第一話 ドラえもんと別れ、のび太成長する


『僕がいなくて大丈夫?』
『しっかり勉強もスポーツもがんばるんだよ? 僕はもういないんだからね』
『じゃあ・・・・・・元気でね、のび太くん』

 僕は笑顔で見送ったはずだった。
 少なくても、自分はそのつもりだった。悲しかったけど。
 僕はドラえもんと約束したんだ。


 のび太はドラえもんが帰った後は、しばらく心を押し殺してがんばっていたつもりだ。
 すると友達のジャイアンとスネオは4月1日ということで「ドラえもんが帰ってきた」
 と嘘を吐いてきた
 自分は、それを信じてしまって。
「ばーか! 今日はエイプリルフールなんだよ!」
「悔しかった僕等を騙してみろよ!」
 そういったジャイアンとスネオは去っていった。
 いつもならタダのイジメで済んだだろう。
 だが、今度ばかりはタイミングと内容が問題だった。
 蹲ったのび太にしずかちゃんは近づいたが、のび太には何も言えなかったのだ。
 そうして、のび太は帰っていった。
 計り知れないほど、傷ついた心を抱えて。


 それからのび太は変わってしまった。
 小学5年生から小学6年生に移ったのび太達だったが、のび太はしばらく学校に来ない状態に。
 しずかちゃんやジャイアン、スネオ、出来杉くん達が何度も様子を見に訪れたが、1回も会おうとしなかった。
 夏が過ぎ2学期になってやっとのび太は登校してきた。
 そして、みんなが絶句したのだ。
 のび太の変わりように。


 まずは容姿事態が変わってしまった。
 坊主に近かった頭は、すっかり伸びて芸能人のイケメン俳優のような髪型になっていた。
 そして丸いメガネは薄く細くなり、体中に筋肉がつき締まっている。
 そして何よりも驚いたのが・・・・・・
 のび太が勉強を真面目にやっているということだ。いや、異常なほど勉強をしている、ということだった。
 また、泣き虫で底抜けに明るくポジティブな性格だった彼が、あまり笑わなくなったということ。  のび太は。
 ドラえもんがいなくなったことで、心に空虚ができて。
 それを埋める事が仲間の誰もできなかった為に、変わってしまったのだった。


そして小学校卒業の日。
「野比くん、卒業・・・・・・おめでとう」
「ありがとうございます、先生」
 この先生には、とても怒られた。
 どれだけ感謝しても、感謝しきれない。のび太は先生とガッチリと握手を交わして言葉を紡ぐ。
「いろいろと、お世話になりました」
 のび太の言葉に、どれだけ彼の想いがつまっているのかを感じたのか。
 先生は何度も頷き、そして嬉しそうにして。
 だが、心配そうに言った。
「野比くん。キミは本当に、本当〜によく、この1年、よくがんばった。だが・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「いや・・・・・・よそう」
「・・・・・・そうですか」
「ただ、キミの幸せを願っているよ。何かあったらいつでも先生の所に来なさい」
「はい、先生。ありがとうございました!」
 こうして、野比のび太は去って行った。
 先生は、学力もトップになるほど成長し、変わってしまったそんな野比のび太を、見送った。
 彼は危惧していたのだ。
 このままでは、潰れてしまうと。
 誰か、野比くんを助けてやってくれ、と。
 そして。
 その願いはすぐに叶えられたのだった。

 学校からの帰り道。
 仲間達と打ち上げの話が上がったが断り、そのまま帰宅するのび太。  卒業式に来ていたパパとママには先に帰ってもらった。
 両親は自分のことをとても心配していた。
 だから、自分は大丈夫なんだと、そう伝えるつもりで帰宅していた。
 その瞬間だった。
 自分とその辺りがなんだか影で覆われたのは。
 のび太がバッと上空を振り返ると、そこには、ありえないはずのもの。
 たったいちど切りの出会いで、でも忘れられなくて。
 彼女を守ってあげたい、助けたいと思った時に、乗っていた乗り物。

『―――さん、がんばるから。僕、絶対にがんばるから』
『また、会いましょう――!』

 そしてその長方形方の絨毯に乗っている人物が、僕を呼んだ。


「のび太さん! 会いたかった!」
「・・・・・・み、美夜子さん!」


運命の再会だよ。 満月美夜子さん。


つづく