序章  シン・アスカとステラ・ルーシェ 




「ステラ・・・・・・」

 ある医療用施設の中で眠る少女の綺麗な金髪の髪を撫でながら、燃え盛る真紅の瞳をもつ少年は呟いた。

 その少年は死からギリギリで逃れることができた少女を、とても愛しそうに見つめ寄り添っていた。

 ステラと呼ばれたいる少女は、点滴に繋がれながら穏やかに眠っていた。

 とても、穏やかで暖かい世界に。





「俺だ!! シンだよ!!」

 少年の悲鳴のような叫び声が、地獄のような光景が広がるベルリン市街に集結した全ての勢力の全クルーが聴いた。

 戦争の対立国、連合軍とZAFT、そして第三勢力であり何がしたいのか解らない大天使と称されるアークエンジェル。

 そこにいた、全ての人が、そして少年の同僚や上司が聴いた。

 彼をよく知る者たちからすれば、彼は全周波数で突然何を言い出すんだという想いだ。

 そして彼の叫びは止まらない。

「大丈夫だ! キミは俺が、俺が守るからあああああああああああああぁぁぁぁぁ!!」

 全ての者が息を呑んだ。

 少年の悲鳴のような咆哮が、あまりにも痛々しかったから。

 だが少年の言葉を一笑する者もいた。何故なら、相手の新型巨大MAはあまりの殺戮を繰り広げていたのだから。

 あのヤキンの英雄フリーダムがきても大暴れし、人々をゴミのように吹き飛ばした。

 だから、あの死神のようなモノに搭乗する人物が、そんな言葉に耳を貸すとは思わなかったのだ。

 だが。

 事態はその場にいた者たちの予想を裏切った。

「なっ!?」

 なんと巨大MAが戦闘行為を止め、腕を下ろしたではないか。

 それは、この戦場のあらゆる刻が止まってしまったかのようで。

 まるで、あの大人のような巨大MAが子供で、迷子になっていた子供が、親を見つけたかのように。

 このまま戦闘は終了するんだと、誰もがそう思ったときだった。

「あっ!!」

 戦場を舞っていた不殺を気取るフリーダムが両機に近づいた時だった。

 いきなり巨大MAが動き出し、最大出力で荷電粒子砲で攻撃しようとしているではないか。

 しかもその射線上には雄叫びを上げた少年の乗るMS・インパルスもいるではないか。

「シン!」

 少年を知る同僚と上司から声が上がった時である。

「もうやめろーーーー!! これ以上破壊したいのか!」

 フリーダムから罵声があびせられ、コックピットに限りなく近い射出口にソードを突きたてた。

 エネルギーが出口を塞がれたせいで流れが逆流し、機体が膨張して爆発しそうになる。

 このままでは、巨大MAに乗る少女は死ぬ。

 死、という言葉に過敏に反応し、死にたくないと嘆いていた彼女。

 俺が守ると、何度も言った。

 今度こそ守るとそう何度も自分に誓った。

 守れなかった、非力であった昔の自分とは違うはずだ。

 シンは、まるであの時に犠牲になった妹・マユと少女・ステラを重ね合わせ、無我夢中で突っ込んだ。

「ステラーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」

「なっ!?」

 フリーダムから驚愕の声があがる。

 それは当然のことで、いわば爆発寸前の場所に生身で飛び込んでいくようなものだ。

 そんな恐怖を知らないかのような、まるで自分の命などどうでもいいかのようなインパルスのパイロットに驚いていた。

 インパルスは、自分が傷つけたコックピットの裂傷跡からにインパルスの手を突っ込み、ステラをその手に掴んだ。

 正直無我夢中で、後に思えばよく握りつぶさなかったと戦慄の思いで過去を振り返ったのだが、この時ばかりは自分の能力に感謝した。

 大爆発を起こした巨大MAは、フリーダムや市街地を衝撃波で吹き飛ばした。

 衝撃から立ち直った各軍は改めて戦場を見つめる。

 その場にあったのは宙を舞うフリーダムと、残骸と化した巨大MA・デストロイの残骸だけであった。

「シンは!? シンはどうなったの!?」

 同僚のルナマリア・ホークは眼前で起こった信じられない現象を否定するかのようにシンを心配している。

 ルナマリアの言葉に呼応するかのようにモニターに戦域図が表示され、少し離れたところにインパルスのマーカーが表示されている。

「よかった・・・・・・なんとか無事みたいね」

「インパルス、応答してください」

 艦長であるタリアが安堵し、官制のメイリン・ホークがシンに呼びかける。

 だが、インパルスに搭乗するシンからの応答はない。

 しかもあろうことか、インパルスが戦場から、自分たちから離れていくではないか。

「シン!? シン、応答してください! どこに行くんですか!?」

 メイリンとタリアが何度も呼びかけるが応答はなく、そのままインパルスは去っていった。

 この日、インパルスに乗るシン・アスカが脱走兵として登録された。

 そしてこの瞬間に、この世界の大局は大きく変わってしまったのである。





 シンは戦場から離れたあと、当てもなくコアスプレンダーで逃走し、弱って気絶していたステラを休ませるためにギガフロートの近くに不時着していた。

 コアスプレンダーだけなのは、爆発の衝撃と突っ込んだ時に機体が完全にイカれていた事が理由である。

 そして薬と戦闘によって弱っていたステラを抱え、これからどうしようかと途方に暮れていた時だった。

 金髪の白衣の女性が現れ、ステラの症状を見ると「ついてきて」と言って、シンとステラを匿ってくれたのだ。

 それから2ヶ月という期間をかけてステラの薬漬けの身体を、元の身体に戻してもらったのだ。

 この女性にはシンはまったく頭があがらない。

 その間に戦争は終結し、地球軍とプラントの間にオーブが中間として協定を結んだのである。

 シンはステラとゆっくりと過ごす事で家族が死んでから一杯一杯だった頭が冷静になり、物事をゆっくりと考える事ができたのである。

 同僚たちの事は気にはなったが、ステラに比べるとやはりどうでもいいこと。

 シンはステラと同様にゆっくりと心のリハビリに勤め、気付けば半年の時間が過ぎていた。



「シン!!」

「ん、どうしたんだ、ステラ?」

「これ見て! こんなに上手く作れたの!」

 ギガフロートから少し離れた所に居を構えるシンとステラ。

 シンが助けてくれた女性のいるギガフロートの警備員として恩を返すために働いているのだが、帰宅するとステラが勢いよくキッチンから飛び出してきたのだ。

 ギュッと抱擁を交わして、腕をひっぱるステラの後を付いて行くと、そこにはご飯とお味噌汁、焼き魚といった簡単な夕食が用意されていた。

「うわぁ! すごいじゃないかステラ! ほんとに美味しそうだよ!」

「えへへ」

 まったく一般教養・常識というものがなかったステラは、身体が完治するとその補完の為に日々勉強に勤しんでいた。

 この頃はご飯を作ることに挑戦していて、どんどん腕を上げている。

 たしかに、あまりに簡単なモノだし、それを腕が上がっているとは言い難いかもしれないが、シンにとっては違う。

 ステラは本当に頑張り者だなぁ、とホクホク顔で食べている。

 殺したいほど単純かつムカツク思考である。

「おいしい?」

「ああ、本当に美味しいよ」

「やったぁ♪」

 クルクルとその場で回りだし、喜びを表現するステラ。

 白いワンピースがふわりと翻り、天使のような笑顔を浮かべるステラ。

 とっても嬉しそうだ。

 本当に美味しかったらしく、あっという間に食べ終わったシンは風呂に入った。

 すると、扉の向こうからステラが乱入してくる。

「シン、ステラも一緒に入るの」

「うん、おいでステラ」

 ・・・・・・・・・・・・ちょっと待て。

 たしかに突っ込みを入れたいだろうが、だがシンとステラは毎日のように一緒にお風呂に入っているのだ。

「うぅ〜〜〜〜!」

 ステラの髪をシャンプーとトリートメントでしっかりと洗ってあげるシン。ステラは目をぎゅっと瞑り、う〜う〜唸っている。

「はい、終わり」

 お湯で洗い流すと、シンとステラは一緒にお湯に浸かる。

「今日は、どうだったの?」

「ん〜、まあ昨日と一緒で雑用とかさ」

「ごめんね、シン。ステラの所為で・・・・・・」

「いいんだよ。ステラが俺の傍にいてくれるならさ。俺はそれだけで救われてるんだから」

「シン・・・・・・うん♪」

 実にラブラブな2人である。

 お風呂から上がると、ステラと一緒に勉強の時間だ。

 一般常識を教えたりして、深夜11時ごろまでそれに費やす。

 その後はいつものパターンだ。

「じゃあ、いくよ、ステラ」

「うん! ・・・・・・・・・・・・・・・・・・あぁっ!」

 1つの布団で寝ている彼らは、甘い蜜月な夜を毎日送っていた。









つづく!



あとがき。
いやいや、少しばかりエロい作品だしΣ( ̄ロ ̄lll)
管理人はシン×ステラのカップルが大好きです。
彼らには幸せになって欲しかった、その思いからこの物語は始まりました。
大分昔に書いたものなので、今まで眠っていたのですが、このたび引っ張り出してきました。
ステラは・・・・・・最高です。
シンは・・・・・・いい男です。