「さて……では向かいましょうか。悲願を叶えてくれた愛し子の元へ」
ソレは常に見ていた。
人の歴史を。
2000年以上の昔から。
ソレは言う。
この世は対比で成り立っていると。
正義には悪、光には闇、強者と弱者。
では悪魔には・・・・・・?
そう。
過去にナギ・スプリングフィールド達が出会った創造主と呼ばれるものがいるのなら、相対するものもいる。
そして仮にそれが創造主でもなんでもなく、ただの駒だったとしたら?
「あの子をこの世界に受け入れたのも私、血族をこちらに受け入れたのも私。それを知ったらあの子は感謝してくれるかしら?」
この世が対比で成り立っているという仕組みを作ったものがいて、その仕組みを作った者を人はこう呼ぶのだ。
神、と。
第39章 All of mind for you
いよいよ学園祭は前日に迫り、麻帆良学園都市全体が色鮮やかに装飾されると、これまでとは打って変わって夜の街は静かになった。
もちろん未だに疲れ知らずな麻帆良学園の生徒たちは、前夜祭ということで大騒ぎをしているが、徹夜などで連日準備に追われたクラスは力尽きたように、そしてエネルギーを補充するかのように眠る生徒もいる。
そんな前日の夕方。
3-Aの出し物はお化け屋鋪となっていたのだが、連日の徹夜作業の甲斐あってか、夕方頃に無事に完成した。
そうなってはお祭り騒ぎになる3-A。
祝杯だのなんだのと盛り上がりを見せる中、外の世界樹が淡い光を放ち始め、幻想的な光景を作り出していた。
そこで話題になったのは、麻帆良で伝説となっている話。世界樹が淡く発光する時に告白すれば、必ず成功するというもの。
もちろんクラスの皆は一笑に伏したが、朝倉など情報通が確かに過去にあったありえないカップリングについて言うと、現実味を帯びた感じがし、誰もが欲望駄々洩れの妄想に耽った。
茶々丸やクーフェイなどは妙に意気込んでおり、すこし怖い。
そんな中、ルークとその仲間たちはそんな話題に「ふ~ん」と相槌を打つだけであった。彼女たちからしてみれば、すでに願いは叶っているも同然であり、現状に満足しているのだから告白などどうでもよかった。
独占、という言葉に少し心が動きかけたのは仕方ない。
そんな彼女たちであったが、聡明な夕映と木乃香がある可能性に気付いた。
「ちょっと待って下さいです。もし万が一、ルークに告白でもする人がいたらマズイ気がするですよ」
「「「「「・・・・・・!!」」」」」
「うちもそれに気が付いたんだけど・・・・・・やっぱルークでも抵抗は難しいんかなぁ~」
「・・・・・・可能性もありますが、それでも万が一ということがある以上、警戒はしておくべきです。そうじゃないと・・・・・・どこかの女にとられるです」
ガガーンとショックを受けるアスナや刹那。たしかに言われてみればその通りだと、アキラや亜子や美砂も頷き、学園祭中は常にルークの傍に誰かが必ず居ることを皆で約束したのだった。
それから微妙にカオスっぽい光景の教室から出た一同は、前夜祭へと繰り出した。
場所は変わって女子寮の屋上。屋根の上にルークとネギはいた。
珍しい組み合わせの2人だが、実は先ほど学園長から2人は呼び出されたのだ。
・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
学園祭前夜祭などで大混雑するはずの世界樹広場。ネギとルークは学園長に呼び出され向かっていた。
ホームルーム終了後に向かう為、必然的に2人は一緒に向かうことになる。
無言で微妙に気まずい雰囲気が流れていたのだが、到着するとそれどころではなくなった。
不気味なほど静まり返った広場。
魔法教師・魔法生徒の十数名が集結。
小太郎や馬鹿馬鹿しいと言わんばかりの表情のシンクや彼の従者の暦や調たちまでもいて、なんだか物々しい雰囲気に包まれていた。
ティアやイオンがいないのが不思議に思ったルークであったが、彼女たちは孤児院創設のための準備に奔走していて忙しいという理由にすぐに思い当たった。
学園長から今回呼び出した理由はこうだ。
学園祭期間中、学園の象徴ともいえる世界樹が異常発光する。その発光は樹からこぼれだした魔力で、六星の陣内において告白など心理的なことへの要求をすると、相手を呪いのごとく捉えて叶えてしまうということだった。
それは確かに未来永劫の拘束・洗脳ともいえるものなので、魔法使いの自分達は見過ごせないということ。
よってそれを阻止する、ということの決起集会というか、会議のようなものだった。
ネギは最初は「告白くらいなら良いんじゃ?」と言っていたが、洗脳という学園長の言葉に考え直し、協力すると宣言した。
ルークとシンクに冷たい目が集う中、驚くことにシンクも面倒臭いという態度をしながらも渋々承諾。ルークも頷いた。
そこまでは良かった。
そこで佐倉愛衣が、人払いしている状況で誰かが覗いていることを察知。
ルークもとりあえずは追いかけていったガンドルフィーニを追う。ガンドルフィーニや高音はジックリと絡め手で包囲し、ついに撃墜。
盗聴行為を働いていた者を観ると、その犯人は3-Aクラスメイトの超鈴音<チャオ・リンシェン>であった。しかも何故かネギと小太郎とのどかが一緒にいた。
そこでガンドルフィーニは、ネギにチャオの引渡しを要求した。少なくても事情聴取と厳正な処分が下される、それは魔法使いの存在を隠すためだということだった。
「さらに言えば、私は突然に記憶を消すと言っているのではない。少なくても3度警告しており、彼女は解っていながら無視をした。規則を破れば処罰されるように、魔法使いだろうが処分は受けるのは当たり前だ」
「で、でも嫌がっているのに記憶を消すなんて良くないじゃないですか!」
「チャオ君は危険人物だ。魔法結界の中に科学技術で侵入できることが証明している。そしてあの凶悪犯エヴァンジェリン、そこの犯罪者ルーク・フォン・ファブレに力を貸しているんだ。油断はできない」
―――まあ、正論だな。
ガンドルフィーニの言葉に対して、嫌がるような白々しい演技を続けるチャオを見ながら、ルークはそう言った。
高音やガンドルフィーニはルークの言葉に少し驚いたが、自分達の持論を支持するセリフを言うルークに満足そうに頷き、チャオを連行しようとした。
そこで止めたのは、ネギ・スプリングフィールドであった。
「3-Aの生徒に勝手に手を出さないでください! 僕の生徒を勝手に凶悪犯とか危険人物とか決め付けないで下さい! チャオさんは僕の生徒です! 僕に全て任せてください!」
きっぱりと言い切ったネギに気圧されるように高音やガンドルフィーニ、愛衣はたじろぐ。
英雄の息子、という気質が発揮された瞬間であり、そこに期待しているガンドルフィーニはネギに任せようとした。
さすがにその対応にルークは呆れた。故に今までおとなしくしていたが、ついに口を出したのだった。
「ガンドルフィーニ先生。少なくてもチャオが何かを企んでいることは事実なのですから、そこだけでも吐かせないとまずいんじゃないか?」
「・・・・・・なに?」
突然口を開いたルークに、ガンドルフィーニは眉を顰めた。当然だが、彼はルークを嫌っている。
さっきは自分の意見にルークが同意したので気を良くしたが、それでも彼が嫌っていることに変わりはない。
開放する方向だったのにまた雲行きが怪しくなったことでチャオは少し不味いな、とでもいう表情になる。ネギや小太郎も眉を顰めた。
「チャオが何かをたくらんでいる事は事実だろう? 警告を無視して違反行為を犯したんだ。少なくても彼女には魔法使いに対して何かを行おうとしている思惑があることは事実。それが良いことなのか悪いことなのかは別にして、な」
「・・・・・・・・・・・・確かに。だがそれも含めてネギ先生に任せると決めたんだが」
「おいおい、あんたそれ本気で言ってんのか? こいつはまだ10歳のガキだぞ。責任のせの字も理解してないガキに、この『天才』のチャオのたくらみを打破できるとでも?」
「ム・・・・・・」
「確かにネギは英雄の息子様、なんだろう。この麻帆良に来た日の行為を思い返せば確かに成長もしてると思う。それは俺も認める。だが・・・・・・それとこれは別だろうが」
「そうだな・・・・・・少なくても私にも責任はある。だが驚いたな・・・・・・君は犯罪者。こんな正論を言うとは思わなかった」
ガンドルフィーニはルークの発言に予想外すぎて驚いたよ、と言う。
一方でルークも肩を竦めて言った。
「いや、正直どうでもいいんだけどさ。まあ、俺だって数え切れないくらい修羅場を潜ってきたんだ、厄介事もなるべく少ないほうが良い。それに誰かの陰謀とかそういうのって想像以上に解決がめんどくさいって知ってるからな」
「なるほど・・・・・・そうか」
ガンドルフィーニは難しそうな顔をして一瞬だけ逡巡し、そして険の取れた表情で言った。
「いや、助かった。危うく場の雰囲気に流されて間違いを犯すところだった。ありがとう」
「礼はいいさ。ただ記憶消去は学園長のジイちゃんに判断を任せることを薦めるぞ」
「ああ、わかっているさ」
そう言ってガンドルフィーニは拘束している高音と愛衣の間にいるチャオに相対する。
ネギは「待ってください!」と叫ぶがガンドルフィーニは取り合わない。彼にも仕事があり、責任がある。それは、大人として。
その時だった。
「やれやれ・・・・・・仕方ないネ。少し早いが・・・・・・許容範囲内カ」
そう言って、突如消えた。
初めからその場にいなかったように。
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
それからはガンドルフィーニや高音はチャオの行方を捜索するために去り、ネギと小太郎とルークが場に残された。
小太郎は特にどちらの意見に対しても感慨は抱いてないようで「早く帰らな千鶴ねーちゃんにネギ刺される」とか言いながら帰っていった。
そこでネギとルークは、カモを連れて屋上にやってきたのだ。
ネギはチャオの件に関して、ルークがチャオを売ったような言葉へ怒る素振りを見せなかった。これに関してルークが驚いた。
もちろんネギも難しそうな顔をしていたが、彼はその反応だけで、ルークと話がしたいと言ってきたのだった。
「・・・・・・・・・シンクさんが言っていたこと、ずっと考えていました。ルークさん、貴方が言ってたこと、ずっと引っかかってました」
目の前の大きな月を、ネギはジッと見詰めながら言う。眼下ではバカ騒ぎをしている麻帆良の生徒の声がする。
カモはネギとルークの会話の邪魔をしないように、オコジョのくせに器用にお茶を飲んでいた。
「正直言って、解らないことばかりです。父さんが間違っているとは思えないし、かといってルークさんやシンクさんが正しいとも思えないんです」
「・・・・・・そうだな」
「楓さんや古老師が僕に教えてくれました。ルークさんもシンクさんも、僕らの想像を上回る修羅場や戦いを経験していて、その先に辿り着いた結論や答えを持っている。だから自分達の想像の答えや本から借りたような言葉は紙くずでしかなく、説得力もなければ真実性の欠片もないんだって」
「そこまでは言わないが・・・・・・まあ、説得力は無いな」
ネギの手を握って諭すように語り掛けてきたのどかの姿が、ネギの脳裏に過ぎった。
彼女の声は、本当に必死だった。
「パートナーののどかさんは、ルークさん、貴方を信じています。『少なくても私は、あの人に何度も助けてもらった、私だけじゃなく、親友も信じている。だからそれだけで私にとって信用するには十分。少なくても自分のちっぽけな考えより、よっぽど取り入れて検討する価値があると思います』って、言ってました」
「宮崎が・・・・・・そうか」
どうやら彼女は、自分に対して信用以上の信頼を寄せているらしい。ルークは苦笑して、けれど嬉しかった。
「僕はパートナーののどかさんを何度か裏切り、傷つけてました。だから僕は、これ以上のどかさんを傷つけたくないんです! 解らないことは多いけど、少なくてものどかさんや楓さん、古老師を悲しませない道を選びたいです!」
ネギはルークにそう言った。
子供ながらの不器用な言葉は、確かにルークに届いた。
なぜなら、ルーク自身がボロボロだった時、内から出た想いは傍にいたティアとミュウの信頼に応えたい、彼女たちの想いに応えたい、その気持ちだけだったのだから。
「そうか。お前がそう思ったなら、その道を行けばいい。俺はその道を応援する」
「ルークさん・・・・・・」
「お前が父親を盲目的に慕うんじゃなく、クラスの生徒を、パートナーを、仲間をしっかり見るようになって嬉しいぜ? あの時とは大違いだ」
それは、エヴァの別荘でのどかを泣かせた一件。少なくてもネギがもっと彼女達と相談し、建前だけじゃなく本心で語っていれば、のどかは泣かなかったはず。
そしてそんなネギにルークは怒り、だけど彼ものどかの心を解ってなかったから暴走し、危うく彼女を殺しかけた。
そうだ。
「きっと・・・・・・俺達はいろいろと間違ってた。いや、未熟だったんだな」
「・・・・・・そうですね。とても難しいです、人の想いや思想っていうのは」
「ああ、難しい。きっとこれからも俺やお前もたびたび間違うんだろう。だけど仲間たちがそこを指摘してくれるさ、引っ張り戻してくれる」
「はい。それがパートナーっていうもの、ですね」
ネギとルークは視線を交錯させ、真剣な瞳で語り合い、そして笑った。
そんな2人を見てカモは思った。
(案外、兄貴とルークの兄貴は親友になるかもしれないな。本当の親友って、お互いにぶっちゃけたところまで知って、喧嘩して、認め合うものって言うし)
最初の頃が嘘のようだ、そうカモは思った。
そして自分も度々間違えてきたことを思い返し、助言者としてもっと成長しよう、そう誓ったのだった。
「ですが、賞金首300万ドルまで上り詰めた人が間違えることもあるんですね」
「当たり前だろ。俺だってまだ15年しか生きてないんだ。エヴァンジェリンだって600年は生きてるが、きっと彼女だって間違えることは多々ある」
「そう、ですよね」
「そもそも俺の賞金って、俺自身の能力によるものから来たからなぁ。本来ならソレが無かったら100万ドルもなかったと思うぞ」
「能力って、ルークの兄貴の魔法無効化能力のことッスか?」
カモが堪らずに聞いてきた。
修学旅行の一件からバルバトス・ゲーティアとの戦闘で、カモが見てきたルークの能力。
その力をカモなりに検討して、驚くべきことだがその力を仮定していた。
「・・・・・・・・・・・・」
ネギも何となくだが、その力は無効化能力だと思っていた。アスナもそうらしい。
だがそんな貴重な力が2人もいるなんて、とネギも戸惑ったものだ。
しかしルークは、そんな2人の予想を裏切った。
「いや、俺の力は魔法無効化能力なんかじゃないぜ?」
「え・・・・・・いや、でも、兄貴は相手の攻撃魔法とかを消去してましたよね?」
「う~~~ん、まあ、それもできる、というところか」
その答えは、要領を得ない言葉であった。
「やれやれ。あそこでルーク・フォン・ファブレが学園側の発言をするとは思わなかったネ」
「ネギ先生との接触は失敗したという事ですか? それだと計画にあったアレは渡し損ねたんでは?」
「大丈夫ヨ。あの『時計』はネギ坊主と接触した際にポケットにこっそり入れておいたからネ。だがそれよりも・・・・・・」
「?」
光り始めた世界樹を眼下に、既にお祭り騒ぎの麻帆良学園都市の上空にて航空中の気球船。
その上に、消えたチャオ・リンシェンはいた。隣には葉加瀬聡美とエヴァンジェリンの従者である茶々丸までもいる。
「予想以上にネギ坊主はルークの影響を受けているヨ。頑固で単純だから組し易い、仲間に引き込みやすいと踏んでたが・・・・・・少し難しそうネ」
「そうですか・・・・・・あの2人、私が見たところは仲が悪く、水と油のような関係だと思いますが」
「違うよハカセ。あの2人は確かに水と油だが、実は混ざり易く、とてもよく似た純水ネ」
「はぁ」
意味が解らない、という表情の葉加瀬。チャオは手元にある『時計』を弄る。
その時計は、少しひび割れていた。
「今回の移動でちょっと無理はしたヨ。まだ世界樹の魔力はあの時点では微量だったからネ。魔力の補充と修理が必要ネ。けれど計画に変更はなく、問題なしヨ」
「では急いで修理しましょう。計画始動はもう目前です」
チャオは茶々丸の言葉に頷き、もう一度眼下の麻帆良を眺めた。
この日のために、修学旅行ではルークへ近づこうとラブラブキッス大作戦で近づいたのだが、あの時は芳しい成果は挙げられなかった。
その結果がコレなのだが、人生なかなか上手くいかないのものだ。
チャオはそう思い、そして不敵な笑みを浮かべて自分のアジトへと戻った。
空は晴天。風はそよ風。
夏の前の麗らかな梅雨の季節に、『第78回 麻帆良祭』は始まった。
フランスの南大門を彷彿させる巨大門の入り口から入り、生徒たちは完全に仮装して、街中には象や猿などの動物から気球や浮遊物などが飛び交い、仮装行列が街中を闊歩していた。
・・・・・・幽霊だの恐竜だの、突っ込みどころ満載のものが居るが、きっと気にしたら負けだ。
明らかに本物に見える恐竜がいるが・・・・・・それも気にしたら負けだ。
また、麻帆良祭は3日間行われ、入場者数はおよそ40万人。昼夜問わずぶっ通しで乱痴気騒ぎで、数億もの莫大なお金が学園祭で動くという異常なお祭りだ。
そんな麻帆良祭は関東圏からも大量の客が押し寄せるので、やはり世代層も下は一桁台から、上は高齢者までと本当に幅広い。
お祭りという面だけでみれば、日本のお祭りでも有数の規模を誇るだろう。
そんな麻帆良祭が朝ついに開始の合図が上がり、飛行船が上空を飛び交い、花火があちこちで上がる。
そして学園都市内の一角、女子高エリア内にてルーク・フォン・ファブレとネギはいた。
ネギの傍にはのどかとハルナが。
ルークの隣には夕映と刹那がいて、背中には木乃香が負ぶさっていた。微妙に木乃香に対して夕映が見る目線が怖い。
何かあったのだろうか?
「・・・・・・私だっていずれ・・・・・・というか、このかさんより私の方が早かったのに・・・・・・いえ、やはり幼馴染というのはそれだけアドバンテージが・・・・・・」
などとぶつぶつ呟いて、ルークとのどかの首を捻らせた。
とりあえず、ルークとネギは学園祭の光景に目を輝かせてキョロキョロと見入り、初めての麻帆良祭をワクワクしながら見ていた。
すると、背中にぴったりとくっついておぶさっていた木乃香が、ルークの傍にティアがいない事に不思議そうな表情をして聞いてきた。
「なあなあルーク。ティアさんやイオン様。ミュウちゃんはどうしたん?」
「ああ、ティアたちなら孤児院設立の為に東京に出ててな。今日中に戻るって話だったけど、何時戻るか分からないぞ」
「そっかぁ。残念やなぁ。せっかくの麻帆良祭なのに」
「そうだな。つーかよ・・・・・・何で俺はおんぶしてんだ?」
「ダメ? この間の一件からなんかウチ、こうしてくっ付いてるの好きになったみたいやねんけど・・・・・・」
ウルっとした瞳を向け、首もとにスリスリと鼻をこすりつけて甘えてくる木乃香。
「・・・・・・なんか、幼児退行してないか?」
「ええやん♪ 悪い気はしてないやろ?」
「そりゃ、まあな」
白いローブを纏い、占い師の格好をしている木乃香を背負うのはなかなか難しいが、まったく悪い気はしない。
先日の情事を思わず思い出しそうになるが、純粋に木乃香とのスキンシップを嬉しくも思う。
木乃香自身も、ようやく夢が叶ったことにご機嫌だった。幼い頃から想っていた相手。時には優しく微笑み、そして守ってくれた。
それまでの彼の人生は、木乃香にとって壮絶であり悲しく、でも優しい心を持つルークに幼い年齢ながらも惹かれていった。
そして7年も離れ、春が来て夏が来て秋が来て冬が来て。
春の新芽を見るたびにいつも思い出し、自分の想いを再確認して、どんどん暖めていった。
だから精神的に、心は常に近くに感じていた。
そして物理的にも近くなり、普通の仲の良さではできない距離まで近づいて、木乃香は幸せで一杯だった。
「このかぁ~、あんた本当に嬉しそうねぇ」
「もちろんやえ、ハルナ」
「うわっ、惚気られた! ラブ臭が強すぎる!」
ハルナが額を押さえて悶絶する。
「アハハ、このかさん、本当に嬉しそうですー。本当に・・・・・・な、なんだか私が、恥ずかしくなっちゃいますねー」
「そうですね、のどかさん」
「・・・・・・のどか?」
その光景に、のどかが感想を言うが、一瞬だけ苦しそうに詰まり、慌てて言葉を紡ぐ。
ネギはどもったと思ったのか、特に何も疑問に思わずにのどかに賛同し、ルークと木乃香の2人を見て笑う。
しかしのどかの親友の夕映は違った。一瞬だがその違和感を見逃さず、訝しげに眉を顰めた。
「ささ、早く教室に行こうよ。クラスの出し物、どれだけ盛況か見に行こう!」
「そうですね!」
「よっしゃ! 様子見に行くか!」
ハルナの掛け声に遮られて結局、夕映は感じた違和感を有耶無耶のまま忘れてしまったのだった。
3-Aの教室に着く前から出来ていた大行列。それは全て3-Aのお化け屋敷のための客であった。
お化け屋敷は3-Aだけじゃなく、他にも2クラスほどお化け屋敷があるので、何故3-Aだけがこんなに盛況なのか、ルークとネギは首を捻った。
それは教室前に辿り着いて判明した。
「やっほ~~! ルーク! ネギ君!」
「2人の協力もあって、ドキッ☆女だらけのお化け屋敷作戦、大成功の大繁盛だよ!」
まず出迎えたのは、桜子と明石の2人。格好が明石は獣のネコミミ付きで、ヘソ出し肩出しのセクシー衣装で、桜子も胸元も大きく開いた吸血鬼スタイルであった。
そんな2人の格好を見て、ネギは顔を赤らめて恥ずかしがり「なんて格好してるんですか~~!」と怒った。
ルークは2人に見も蓋もない言葉をかける。
「桜子、明石」
「ニャ? どうどう、ルーク君。可愛い?」
「・・・・・・痴女か?」
「ヒドッ!?」
明石が突っ込み返す。本気でショックを受けたようだ。
すると桜子が、ニヤリと笑ってルークへしなだりかかって囁く。
「・・・・・・何だよ?」
「ンフフ~~。お客様1人につき、コンパニオンの女の子が1人つくんだよ? タッチ1回500円」
「おさわりパブですかっ!!」
(兄貴、この場合はどっちかっていうとイメクラだぜ)
(カモさん、ネギ先生に変なこと教えないでくださいー)
教育者として見過ごせないネギが突っ込むと、カモが正しい言葉を教え、さらにのどかが慌てて突っ込む。
微妙にカオスであった。
「ふむ」
「ひゃわっ!?」
突如の悲鳴にネギとのどかと夕映と木乃香が振り返ると、桜子の胸を見事に正面から揉むルークが。
もみもみと2回ほど揉んで、一言。
「結構なお手前で」
「「アホ~~~!」」
木乃香と夕映がツインで頭を殴り倒すと、ルークは煙を出しつつ気絶した。
ちなみに桜子は胸を押さえて真っ赤な顔をしている。恥ずかしがるくらいなら言わなきゃいいのに、とハルナは思った。
つまり、どちらも自業自得であった。
「ま、まあ、さっさと中を見るです」
「そ、そうね! じゃあ、お2人ご案内~~~」
明石が冷や汗をかきつつ声を上げて二人を中へ招く。
「ほら、何時まで寝てるですか、ルーク」
「そうや。気絶のフリしててもあかんえ」
ズリズリと引き摺られるルークはピクリとも動かなかった。
中へと案内されると扉が3つあり、それぞれお客の好みに合わせて恐怖度が分けられていた。
ちなみに一番怖くなくて可愛さを強調している部屋には雪広あやかが、恐怖度は普通で可愛さは一番低い扉の前には佐々木まき絵が。そして最大の恐怖と最大のラブ度がある扉の前には大河内アキラがいた。
ここでネギはあやかとまき絵の自分を見つめる異様な視線に恐怖し、アキラの扉に入ろうとするのだが、アキラは気絶して引き摺られて来たルークに駆け寄って快方していた。
アキラの大きな胸に顔を挟まれて心配されつつ手当てを受けるルークは微妙に幸せそうだ。
だからネギは捕まったのだ。あやかという名の猛獣に。
「ささ、ネギ先生。こちらへどうぞ」
「え~! ネギ君はこっちがいいよね!?」
「え、いや、その」
戸惑うネギだったが、あやかにがっしりと捕まってしまった為に身動きがとれずにそのまま扉の中へと引きずり込まれたのだった。
ルークはルークで、木乃香と夕映に肩を貸してもらいながらもアキラと共に室内に入って行き、そして悲鳴を上げることになった。
「うわっ! 亜子! 村上! お前等、頭に斧がっ!? って、たくさんの手!? っておまっ、ちょっ、それはセクハラ! お前等、どこを触って! ってこのか、助けてくれ! ってそこはヤバイって、アッ――――」
本当にお化け屋敷か、怪しく思える声であった。
ちなみにネギはというと。
「うわ~~~~ん! いいんちょさん、そこはダメです~~~! って、みなさん、それは脱がしちゃっ! アッ―――――」
南無阿弥陀仏としか言いようが無かった。
2人が出口から出てくると、その格好は服を半脱ぎにされ、暴漢に襲われたかのような出で立ちであった。
その後ろから苦笑しながら出てくる夕映やこのかは笑ってるだけで、特に止めたりはしなかったらしい。
出口のところにはアスナと刹那がたまたま通りかかり、ルークは思わずアスナに抱きついた。
「あら、ルークにネギ。こんなところにいたんだ」
「ア、アスナ! 助けてくれ! 俺達のお化け屋敷は痴女がたくさんいる!」
「痴女?」
ルークの言葉に、アスナの隣にいた刹那が不思議そうな顔をする。
痴女はともかく、貴方たちの今の格好の方が変態ですが、と言いたそうだった。
すると、不思議な感触が手に伝わった。
――――モミモミ
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・わ、若くて、瑞々しい胸だと、思う、よ?」
「・・・・・・・・・・・・ルークぅ? まだ反省しとらんとは思わんかったなぁ」
自分の胸を揉みしだかれたアスナから声は発せず、背後から怖いくらいに優しい木乃香の声がぶつけられる。
ルークは汗をだらだらと掻きながら「ワザとじゃないんだよ、このか」と何度も呟きながら、アスナの胸を堪能するように揉む。
彼もイロイロな事を知り、女性を知り、愛する者と結ばれる幸福を知ったことで、いろいろとタガが外れてしまったようだ。
つまり―――エロくなってしまったのだった。
「「「いつまで触っとるか~~~~!!」」」
「ごめんなさい!?」
廊下が閃光に包まれ、激しい殴打と爆音が響き渡った。
ちなみにアスナは、顔を真っ赤にして両手を胸で多い、腰が抜けたかのように床に座り込んで恥ずかしがっていた。
「あ~~~、ヒドイ目にあった」
「そうですね・・・・・・僕もなんだか脱がされましたし、いいんちょさんは怖かったですし」
涙を流しながら、オープンカフェテラスの机でぐったりとなっているルークとネギ。
全力で殴られた後、アスナたち部活動に所属しているものは、それぞれの部の出し物がある為にそちらへ向かった。
残ったのはルークとネギ、そして何故かいる長谷川千雨。
彼女は気絶しているルークと、巻き込まれて倒れているネギを引き摺って、わざわざここまで連れてきてくれたのだ。
彼女いわく、道のど真ん中で寝てると邪魔、ということらしい。
流石に2連続揉みはまずかったと、本能に逆らえなくなってきた自分に反省するルーク。
「しかし助かったぜ、長谷川。サンキュー」
「ありがとうございます、チウさん!」
「ああ、別に良いってこと・・・・・・って、おい! その名で呼ぶなって言っただろうが!」
「チウ?」
事情を知らないルークは、その妙な名前に不思議そうな顔をする。
長谷川はネギへ詰め寄り、ヤンキーまがいにガン垂れて抗議した。
「まったく、なんで私がこんなこと・・・・・・」
ブツブツ文句垂れながらも席から立たずにカフェオレを飲む彼女は、実は面倒見がいいのかもしれない。
ルークがその様子に苦笑しながら、後頭部をさすった。
「ったく。刹那も夕映もこのかも手加減ってものを知らないんだから」
「いえ、ルークさん。むしろあれぐらいで済んだのならまだ不幸中の幸いかも」
「あれでかよ!?」
撲殺されなかっただけ幸せです! というネギに、ルークは確かにと頷いてしまった。
ほのかに普段のルークとネギがどう思っているかが分かる会話だった。
すると、微妙に会話が弾んでいるというか、流れがスムーズな2人に長谷川は訝しんだ。
「なぁ、お前等2人って、仲悪いんじゃなかったのか?」
そんな言葉に、ルークとネギは顔を見合わせ、そして同時に返した。
「いや、仲は最悪だと思うぞ」
「仲は悪いと思います」
「・・・・・・・・・・・・」
「なあ、ネギ」
「はい、ルークさん」
敢えて長谷川は何も言わなかった。
周囲を見回してみると麻帆良祭は大盛況のようで、正午の時間帯に差し掛かってくると、入場者数も当日の最高数まで至っているようで、とても賑やかだ。
「今日はどうするかなぁ」
「僕はまき絵さんやいんちょさん、四葉さん、ハルナさん、那波さん、クー老師のところを回る用事があります」
「へぇ。たくさん入ってんな」
「はい。ギリギリって感じです。ルークさんは?」
「俺か? 俺は夕映のところ行って、アキラ、アスナ、木乃香、刹那、それで亜子や美砂、椎名や釘宮たちのバンド。それくらいか」
「ルークさんもハードスケジュールですね」
「ああ。って、アレ?」
ネギの言葉に少し引っかかりがあり、ルークは首をかしげた。
「お前、宮崎はどうした? 約束はしてないのか?」
「え、はい。のどかさんとは一緒に皆の所に回る予定ですが」
「個人的には?」
「いえ、なにも」
「そうか・・・・・・・・・・・・」
(宮崎のどかか・・・・・・妙だな。あいつは先生に好意を寄せているように見えたが・・・・・・だが誘わないというのはおかしい)
まあ、そんなこともあるか、と納得するルーク。忘れていたとか、部活動があるとか、いろいろと理由はあるだろう。
そんな風に解釈するルークとは別に、長谷川は少しおかしな話に眉を顰めた。
一見するとありふれたどうでもいい話だが、長谷川は女の勘で引っかかりを覚えた。
少なくてもこんな大きなイベントの時に、好意を寄せている男がいて、そして少なからず仲良くしているなら誘わないのは有り得ないのだ。
(いや、このガキが教育実習生として入ってきた時は確かに宮崎は好意を寄せていたように見えた。だが・・・・・・いつからだった? そこまで感じられなくなったのは)
長谷川はコーヒーを一口飲んで目を伏せる。
そしてチラリと横目でルークを見る。
反対にいるネギを見る。
(何だかこいつら・・・・・・容姿も似ていると思ってたが、雰囲気もどことなく似てるな)
外見云々の話ではなく、どことなく漠然とだが似ているのだ。
長谷川個人的な主観だと、9歳のガキであるネギなど15歳のルークには魅力の点で遠く及ばない。
心理的な気遣いや、空気を読むところ、無神経な性格、あらゆる点でルークの方が優れているといえる。
もちろん年齢的な経験からくる要因も多々ある。しかしそれとは別に人生経験とでもいうべき雰囲気が『良い男』という点においてルークが圧倒的に勝っている。
そのように、長谷川千雨という少女は思っている。
(まさか・・・・・・な・・・・・・)
ふと過ぎった自分のバカな仮定に、一笑してカップを置く。
その瞬間だった。
カツン、と音が不自然に鳴り、周囲の煩すぎる喧騒が不気味なほど収縮していく。
背筋が一気に鳥肌が立ち、長谷川だけでなくルーク、ネギも身体を強張らせる。
カツン、カツン、と響く足音。
ネギの肩にいるカモが、身体の力が抜けて肩からテーブルの上に落ち、けれどガクガクと身体を震わせて『その方向』を見た。
ソレは、いた。
「・・・・・・―――――あっ」
それは、人であった。
亜麻色の髪。透き通る瞳。
背丈は160センチ半ば。腰下まで伸びたストレートな髪。雪色な肌。
天女を彷彿とさせるデザインの白服とロングスカート、両腕に巻かれて腰を潜らせた黄色のスカーフ、柔らかな表情。
『その異常な美人』を見た瞬間、ルーク・フォン・ファブレの心臓が破裂しそうなくらいに大きく脈動した。
――――俺は、この人を知っている。
初対面、間違いなく初めて会うが、だけど知っている。
「――――初めまして、聖なる焔の光」
「う…………あ」
綺麗過ぎる声。天使をイメージしてしまう心地よい響き。美し“過ぎ”る。
妙な言葉しか出てこない。
隣のネギも、目の前の女性の異常性を本能で察知したのだろう。汗をだらだらと掻いて体が震えていた。
「そこまで緊張しなくてもよろしいのですよ? 私は貴方の身内といっても問題ないのですから」
「あ、あんた…………まさかっ」
その人の、不気味なほど不透明な存在感。地面に足を着けて歩いているのに、浮いているように感じるその異質さ。
ネギは直感で悟った――――この人は“敵”で、まず人間には勝てないと。
カモは本能で悟った――――目の前の人物は“人”ではないと。
そして2人は、自分達を庇う様に立っている目の前の強い人が、ここまで恐れるように体を震わせるのを初めて見た。
驚いている点が自分達とは違い、その人が誰か知っていて、それ故に驚愕している、そのようにネギたちは感じた。
長谷川は目の前の、宇宙人のごとき異質な美人の圧力に声すら発せない。
「そこまで警戒しないで? 貴方は私が愛したローレライの同位体。つまりローレライそのもの」
女の艶やかな唇が小さく動き、不気味なほど響く。
「そしてローレライを解放した貴方は――――私が慈しむべき存在」
サラリと髪が風でなびき、さらさらと音を立てて元に戻る。
その時、ネギとカモはその女を見て、彼女が誰かに似ている気がした。
どこかで見たことがあるような……どこかで会った事があるような、そんな気が。
「大丈夫」
女がルークの横にやってきて、震える彼に小さく微笑み、一言。
「貴方が邪魔しない限り……私たちはきっと分かり合える」
妖艶さすら感じさせる色気のある声で、女は囁いた。
動けないルークやネギの横を素通りし、女の姿が人ごみに隠れて――――消えた。
「くっ――――! そん・・・・・・な・・・・・・・・・・・・まさか・・・・・・嘘だろ?」
「おい、ルーク! おまえ、大丈夫か!?」
膝と両手を地面に付け崩れ落ちたルークは、がくがくと震えて呟いた。
あまりの力の差に、動く事はできなかった。
そしてネギ・スプリングフィールドもカモも、まともに声を発することはできなかった。
事情をさっぱり掴めない長谷川千雨は、何がなんだか分からないが尋常じゃない様子に慌て、そしてルークのかすれた言葉の一部を聞いた。
――――――ユリア
と。
超・鈴音にとって己の計画はイレギュラーの存在によって狂わされていたといっても過言ではない。
しかし彼女は、とにかく世界に魔法の存在を公表することが重要と考え、多少のイレギュラーを見逃すことにしていた。
計画は完璧だった。
技術、タイミング、戦略、どれも完璧といってもいい。
担任教師であり己にとっても重大な関係であるネギに計画の邪魔になるかもしれないタイムマシンを持たせたのも、ちょっとした余興のつもりであったし、先祖の力を試したかったということもある。
「マズいネ・・・・・・・・・・・・これは完全にイレギュラー。計算外だヨ」
「そうですねー。どうします、超さん」
麻帆良の中にある、とある建物の一室。そこで超鈴音と葉加瀬の2名は、自分達の基地として使っていた。
そこから計画の全てを見通し、監視する。
計画は完全に順調に進んでいたはずだ――――数ヶ月前までは。
微妙に狂いだしたのは、超鈴音の知る歴史にない出来事、つまり魔法界の壊滅の事件、これが起こってから微妙に歯車が狂いだした。
当初、己が過去に来たからかとも思ったが、大局に及ぼすものではないと否定。そこでイレギュラーの存在であったルーク・フォン・ファブレに頭を痛めていたのだが、たった今、更に頭が痛い報告が来た。
それは・・・・・・麻帆良学園にある発光状態の世界樹の、およそ100倍以上の魔力反応。
世界にすら影響を及ぼせるほど、世界樹は今、魔力が溜まっている。
その魔力は、数値だけならば魔法世界の誰よりも、歴史上の誰よりも魔力量は多い。
それにも関わらず、それを上回る魔力値が突如、麻帆良の一角に出現した。
「信じられないネ・・・・・・」
「ですが事実ですよ。それに訂正しておきますが、あくまでも表示できた数値上で100倍以上というだけで、表示できる限界ケタ数まで、ということです」
「・・・・・・・・・・・・はぁ」
どうやら100倍どころでは済まないらしい。
超望遠光学カメラでは、その姿を確認できなかった。
ルーク・フォン・ファブレの傍にネギと長谷川がいたところまで確認できた。しかしその反応が来た瞬間、魔力結界に包まれて映像にすら映らなかったのだ。
そしてしばらくして、ルークとネギが地面に手をついていて、長谷川が慌てて駆け寄っている光景だった。
「・・・・・・・・・・・・何が、起こってるか解らないが、私に不可能はナイヨ。時間すら遡れる力を手に入れたのだから」
自分はIQ200以上の天才。
未来を知る女。
どんな存在だろうが、止められるはずはない。
超鈴音は手元のPCに手を走らせ、物凄い速度で何かを入力始めた。
微妙に、超鈴音の計画に暗雲が立ち込めていた。
あとがき
ユリアさん。
アニメのOPに登場する彼女、超がつくほど綺麗でしたwww
う~~~ん、綺麗。
そして次回はネカネさんと鬼神の妹が登場。そしてついに始まる、武道会
ルーク・フォン・ファブレの負の暴走が始まります。
つづく