当主の娘なんですから――――って」


 そこで女の子は何かに気付いたように言葉を切り、俺を見つめ、そして手を差し出してきた。


「初めまして、私はレミーナ・オーサ。魔法王国ヴェーン当主、レミリア・オーサの娘です。よろしくね♪」
「あ、ああ。よろしく。俺はギルド所属、コウイチ・クロサワだ」


 本当にヴェーンの当主の娘なのか。いや肩のエンブレムが王国のものだし、気品は正に相応しいものがある。
 しかしそれよりも気になる。この声・・・・・・どこかで聞いたことがあるような・・・・・・。


「・・・・・・ああ! 聞いたことがあるわ! 魔法も使って剣術を使わない型破りな剣士、サクラ孤狼のコウイチって戦士がギルドにいるって!」
「・・・・・・こっちの国にまでか」
「へ〜〜〜、本当にサクラ色の服なんだ〜〜、変わってるね。でも上品な作りしてる」
「ま、まあね」


 なんだ、本当にどこで聞いたんだ、この声!?


「さっきの飛び掛った時の速度、物凄く速かった。剣筋は素人っぽいのに早過ぎる剣速からそんなの意味ないし」
「ハハハ・・・・・・」
「ねえ、魔法ってどこで習ったの? 魔法は一応魔法王国でしか教えられないからさ。後は師事した人物が魔法使いか」
「ギクッ」
「ひょっとして、元魔法王国出身とか?」
「いや、違うけど」
「そう・・・・・・あ、そうだ! ならこれから魔法王国の魔法学校に入らない? そしたら卒業後はヴェーンに配属されて私の専属軍隊に入るの! そしたらお金は私の元に入ってくるし財政難も解決・・・・・・」
「・・・・・・コラ」
「あっと! なんでもないなんでもない! アハハ〜〜〜っと、ハイ。握手握手。折角知り合ったんだからよろしくね」
「あ、ああ」


 なんだか底抜けに明るい子だな・・・・・・お金にがめついみたいだけど。
 それにしても本当にこの声・・・・・・う〜〜〜〜ん。


 俺は内心で思い出せないことにジレンマを感じつつも握手して愛想良く笑った。
 そしてその瞬間、思い出した。


「あ〜〜〜〜! 分かった〜〜〜〜!」
「わっ! ビックリした。突然何?」
「キミ、声優の林○めぐみそっくりの声なんだ!」
「・・・・・・セイユウ?」
「ああ、いや、なんでもない。こっちのこと」
「そう? それより、私のことはレミーナでいいわ。命の恩人なんだし、折角お友達になれそうなんだもの」
「そうか? わかったよレミーナ。俺はコウイチでいいぞ」
「うん。よろしくねコウイチ♪ じゃ、行きましょ?」


 そっか〜〜、この声はあの声優の声にそっくりなんだ。
 俺は変に関心しつつも、なんだか嬉しくなった。元の世界の共通点を見つけたのだ。
 そして意味不明に納得している俺に、レミーナは俺の腕を取り、ズンズン歩き出した。


「ちょ、どこに行くんだ?」
「? もちろんもっと下の階層よ? 私と組んで行った方がお互い確実に進めると思わない?」
「まあ、たしかに」
「でしょ。じゃ決定〜〜〜♪」


 そう言って楽しそうに駆け出したレミーナをに苦笑しつつも俺は後を追いかけた。








 そして俺は魔法を使わずに剣だけで敵を倒し、レミーナが魔法を使って倒すという作業続ける中、ついに地下20階に辿り着いた。
 どうやら剣がなければ先に進めない難度で、しかも中途半端な実力だとやられる強敵ばかり。
 しかしレミーナの、当主として圧倒的な魔力を保有していること、俺の勇者としての力が上手く重なり合ってどんどん進撃していった。
 そしてついに見つけた。


「あれはなんだ?」
「なんか湧き水のような、でも赤いし・・・・・・しかも指輪の原石があるわ。こんな色、みたことない」
「血のような水と、紫の原石か」
「しけてるわねぇ。もっとお宝っぽいものないのかしら。お金になるやつ」
「ないみたいだな・・・・・・他に地下に行く道ないし」
「ちぇ〜〜、じゃあ、あの原石を半分こしましょ。それでいい?」
「ああ」


 大したことないものしかなかった。どうやらデマだったようだ。
 俺とレミーナは原石を割り、大きい方をレミーナに、ビー玉サイズの大きさを俺がもらった。
 そして、一応俺は水も採取した。


「そんな気持ち悪い水なんか汲んで、どうするの?」
「いや、一応念のためにね」
「ふ〜ん」


 俺は水筒に水を入れて大切にしまった。なんだか赤い水というのが気になったのだ。
 そして穴抜けの紐を使って外に出た。
 外に出るとすっかり日は暮れていて、近くの宿屋にレミーナと一泊した。
 レミーナはお酒も大好きらしく、ガンガン飲んで楽しそうにケタケタと笑っていた。
 泥酔した所為で服が乱れ、テーブルに寝転んだ拍子に服が弛み、胸元から可愛らしい下着と、乳白色の乳首が見えてドキドキした。
 当然、なにもしていない。一国を敵に回す度胸はないんだから。
 おかげでレミーナを抱えて部屋に寝かせつけるなどし、俺は非常に疲れる思いをした。
 ま、イイモノを見れたし、その代償と思えば安いものだ。
 レミーナとはとても仲良くなり、俺たちは二日酔いのまま翌日に別れた。


 その別れ際、レミーナは言った。


「なんだか、また近いうちに再会する予感がするわね」
「ああ。そうだな。そのときはまたよろしくな」
「ええ。それから・・・・・・昨日は私が酔ってたことをいい事に、イヤらしいことしなかったでしょうね?」
「してないって・・・・・・」
「・・・・・・それはそれで腹立つけど。っていうかあんなに飲んだのは初めてよ私。
 なんであんなに飲んだんだろう・・・・・・妙にコウイチと飲んだらお酒が進んじゃったのよね。
 ま、いいわ。じゃあね、コウイチ」
「ああ」
「ああ、そうそう。魔道の宝玉に頼らずに魔法を使いたくなったら、いつでも私を訪ねてきてね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」


 そう言って、レミーナは去っていった。
 俺が勇者だということを、レミーナは気付いていたのだ。


 しかしそれは当然かもしれない。露骨に勇者の剣を出していたし、レミーナは王族だ。
 勇者の装備関連は見たことあるだろう。
 それに俺をこの世界に連れてきた爺さんは魔道元帥、つまり魔法王国在籍の経歴があるはずなのだ。
 十分に知りうる要素はある。
 本来なら俺は慌てるところだが、不思議とレミーナに知られても焦る気持ちは無かった。
 それはレミーナの性格によるところもあるし、彼女がそれを知っても俺が不利になることはしないと確信していたかもしれない。





 これが、魔法王国ヴェーンの当主、継承権第一位の人物、レミーナ・オーサとの出会いだった。











2009/05/09