第3話 ロイヤルガード登場!
(名前とキャラはグローランサーWからお借りしました。著作権も原作に帰属します)






 俺は真の実力者というものを見た。




 我が家にメイドがやって来て1ヶ月が経過したある日、いつものように依頼をこなしたからさっさと帰ろうとした時だった。
 ギルドから出ると目の前にたくさんの人だかりが出来ていて、俺は何事だろうかと興味本位で様子を伺った。
 どうやら、聖王国レイアースの軍隊が魔王軍の手下の一部隊の討伐に出かけるらしい。
 その話しは聞いたことがある。
 魔王が住んでいるという大陸、ペンダクリ大陸から小規模ながらも強者ばかりの集団がこの大陸に侵攻を開始したらしい。
 トロール系らしく、自然にかなりの被害が出ていて、このままでは街も襲われるだろうという話しだったはずだ。


 俺はその話しを聞いた時、急いで自宅に帰り、家を暑さ2メートルの外壁で囲ってさらに周囲に溝を掘った。
 その工事は2週間もかかったが、工事業者も雇ったので意外と早く済んだのかもしれない。
 従って、ドラゴンなどの竜種でない限りは突破は容易ではない家になった。
 これは元の世界のお城周りを参考にした。主に大阪城とかのね。
 この概念はこの世界にはなかったので、工事の人たちは感心しっぱなしで、ビビたちも尊敬の眼差しを向けてきた。
 俺からいえばただのカンニングなので何とも息苦しい。
 そして城壁内側に油をたっぷり入れたタンクをいくつも用意したので、もし俺が不在の時に襲われても、それを引火させて爆発攻撃をしかける手筈にもなっている。
 もちろん自宅の地下を改修し、もし万が一立てこもる必要があれば、そこからビビたちを脱出させる手筈にもなっている。
 また自宅もかなり高地の方にあるので、魔物もほとんど寄り付かない。
 なるほど、前の貴族は愚か者だったらしいが頭は回る人物だったようだ。
 とりあえずはシズルたちの安全を確保したから良しとしよう。


 話しが逸れた。
 とにかくその魔物の一団が現れたのは、聖王国ではかなりの事件だったのだ。
 そして先日、ついに小さな村が襲われたらしい。
 そこで聖王国レイアース99代目国王が、ついに討伐勅令を下した。
 その要請に従ったのが、国王直属の近衛兵、通称『ロイヤル・ガード』だ。


 そう。
 このロイヤルガードを見たいが為に住民が通りに集まっていたのだ。
 ロイヤルガードは【文】【武】【指揮】の3つの才能を完璧に持った超人のみがなれる超エリートらしい。
 その勇名は他国でも知らぬ者がいないほどで、一騎当千の実力を持つ彼等は、やはり時代によっては一人もいないこともあったらしい。
 いやはや・・・・・・俺には無縁の話しだね。だって俺、普通の凡人だもん。
 ・・・・・・え?
 勇者だろうって?
 何かの間違いに決まってる。俺は自分の脳みその限界を知ってるつもりだし、チキンぶりも自覚している。
 だって、未だに俺は勇者の剣と宝玉を持っているのに、勇者になる気はないんだから。
 ま、その内に代わりの誰かが出てくるでしょ。
 その時まで、俺は自分の財産を何とか集めておくつもりだ。


 と、そこまで考えていたときだった。
 軍の一団が行軍を進める中、真っ赤でキラキラした光沢のコートとハットに身を包む兵士が歩いてきた。


「あれが、ロイヤルガードか・・・・・・」


 俺が独り言を呟いた瞬間だった。


「きゃああああああああああああ! アルフォンス様よ!」
「かっこいいいいいいいいいいい!」
「今回はミュンツァー卿は出陣しないらしいぜ?」
「マジかよ! 俺あの人渋いから憧れてるんだよな」
「シルヴァネール卿が来た! 美しい!」


 凄まじい人気っぷりだ。
 だが確かに別格の人間って気がする。オーラが違うのだ。


 ロイヤルガードの3人がひとり、アルフォンス・オーディネル卿。
 白髪がイケメンに良く映え、2刀の剣は名剣だと一目で分かるもの。
 歳も20代前半のようでとてもカッコイイ。これがスターというものなのだろう。


 ロイヤルガードの3人がひとり、ディアーナ・シルヴァネール卿。
 ロイヤルガードの紅一点で、薄桃色の髪で長くも短くもなく切られた髪は本当に美しい。
 顔も美人だし、そして戦闘能力が高く、また指揮能力がズバ抜けて高いということ。
 出るところは出て引っ込んでいるところは引っ込んでいるから、あまりの美人っぷりに人形かと思ったほどだ。
 いや、美人なんだけど可愛さを併せ持っているというべきだ。
 こういう人が恋人だったりしたら幸せに余生を送れるだろうなと思う。


 何となく気になったので軍の後をこっそりついていくと、50名ほどの精鋭軍は王都から10キロほど離れたところの村に辿りついた。
 そこは壊滅した農村だった。
 トロールと呼ばれる体長3メートルを越す巨人が10体ほどいて、近隣の魔物たちが集まっていた。


(なるほど・・・・・・この数なら、農村の人たちはギルドに救援要請をする暇もなかっただろうな)


 あちこちに転がっている遺体らしきものが見えて、思わず顔を顰めた。
 正直、見ていたくない。
 農村の出入り口は北と南に1つずつ。岩壁に囲まれた街の為に魔物の逃走経路も1つしかない。
 様子を伺っていると、シルヴァネール卿の軍が南口。オーディネル卿の軍が北口に回って包囲殲滅戦をしかけるようだ。
 そしてついに戦いが始まった。
 ロイヤルガードの2人は前線で戦いながら絶えず指示を飛ばし、他の軍人が複数人がかりで各個撃破している。


「おぉ〜〜〜、すげぇな。さすがはロイヤルガード。実力半端ねぇ〜〜〜〜」


 トロールという巨人を相手にしているのはロイヤルガードの2人で、振り下ろされる棍棒を己の剣で受け止めて、恐るべき速さと威力を持った剣戟で撃破していた。


「はぁ――――!!」
「せいっ!!」


 一撃はトロールを仰け反らせるほどの衝撃。
 斬撃は閃光のように苛烈。
 腕を斬り飛ばしたオーディネル卿、シルヴァネール卿の2名はトドメの雰囲気を醸し出し、そして放ち言った。


「ロイヤルガードに敗北はない」
「全ての勝利は人民と王のために!」


 正に圧巻だった。  つーか、ロイヤルガードの3人で魔王を倒せるんじゃ? と思っても罰は当たるまい。
 俺も敵わないだろう。
 しかしトロールの数が多い。倒した直後に2体ずつトロールが彼等の前に現れた。
 ロイヤルガードは負けないだろうが、相手をしていても余っているトロールが他の兵士の元に向かっているのだ。
 このままでは数人は負傷するかもしれない。下手したら死人が出る。
 トロール6体を2人で相手にしているシルヴァネール卿たちは間に合わない。トロールは破格のモンスターなのだ。
 ドラゴンに及ばないまでも上級モンスターに数えられ恐れられる枠に入る敵。間に合わなくとも誰も責められない。


「しゃーねえな。見捨てるのも気分悪いし、後々に面倒事が増えそうだけど、ヤルか」


 ニヒルに笑って。


「いくぜええええええええ!」


 勇者の剣を抜き、身体能力が跳ね上がるの感じつつ、村へと飛び降りた。
 ドシン、という衝撃で足がジーンと痺れた。
 ・・・・・・ちょっと、いやかなりカッコつけ過ぎた。微妙に後悔。
 足の痺れを感じながら俺は駆け出し、トロールに襲われていた兵士の一団に突っ込んだ。
 ジリジリと後退していた兵士を追い抜き、トロールの群れ4匹の中心に飛び込む。


「痺れろ! サンダー!!」


 ビックリしている兵士たちを無視して、俺は左手を掲げ、こっそりと袋に入った宝玉に手を当てて唱えた。
 唱えた瞬間、俺へ振り返ったトロールの頭上に雷が落ちてトロール4匹に襲い掛かる。
 電撃の痛みに動きが止まったトロールの中で、一番兵士たちに近い先頭のトロールに飛び掛り、おもいっきり振り下ろした。


「でりゃああああああああ!」
「グオオオオオオオオオオ!」


 その一撃は、正に瓦割りと同様だった。
 一撃でバッサリと斬られ、真っ二つになったのだ。
 それは奇しくも、戦士の技の1つ『魔人斬り』だった。


 1匹始末した隙に復活した残りのトロールは、大きな棍棒を振りかざして襲ってくる。
 巨体だけれど、実に素早い。感覚的にはドラクエのボストロールだ。
 慌てて横に跳ぶと、そこには3つの棍棒が地面を叩きつけていて、地面が抉れ返っていた。


「おいおいおい! 馬鹿力すぎるだろ! 冗談は顔だけにしろ!」
「グルルルルル・・・・・・」
「言葉をしゃべれ!」


 少々理不尽な俺の突っ込みを華麗にスルーして襲い掛かる。
 同時に3体。後ろは半壊の農家。流石に今度は逃げ道を塞ぐように攻撃してくる。
 ならば見様見真似、適当にイメージして身体を動かせ!

「はやぶさ斬り!!」


 敢えて敵中に突っ込み、限界の速度で剣を振るって、トロールの股間の下を潜り抜けて脱出。
 とにかく速く振るってみたが、意外に成功したようだ。
 十文字の傷が3体のトロールの腹部に付けられて血飛沫があがっている。
 そして最後にトドメ。


「ブリザド!!」


 冷気が地面から這い上がり、足元から一瞬に侵食して氷付けにした。
 その時農家の屋根の瓦が一枚地面に落ち、その地面の振動で氷漬けになったトロール氷像は砕け散った。
 なんとか・・・・・・勝った。


「はあ・・・・・・危なかった・・・・・・」


 一見余裕そうに見えるが、あまり試したことの無い技とイチかバチかの技をしなくてはならなかったのだ。
 とてもじゃないが、命がいくつあっても足らない。
 もうちょっと技を磨こう。今回の勢いだけで参加した戦いで学んだ事だった。


「おい、君。大丈夫か!」
「あ、ああ。大丈夫。なんとかね」
「助かったよ。我々だけでは危なかった」


 襲われていた兵士たちが俺に近寄ってきて声をかけてきた。
 俺はこっそりと剣を鞘にしまい、布でぐるぐる巻きにして鍔の装飾などを隠す。
 え? なんでそんなことをするかって? 勇者の剣を知る人に見られたら、間違いなく陰謀に巻き込まれるからだ。
 そんな俺の行為に、ただ剣をしまっただけと思ったらしい兵士たちは安心した表情だ。
 俺がギルドエンブレムを胸に付けていることを見て、参戦してくれたと察したのだろう。
 お互いに命あってよかったと、笑いながら生存を喜び合った。
 すると、遠くから声が聞こえてきた。
 それは、この街のモンスターを全て討伐したという合図。
 そしてやってくる人物は、ロイヤルガードの2人だった。


「皆、大丈夫か?」
「報告は貰ったが、一応念のために来たんだが・・・・・・」


 オーディネル卿とシルヴァネール卿の2名は心配顔で部下たちの様子を見に来た。
 全員に致命傷の怪我がないとみて安心すると、2人は俺へと顔を向けた。
 そしてオーディネル卿が爽やかな表情で手を差し出してくる。


「どうも初めまして。聖王国レイアース近衛隊アルフォンス・オーディネルです。この度は部下がお世話になったようで」
「あ、いえ。近くにいたものですし」
「ご謙遜なさらずに。貴方のおかげで部下が助かったのです。ありがとうございました」


 アルフォンスに受け答えしながら握手すると、背後からディアーナ・シルヴァネール卿が言ってきた。
 改めて見ると、本当に美人だ。おかしな話だが可愛いさも満点で、だけど凛々しくもあるのでドキドキする。


「ああ、これは失礼。私もアルフォンスと同じ近衛隊所属のディアーナ・シルヴァネールです。本当にありがとうございました」
「あ、は、はい。高名なロイヤルガードの方に会えるとは、光栄です」
「ふふ・・・・・・ん? もしや、貴方はギルドの戦士の方で・・・・・・」
「ええ。ギルドに登録したのは3ヶ月ほど前のことで、まだまだ新人ですが」
「・・・・・・そなた、もしや近頃噂になっている戦士・『サクラ孤狼のコウイチ』では?」
「う・・・・・・え、ええ。お恥ずかしい名ですが、そのように呼ばれています」


 恥ずかしい〜〜〜!
 まさかこんなところで、しかもシルヴァネール卿に知られているとは! そんな恥ずかしい2つ名!
 俺が苦笑すると、オーディネル卿が感嘆の声を上げた。


「ほぅ。君が噂の・・・・・・随分と若いのだな。大したものだ、その若さで噂通りの実力・・・・・・」
「いや、噂が誇張されてるんですよ」
「そんなことはないだろう。トロールを4体瞬殺したという話しじゃないか。しかも魔法も使ったという。なかなかいないさ、そこまでの実力者」
「いや、それならロイヤルガードの御二方だって若いし、最高の地位にいるじゃないですか。俺、いえ、僕より何倍も凄いですよ」
「ははは。まあ、ロイヤルガードは平凡では許されないからね」
「は〜〜〜、大変ですね」


 いやはや、凄いものだ。
 それにしてもシルヴァネール卿は身長が高い。この世界の女性たちは平均的に低いが、シルヴァネール卿は珍しいほどの長身だ。
 長身といっても168cmほどだが。
 オーディネル卿も178cmほどで、俺とほぼ同じくらいだ。


「口調も楽にしてくれて構わないよ。君のこと気に入った」
「うむ、そうだな。私も好ましい人柄だ」


 敢えて言おう。
 それは誤解であると。
 俺はひたすらエロとピンクな妄想に捕われているのだ。


「コウイチと読んで構わんか?」
「ええ。好きに呼んでください」
「ではコウイチ。聖王国レイアースの近衛隊に入らんか? 私かアルフォンス、ミュンツァー卿のいずれかの部隊に入ってその力、振るってみないか?」
「うん、それはいい考えだディアーナ。どうだろう、コウイチ」
「え、ええと・・・・・・」


 急に誘われてしまったが・・・・・・それは困る。
 俺は別に強いわけじゃない。勇者の剣と宝玉のおかげで強く見えるだけなのだ。
 兵士になれば、既定の装備品になり、俺の弱さが露出してしまう。
 そうなれば・・・・・・この2人に俺は呆れられるだろう。
 それは・・・・・・とても嫌だった。


「ちょっと難しいかもしれません」


 俺の言葉に残念そうな表情を浮かべるオーディネル卿とシルヴァネール卿。
 ちょっと嬉しかった。


「・・・・・・そうか。だが突然な話しだ。コウイチの事情もあるだろうしな。無理を言ってしまった」
「コウイチ。気が向いたらいつでも私かアルフォンスを尋ねてきてくれ。その時はいつでも歓迎しよう。そのくらいの権限はあるのでな」
「ありがとうございます、オーディネル卿。シルヴァネール卿」
「僕のことはアルフォンス、もしくはアルフで構わない。もちろん、公共の場以外でだが」
「私のことはディアーナと呼んでくれ。もう私たちは知り合ったのだ。仲良くしようじゃないか」
「ありがとう・・・・・・アルフォンス、ディアーナ」


 か、感激だ!
 人柄も本当に素晴らしい人物であるアルフォンスとディアーナ。流石はロイヤルガードというべきか。
 本当に光栄なことだ。


 それからは街の生存者を探して遺体を埋葬し、俺とディアーナたちは王国に戻った。
 俺は彼女たちの部下にも印象良く受け入れられ、とても仲良くできた。
 初めてこの世界に来て、俺はメイド以外の人で仲が良い人ができたのだ。
 ちなみに。
 俺が今住んでいる場所を教えると、少しびっくりしていたアルフォンスとディアーナは面白かった。

 
 ちなみに、もし暇が出来たら遊びに行くよと2人に言われたので、快く承諾した。
 そして俺が屋敷に戻り、そのことを話すと、シズルもビビもミリィも妙に不貞腐れたのでとても困った。
 ・・・・・・何かした?



☆『魔人斬り』『はやぶさ斬り』を修得しました☆

設定


■聖王国レイアース ロイヤルガード(王直属近衛兵)

■人柄、武芸、知識、軍略、指揮に優れた最強の騎士のこと。

■ベルナルド・ミュンツァー卿(40歳男性)
 ディアーナ・シルヴァネール卿(23歳女性)
 アルフォンス・オーディネル卿(23歳男性)

■聖王国の武力の要。
 いざとなれば、ロイヤルガードが軍を指揮する。
 その実力は一騎当千。
 剣技・魔法も優れた超人。




2008/11/30