外伝 ルーク・フォン・ファブレ
注意:アビスの仲間たちの扱いが非常に悪いです。アニス・ジェイド・ガイ・ナタリアのファンは読まないほうがいいです。
ルーク・フォン・ファブレは、アクゼリュスという街へ親善大使として人々の救済活動を叔父である国王に任命された。
そして到着したその日、ルーク・フォン・ファブレという男の魂は、死んだ。
『超振動を起こして障気を中和する。その後、私と共にダアトへ亡命すればいい。これで戦争は回避され、お前は自由を手に入れる』
『俺、人に必要だなんて言われたの初めてだ』
ヴァンという、信じていた師匠がルークを裏切ったのだ。ただアクゼリュスの地下でこれをすれば全ての人々が救われる、そう教えられて。
ルークはこの時、仲間たちから既に呆れられた目を向けられていた。
だが、ルークは自分を必要としてくれる人の下へいきたかっただけなのだ。ルーク自身が必要だと、言って欲しかっただけなのだ。
その結果、ヴァンに裏切られてアクゼリュスは消滅。数万人もの人々が死んだ。
「ここにいたら馬鹿な言葉にイライラします」
「自分が消滅させて、何万もの人を殺したくせに認めないなんてサイテー。こんな屑放って置いていきましょう、イオンさま」
「ルーク、あなたは変わってしまったのですね」
「あまりがっかりさせないでくれ」
次々と浴びせられる罵声。
そんな事は言われなくても解っていた。最悪な事をしたことくらい。
だけど。
俺はアクゼリュスの人々を救いたかっただけで、俺の唯一の理解者だと思っていたヴァン師匠は俺を使い捨てにして。
心の整理をする時間すら、そんな猶予すら与えないで、みんなは俺を捨てるのか?
だから、呆然としたルークの心は、壊れた。
どれだけ時間が経っていたのか、気付けば停泊していて、ルークの足元にはご主人さまと慕うチーグルのミュウだけが悲しそうに抱きついていた。
このミュウだけは、自分を慕ってくれて、未だに信じてくれる。
だから、せめて自分を見てくれている最後の存在・ミュウに見捨てられないためにも、行動しなきゃと思った。
フラフラと立ち上がり、ミュウを抱えて歩いていった。
その時だった。
「・・・・・・落ち着いた?」
「・・・・・・・・・・・・」
振り返ったら、看板の見えにくい物陰にティアがいた。ジッとルークを見つめて、悲しみと憤慨の炎の色を宿して。
俺は、何の言葉も言えなかった。
ただ心が壊れた反動が、この時に明確になったと言ってよかった。
気がつけばユリアロードを抜けて地上に出ていた。
何故かティアがずっと付いて来ていて、ルークはゆっくりと足を進めた。
知らなくてはと、形の無い何かを求めて彷徨った。
それからは激動の流れといってもよかった。
俺が六神将『鮮血のアッシュ』のレプリカ、模造品であり、人形であるということを知った。
そしてユリアの預言にアクゼリュス消滅が詠まれていて、俺がこの時に死ぬはずだったという事も知った。
それらを知った時、誰も信じれなくなった。
「ハハハ・・・・・・そういうことか・・・・・・叔父上は・・・・・・父上は・・・・・・俺が死ぬ事を良しと・・・・・・したのか」
親善大使任命の時に教えてくれた言葉。自分がいくことで繁栄が約束されていると言った。
どこか態度が余所余所しかったのは、こういうことだったのだ。
当然だ。
自分は模造品で、本当のファブレ公爵家の息子はちゃんと生きているのだから。
ミュウとティアが、必死でルークに何かを言っているが、この時は何も聞こえなかった。
そして気がついた。
誰も俺を、ルーク・フォン・ファブレとして見ていないことに。
幼馴染で世話役、親友だと思っていたガイは事あるごとに「早く記憶を取り戻せ」と言っていた。つまり俺越しにアッシュを見ていた。
幼馴染で王女でもあるナタリアは、昔にした約束にこだわり、やっぱり俺ではなくアッシュを望み、そして見ていた。
マルクト帝国軍のジェイドは、自分をレプリカとして見ていて、そして有効に使える手駒である平和への道具としてしか見ていなかった。
アニスは自分に己の幻想を重ね見ていて、自分の犯している罪を棚に上げて弾劾し、結局はアッシュに着いて行ったから、彼しか見ていない。
叔父上も、父上も。
母上はどうか解らないが、オリジナルであるアッシュが戻れば喜ぶだろう。
俺の居場所なんてないじゃないか。俺自身を見ていてくれる奴なんて――――。
「ティア?」
ならば、何故ティアが俺の目の前で、ここにいる?
なぜ、そんなに涙を浮かべて、必死になって俺を心配している?
こんな最低な、人形なんかを。
再び壊れかけ寸前にまでなったルークを抱きしめたティアは語った。
「あなたがした事は、知らなかったからといって許される訳じゃない。でもそんな事は言われなくても、見えにくいけど優しい貴方が解ってないはずはない」
「私は、あなたと2人っきりで一緒に旅をしてきたから、あなたを見ていたから、そんな事は知ってる」
でも私は。
自分だって数万人も人を殺してしまったら、パニックになって、正直にいって認めたくないって心が拒絶したがると思うから。
ティアは言葉を紡ぐ。
「貴方は少し時間をおけば自然と立ち上がり、行動を起こすと分かっていたから、貴方を待っていたの」
貴方が変わってしまったのは、甲板で振り返った時にあなたの顔を見た瞬間にハッキリ感じてしまったわ。少し、悲しかった。
「もちろん『自分は関係ない』って叫んだ言葉は、ムッとくるものがあった。それは否定しない」
でもルークを信じていたかったから、とティアは呟く。
ティアの想いが、ルークの凍てつき砕け散った心を、ゆっくりと再構築していった。
ティアの言葉を聞いたとき、俺はティアの想いに応えよう、そう思った。
彼女は俺を、一人の人間としてみてくれている、それが分かったから。ここにいることで信じることができたから。
ルークは立ち上がり、長かった紅い髪を切り落とした。
ティアとミュウが息を呑んで見守る中、ルークは振り返ってティアに宣言する。
「見ていてくれティア。俺のこれからの生き様を」
やるべきことは、決まった。
それからは世界を守るために奔走したものだ。
アニスが大詠史モースの手先だと知った時、ガイが俺を殺すのが目的で近づいてきたと知った時、ジェイドがレプリカ生成技術・フォミクリー開発者だと知った時、ティアが一番憤慨していた。
「何それ。あなた達2人はそんな罪があるくせに、ルークだけを非難したのね。どこにその権利があるっていうの? この裏切り者が」
偶然会ったセフィロトツリーの場所で、ティアは彼らにそれを言った。
そう。アニスはイオンの守護者役。それなのに如何なる理由があろうが彼を売り渡したのだ。
知らなかった、そうできる立場じゃなかった、あの時はしかたがなかった。そう、彼らは言い訳をした。
ティアの心が、完全に彼らを軽蔑し、怒りに満ち溢れた瞬間であった。
その言い訳をするなら、アクゼリュス消滅時にそれしかなかった、知らなかった、仕方が無かったという言い訳をしたルークを責める権利がどこにあろうか。
ジェイドに関してはさらに殺意さえ向けた。
あなたは普段は薄ら笑いを浮かべて、過去を背負うみたいなことを言っているが、禁忌として臭いものに蓋をし、過去から逃げようとしている癖になにを今更と弾劾した。
アニスには、この薄汚い裏切り者が、と言うだけ。それだけでアニスの心は傷ついた。
さらに言い募ろうとしたティア。
彼女はルークを間近で見ていたから、それを知る者として彼らを許せなかったのだ。
ただ、それだけ。
そんな言葉を吐かせたくなくて、ルークは彼らを素通りして淡々と仕事をこなしていった。
彼らにかける言葉も、言い訳する気も、謝罪の言葉も、言うべき言葉もなかった。
アニスの裏切り行為を発端に事件が起こり、イオンが消滅した。
レムの塔で、世界中に満ち溢れた瘴気を消すために大勢のレプリカたちを巻き添えにして消した。
その場には、何も残らなかった。レプリカたちの想いや、それを知る者たちが誰も。
その度に、元仲間たちと激しく衝突した。
何度も戦い、殺し合いをした。
人数の差はあったが、確かな信念を持ったルークたちと、どこか罪悪感を抱えた元仲間たちが相手では、ルークたちが勝った。
きっと迷いがあったのだろう。
全ての準備が整い、ヴァンの野望を阻止するために、最終決戦前夜に皆と会った。
ティアは飲みたくない、会いたくないと言ったが、ルークのお願いで渋々頷き、宴会に参加したのである。
そして―――。
アッシュとの存在をかけた勝負を繰り広げ―――。
ヴァンと戦い―――。
ローレライを解放して、ルークは消滅した。
あとがき。
なんだか年表のようになっちゃいました(汗)
許してください。
今回は本編前の動向を描きました。これを参考にしてくれれば、本編を読みやすいかも(≧∇≦)b OK
とりあえず私は彼らが嫌いです。
そもそも彼らは王族に対して仲間だとはいえ、無礼な言葉を吐きすぎです。
いくら仲間だとはいえ、皇族に対しての彼らの言葉は打ち首ものです。
まあ、それは不法侵入のティアにも言えるんですがΣ( ̄ロ ̄lll)
あれはナムコの設定の甘さに問題があるでしょう。
というか、後半から、ハ? という感じでした。
こいつら結局ルークを利用して世界を助けただけじゃん、と突っ込みを入れました。
さんざん貶しておきながら自分が困ったら言葉巧みにルークの同情心を誘い、逃げ道を塞いた選択肢を与えた彼ら。
特に、アニスとジェイドのウザさには反吐がでました。
まあ、だからこそ、ルークとティア&ミュウしかこの作品には出てこない訳ですが。
とりあえず、本編を読むことにおいて、こういった流れなのか、と知っておくだけでいいです。
アニスたちのファンの人はごめんさい。
この場を借りて、不快な想いをされた方に謝罪を。