「ティアお姉さんって強いんですね!!」
「そんな事ないわ」
「いえ、あんなに強い魔法を唱えれる人、そうはいません」
「ウチも見たかったなぁ〜」
「でもアレは、建物の中って事で手加減したのよ」
「アレで!?」
「ええ。本気のフレアトーネードは天空へと吹き上がり、直径50Mは全て焼き尽くすから」
「こ、こわっ!!」
「でも私も武器が欲しいわ。エヴァンジェリンから頂いた指輪のお陰で唱えることができるけど、格闘ができないのは痛いもの」
(武器・・・・・・ひとつだけ、専用の武器がすぐに手に入る方法はありますが・・・・・・)
(せっちゃん、仮契約の事いわへんのかな? でもウチもしたいわぁ)
「あたしも武器欲しいかも。何もできなかったから」
「アスナさんの武器、ですか。どんなのが一番合うんでしょうか?」
「うーん・・・・・・やっぱり殴るのが得意だからナックルとか・・・・・・」
「アスナ、こわいな〜〜〜〜〜〜」
第16章 ドキドキ☆キッス大作戦前編!!
「・・・・・・・・・ん」
昨夜、遅くに帰って来たルークとティアはある問題に直面した。それは寝る為の布団がひとつしかないという問題である。
途方に暮れたルーク達だったが、別にいいじゃない、というティアの言葉で、ルークとティアはひとつの布団で背中合わせに寝る事になったのだ。
当然、なかなか眠れない2人であったが、修学旅行で疲れがあった2人は、すぐに眠りこけた。
それは2人にとって幸いだったと言える。
そしてこれはティアの作戦だった(前話参照)。彼女は部屋に布団がない事も予想済みだったのだ。・・・・・・恐ろしい子!!
だが、問題はティアの癖に問題があった。
彼女はぬいぐるみや枕、布団など、とにかく抱きつく癖があった。
それが幸いにも、いや不幸にもこの瞬間に発揮されてしまったのである。
目覚めたティアは、ふと胸元に違和感を感じた。
そこにいたのは、浴衣が乱れて前が開かれた胸に顔を埋めたルークの姿が。
(な、ル、ルーク!? どこに顔を・・・・・・って、これは恥ずかしいかも!)
ティアは起こさないように浴衣を整えようとするが、肝心の前はルークの顔が肌に密着している為に直すことができない。
しばらくもぞもぞしていたティアだが無駄だと悟り直すのを諦めると、ルークの髪をそっと撫でた。
そういえば前に自分の寝顔を見られた事があったと思い出し、ジッとルークの寝顔を覗き込む。これからはずっとこの人を見ていけるのだ。こんな幸せってない。
ティアはルークの消滅の瞬間を思い出し、ズキッと走る痛みを堪える為にルークをぎゅっと抱きしめた。
彼が起きない限り、いつまでも続くと思われた時間。それは乱入者によって終わりを告げた。
「ルーク、おはようござ―――っつ!?」
「なななななな!?」
「あ〜〜〜! ティアさん、ええなぁ〜! ウチも今度やろうかなぁ」
清々しい朝を迎えた修学旅行2日目という事で、昨日の気分を一新しようと思ったアスナたち。
ルークの1人部屋に訪れ、部屋を元気良く開けると、そこには男女の睦み事を思わせる光景が広がっていた。
瞬間的にアスナたちの脳内に広がった、指定が入る卑猥な妄想。
ティアも彼女たちに気付き目を丸くして慌てて誤魔化そうとするのだが・・・・・・・・・すでに遅い。
「アンタァ! 昨日からエロばっかりじゃないのよ―――――!!」
「!?」
夢心地で寝ていたルークは、騒がしい背後の所為で目を覚ましつつあったのだが、突如襲ってきた鉄拳に、朝から空を舞った。
何が起きたのか、さっぱりわからなかった(笑)
「「「「「「いただきま〜す!!」」」」」」
朝食の席には、昨日の二日酔いから復活した3−A全員が揃っていた。
少々、2日酔いの子もいるようだが、それよりも初日の夜に寝てしまった方を悔やむ子が多いようだ。
その一番の理由がコレだ。
「うう・・・・・・俺が何をしたっていうんだ」
朝からボロボロになっているルークの姿である。彼がなんでそんなにボロボロなのか明石ゆうな達は聞きたがったのだが、あまりの惨状に聞く勇気がなかった。
「な、なにがあったんだろ、ルークくん」
「ううっ・・・・・・私の知らないところで何か楽しいことが・・・?
亜子と円は少し引き気味だが、何だか悔しそうだ。
一方でネギは本日の行動を決めかねていて、且つ昨日のルークの言葉によって悩んでいた。
(今日は一日奈良で班別行動かぁ・・・先生の僕はどうしようかな。ルークさんの昨日の言葉も気になるし、少し自分で考えたい気もするしなぁ)
ネギはルークの言葉が気になっていた。
今日以降で何か起れば、それは静止を掛けた自分の責任だと。
ネギは昨夜から何かを考え込んでいるカモも気にしながら、気合を入れ直した。
すると後ろから佐々木まき絵や雪広あやか、鳴滝姉妹が誘いをかけてきた。
「ネギくん! 今日ウチの班と見学しよー!!」
「ちょ、まき絵さん! ネギ先生はウチの班と見学を!」
「あ、何よ〜! 私が先に誘ったのに―――っ!!」
「ずるーい! だったら僕の班も―――!!」
激しい押し問答でネギもあわあわと慌てる。彼女たちの争いはあまりにも激しかった。
これでは決着はつかないと思っていた。
だが意外な人物が声を張り上げた事で、シーンと静まり返ったのである。
その人物とは、普段は大人しく引っ込み思案、おどおどした印象が強かった宮崎のどかだった。
「あの! ネギ先生! よ、よろしければ今日の自由行動・・・・・・私たちと一緒に回りませんか!?」
「え、えーと、あの・・・・・・」
―う〜ん、5班にはルークさんもいるけど、おサルのお姉さんの狙ってるこのかさんもいるし、昨日の責任っていう意味でもいいかも)
「わかりました宮崎さん! 今日は僕、宮崎さんの5班と回ることにします!」
「あ・・・・・・!!」
本屋が勝った! と周囲の人間は大フィーバー。特に夕映とハルナは嬉しそうだ。
のどかは、自分の精一杯の勇気のおかげで願いが叶い、嬉しそうに頬を染めた。
そんなのどかの行動と勇気に、ある人物が感動していた。そして自分も続かねばと勇気をもらっていた。
奈良公園に到着した5班。鹿がたくさんいる事でネギは大興奮していた。
彼が1人ではしゃぎながら奥へ行ってしまうと、それに従ってアスナたちも行ってしまった。
そこに残っていたのはのどかと夕映とハルナの仲良し3人組。そしてルークと人形サイズのティアだ。ちなみにミュウは木乃香に連れられている。
「のどか、私感動した! 見直したよ、あんたにそんな勇気があったなんて!」
「感動したです」
ぎゅっと手を握るハルナと夕映。明らかにルークがこの場にいることが見えていない。
この後、この勢いで告白しろだの、修学旅行での告白成功率は87%を越えるとか、微妙に恥ずかしがっているのどか。
だがのどかは、そこまでは勇気を持てないようだ。
「がんばれよ、宮崎。無責任なことしか言えないけど、応援してる」
「ひゃう!? ル、ルーク君、いたんですか!?」
「今頃気付いたのかよ」
プチショックを受けるルーク。
夕映もハルナもびっくりしていたが、ルークの言葉に気を良くした。
「ほら、ルーク君も応援してくれるって! のどかもがんばらないと!」
「う、うん・・・・・・でも、私の気持ちなんかが・・・・・・」
のどかは顔を俯かせて言葉を紡ぐ。よほど不安なようだ。
「どうなるかは解らないけどさ・・・・・・」
ルークが宮崎の前に立ち、彼女に語りかけた。
「だけど、宮崎が自分の気持ちを素直に相手に届けること、それ自体に意味があるんじゃないかな」
「へ・・・・・・?」
「自分の気持ちを閉じ込めて卑下するより、ハッキリと宣言して、相手に届ける。それって大切なことなんじゃないかって事」
「相手に、届ける」
のどかは呆然とルークを見上げながら、ポツリと呟いた。
「ああ。宮崎ほどの女の子が好きになる男なら、他の奴にいつ盗られるかわからないだろ? だから、そんな時に後悔しないように、手遅れにならないように、今のうちに、な?」
ルークがニッと微笑むと、のどかはコクリと恥ずかしそうに俯きながら頷いた。
おお〜、とハルナが感心した声を上げているが、夕映が何故かルークを見つめている。
「い、いってきます!」
そう言ったのどかは、ネギが行った方へ走っていった。
彼女の想いが届くといいなと、ルークは思う。そしてそんなルークを、ティアは嬉しそうに胸ポケットの中から見ていた。
ハルナはのどかの勇姿を見届けようと彼女の後を追うが、夕映は残ってルークに声をかけてきた。
「・・・・・・すごいですね。あののどかに決断を促せる言葉を言えるなんて。感動したです」
「いや、そんな大した事は言ったつもりはないんだが」
ルークはポリポリと頬をかいた。
夕映はそんなルークの様子に笑い、抹茶コーラという銘柄のジュースを飲みながら尋ねてきた。
「でも少し驚いたです。ルークさん・・・・・・でいいですか?」
「ああ。呼び捨てでも構わないぞ」
「ではルークで・・・・・・ルークはネギ先生を認めてない、嫌っていると思っていたです。だからそんな人物をのどかに勧めるとは思ってなかったです」
「いや、別に嫌ってる訳じゃなくて・・・・・・」
ハハハ、と苦笑しながらルークは訂正する。
「俺はただ、あいつに自分の大きな失敗で、何か大切なモノを失って欲しくないんだ。あいつは昔の俺と似てるからさ」
「・・・・・・失礼ですが、ルーク自身のその何かを訊いてもいいですか?」
「まあ、いろいろ失ったよ。本当にいろいろとね」
親族や仲間への信頼や愛情を。
自分の居場所を。
己の全てを。
ルークは言葉に表さずに言葉を飲み込む。夕映はジッとルークを見つめていて、そしてポケットからスッとジュースを渡してきた。
「あげるです。これは私の大好物のジュースです」
「おお、ありがとう・・・・・・って、アロエ抹茶って」
滝のような汗を流すルークは、それを有難く受け取った。頬は引き攣っていたが。
(やっぱり私の目に狂いはなかったです。そしてこのかさんたちがルークが好きな気持ちもよく解るですよ)
(なんか綾瀬って、妖獣のアリエッタに似てるよなぁ・・・・・・言葉遣いに雰囲気や体型、髪型も含めて)
とっても失礼なことを考えているルークと、ハルナがいたら即座に反応したであろう香りを放ち始める夕映。
その雰囲気を敏感に感じ取ったティアは、目を細めてジト目でルーク睨んでいるのだが、彼は気付かなかった。
そして2人が先へ行ってしまった連中に合流しようとし、物陰に潜んで様子を伺っているアスナたちに近づいた、そんな時だった。
「ルーク君!!」
「んあ?」
いきなり名前を呼ばれたから振り返ると、そこには真っ赤な顔をして瞳を濡らした和泉亜子と大河内アキラ、明石ゆうなの姿が。
どうやら訪れる場所が被っていたらしい。
厳密には、亜子とアキラとゆうなが脱走し、ルークの後をつけて彼の話を全て聞いていたのだ。
そして亜子は、彼の寂しげな表情に胸が締め付けられた。いつかの話しで、彼が師匠に裏切られて殺されかけたという話しを思い出したのだ。
だから、言わずにはいられなかった。引っ込み思案ののどかが勇気を出したように、自分も。
「あ、あ、あんな、うち、ルーク君の事がっ!」
「亜子!?」
「ど、どうしたんだ、和泉?」
ギュッと目を瞑った和泉。
彼女は、張り上げるように声を振り絞って叫んだ。
「うち、ルーク君のことが好きです!」
「・・・・・・・・・・・・へ?」
「・・・・・・もうダメやあああああああああああああああああああああああああ!!」
告白して、大脱走。
和泉は電光石火のようにやってきた、告白して、去っていった。
アキラもゆうなも、親友の突飛な行動にド肝を抜かれたらしく、大慌てで彼女の後を追って去っていった。
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「「「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」」」
一方で固まっているのはルークと夕映、声が聞こえたアスナや刹那、木乃香である。
そして亜子の声の直後に、のどかの「出会った日から、ずっとネギ先生のことが好きでした!」という声が響き渡ったのだった。
あっちこっちで起った告白に、アスナたちは処理能力が固まってしまい、完璧なフリーズモードに入ってしまった。
そしてネギはのどかの告白にオーバーヒートしてしまい、ぶっ倒れてしまった。完全な停止モードである。
それはルークも同じである。
だがティアは、まるで予想していたとでも言うように、平然としていた。
彼女のポーカーフェイスっぷりからは、何を考えているのか誰もわからなかった。
夕方、班行動から帰って来た3−Aの連中が見たのは、電話ボックス前で悶え転がり苦しむネギとルークの姿であった。
ゴロゴロと地面を転がり、頭を押さえて何やら悩み苦しむ姿は、正直にいって不気味というしかない。
(奥ゆかしいと言われる日本人女性にこ、こ、告白までされてしまった以上、英国紳士としてそれなりの責任を取らないとー!? でも、先生としてはー!! ああー! どうすればいいんだ―――!!)
(ぬぉ〜!? 俺にはティアがいるのに告白されちまった!? どうすればいいんだ〜〜〜!? つかティアから何も反応がないのが怖すぎる!! だが和泉を傷つけたくないし、どうすればいいんだ俺は〜〜〜〜〜〜!?)
目の前でゴロゴロと転がる2人を見て、気の毒そうに、そして冷や汗を流しているのはカモ。
彼は彼等の奇行を昼間からずっと見続けていた。
そんな彼等の奇行を目の当たりにしたいいんちょこと雪広と佐々木、柿崎たちは何事かと、物陰から様子を伺っていた。
「な、何があったんだろ、2人とも」
「何やらただごとではないご様子・・・・・・気になりますわ」
あやかが痺れを切らしてネギへと近寄った。
「ネギ先生、どうされたんですの?」
「昼の奈良公園で何かあった?」
一緒に付いてきたまき絵も尋ねると、ネギは過剰反応ともいうべき反応でビクつき、誰も僕に告ったりなんか、と自爆した。
それに大騒ぎなのはあやか達だ。追求しなくてはと意気込んで、どこかへ走っていった。
一方でルークに話しかけてきたのは柿崎だ。
「ねえ、ルーク君。もしかしてルーク君も誰かに告白された?」
どうやらネギと同じ場所で同じように悶えていた事から、理由も同じと思ったようだ。
その言葉にルークは少し肩を震わせただけで、何でもないように笑顔で返した。
「いや、ちょっといろいろあって。どうすればいいか悩んでいるだけだ。心配してくれてありがと」
ルークとしては普通の反応だった。ただ柿崎の頭を撫でて感謝の文句言っただけ。だがこの地は日本であり、頭を撫でる同学年の人なんかいる訳がない。
従って柿崎は真っ赤になってしまった。
「じゃ、また後でな」
このままここにいたら追求されると判断したルークは、そそくさと退散した。
部屋に戻ったルークは、とにかくティアの反応が気になった。
なぜ、彼女は何も言ってこないのだろうか。
もしかして、もう自分の事なんか好きではないんじゃないか? そう思っても仕方がなかった。
だがティアはいたって普通だった。
「〜〜〜〜♪」
歌を口ずさみながら、今日撮った奈良公園でのシカとの写真とかを観て、嬉しそうにしている。
ツーショット写真が多いので、ティアが喜んでるのは素直に嬉しい。
ちなみにティアが歌っている曲がユリアの譜歌ではなく、こちらの曲だというのはわかったのだが、ルークはその曲名を知らなかった。
・・・・・・・・・・・・乙女はお姉さまに恋してる、の『LOVE POWER』なのは内緒だ。ちなみにそれはコンビニに買い物に行った時にラジオで流れていて気に入ったという経緯も内緒だ。
「風呂に入ってきます・・・・・・」
微妙に居たたまれないルークは、ミュウを連れて風呂へと逃げ出したのであった(笑)
「どないしよ〜〜〜!? 亜子ちゃんがルークに告白してしもうたよ〜!!」
「お、おちついてこのちゃん」
「和泉さんもやるわね・・・・・・」
緊急作戦会議を開いているのはアスナたちだ。彼女たちは奈良公園で起った衝撃的展開に頭がやっと付いてきたようだ。
悶々としていた少女たち3人は、微妙に追い詰められていた。
「アスナさ〜ん! 朝倉さんに魔法がばれちゃいました〜〜〜!! 助けてくださ〜い!!」
「「「うるさいわね!! 今それどころじゃないのよ!!」」」
・・・・・・ひどっ。
一刀両断されたネギは、彼女達の迫力に我に返ってポカーンとしている。
後ろから付いてきた朝倉は、彼女達の無碍な態度に首を傾げたが、自分の目的をネギに告げた。
「安心してよ、ネギ先生。報道部突撃班の朝倉和美。カモっちの熱意にほだされて、ネギ先生の秘密を守るエージェントとして協力していく事にしたよ。よろしくね」
「え、え〜〜〜〜! 本当ですか!?」
本当だって、という言葉と共に、魔法がバレるきっかけとなった写真のネガまで返してくれる朝倉。
どうやら本気のようだ。
(ねえ、カモっち)
(なんだい、姉さん)
(ルーク君は、本当に賞金首で世界最強と称される人達の1人なんだよね?)
(ああ、本当だ。姉さんが下手にバラそうとしたら、ルークの兄貴は朝倉の姉さんを口封じしようと考えても無理はないっス)
(なるほどね・・・・・・いや、よく解ったよ)
朝倉は顔色を微妙に悪くして頷いた。
(ここは・・・・・・ルーク君にゴマすりしておかないとね)
ニヤリと笑った朝倉は、何やら悪巧みを始めたようだが・・・・・・?
そんな彼女の笑みに気付かないネギは、通りかかったあやかやまき絵に嬉しそうに話しかけていた。
そしてアスナや刹那もその笑みに気付く事はなかった。
唯一、木乃香だけを除いて。
「へぶっ!!」
「へへへ〜」
「やったね〜〜〜〜!!」
ある場所では徹夜の勢いで遊ぶ為にまくら投げが勃発し。
「・・・・・・次の夜、その漫画家が1人で仕事をしているとね、電源を切ったはずのラジオから、この世のものとは思えぬ女の声が」
「「ギャアアアアアア―――――――――!!」」
怪談話で悲鳴を上げ。
「のどか、おめでと〜〜〜!!」
「祝杯あげなきゃね! かんぱ〜い!」
親友の大健闘にお菓子とジュースで宴会状態へ突入したりしていた。
まあ、修学旅行であり、彼女達は1日目は酔い潰れて1日無駄にしているので、それは仕方がないだろう。
だが、そうは言ってもいられないのが教師陣である。
「コラァ、3−A! いーかげんにしなさい! まったくお前らは、昨日は珍しく静かだと思ってれば! いくら担任のネギ先生が優しいからとはいっても、学園広域生活指導員のワシがいる限り好き勝手はさせんぞ!!」
ついに新田先生よりカミナリが落とされたのだった。
「これより朝まで、自分の班部屋からの退出禁止!! 見つけたらロビーで正座だ、わかったな!!」
プリプリと怒りながら去っていく教師陣。しずな先生はどこか申し訳なさそうだ。
「ブー、つまんなーい。まくら投げとかしたいのにな〜、ネギ君と」(鳴滝風香)
「ルーク君とワイ談したかったんだけど」(柿崎)
「ネギ君と一緒の布団で寝たかったのにー」(まき絵)
と、あちこちで文句が上がりまくりだ。
そこへ新田の説教から上手く逃れていて、笑いながらやってきたのは朝倉和美。
「くっくっく。怒られちやんの♪」
「朝倉さん!? ムキ〜〜〜〜〜!? 今までどこへ行ってましたの、ひきょ〜者ーっ!!」
「まあまあ、私からみんなに提案があるのよ。このまま夜が終わるのもったいないじゃない? 一丁3−Aで派手にゲームをして遊ばない?」
「何を言ってるんですか! 委員長として許しませんよ、そんなこと!」
「「「「「「「賛成〜〜〜〜!!」」」」」」」「反対〜! 正座イヤー!!」
鳴滝史香から反対の声が上がるが、見事にスルー。全員がその話に興味深々だ。
ちなみにその中にアスナと刹那の姿が見えない。彼女達は見回りに行っているようだ。
朝倉はそんな彼女達を見回して、得意気に宣言した。
「名付けて! 『くちびる争奪!! 修学旅行でネギ先生&ルーク君とラブラブキッス大作戦♪』」
「「「「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」」」」
全員に衝撃が走った。そして何人もの生徒が頬を赤らめる。
一方で嬉しそうに反応しているのが、まき絵や鳴滝姉妹、あやかといったネギ派の子たちだ。のどかも動揺を隠しきれない。
だがそれはネギという9歳の子供だからの反応である。
一方で頬を染めた連中は違う。彼女達はもちろんルークが狙いだ。
だがルークは彼女達と同じ年齢であり、学園内でも物凄く人気が高い青年である。
その人物と、生々しいキスをするというのだから、物怖じするのも仕方がないだろう。
朝倉はそんな彼女たちへルールを説明する。
ルールは至ってシンプルだった。各班から代表2人ずつ選手に選び、新田先生の監視をかいくぐり旅館内にいる2人の唇をGET。妨害可能だが武器は両手の枕のみ。上位入賞者には豪華商品プレゼント。見つかってしまった者は他言無用で朝まで正座というものだった。
「きびしっ! 見つかった人は助けないアルか!」
「豪華商品って何!?」
「う〜〜〜〜〜〜〜む」
悩み所が多い条件の中、一人の生徒が手を挙げた。
その者はこのゲームの意図に気が付き、尚且つ利用しようと企んだ人物。
「なぁ、代表選手は何人でもええんちゃう? 出たい人は多いんとちゃうかな? この旅館は通路が狭いんやし人数が多ければ有利とは限らんのやから」
「「「「「なな!?」」」」」
その人物の名は近衛木乃香。彼女はおっとりとしながら、唇に指を当てて考えながら言った。
(どう、カモ君? 大丈夫かな?)
(オレっちとしては増えた方がいい。それに木乃香嬢ちゃんはこの狙いに気付いた上であんなこと言ってるんだ・ここは従った方が得策)
(OK)
「いいねぇ、その案。じゃあそれでいこう。どうかな、いいんちょ」
「朝倉さん・・・・・・ハァハァ・・・・・・やりましょう! クラス委員長として許可しますわ! ハァ、ハァ」
「そら、ども」
何だか息が荒く、ヤバイ雰囲気を醸し出しているあやか。何をしようというのだろうか。
こうしてカモの狙いの『仮契約カード大量ゲット大作戦』は実行された。
朝倉としては、ルークへゴマすりしときたくて、このような仮契約カードを狙ったわけだが・・・・・・果たして?
第1班代表選手 鳴滝風香&柿崎美紗&釘宮円 3名
意気込み 「うー、史香め〜! これじゃあ分身の術ができないじゃないか!」
第2班代表選手 長瀬楓&古菲&超鈴音
意気込み 「ルークの唇ゲットして、今のうちに懐柔するネ♪」
第3班代表選手 雪広あやか&長谷川千雨
意気込み 「なんで私がでなきゃなんねーんだよ、クソっ」
第4班代表選手 佐々木まき絵&和泉亜子&明石ゆうな&大河内アキラ
意気込み 「一番人数が多いんだから、ここは二手に分かれてルーク君のところへ行くよ!!」byゆうな
第5班代表選手 宮崎のどか&綾瀬夕映&近衛木乃香
意気込み 「私はルーク狙いじゃないです。のどかの手伝いがしたいだけです! それだけです!」
「う・・・・・・なんかとてつもなく嫌な悪寒が」
「大丈夫、ルーク? 風邪かしら?」
呑気なティアと、微妙に身の危険を感じ取るルーク。
急いで脱出するんだ、ルーク!! と、金髪の幼馴染の青年の声が聞こえたとか聞こえなかったとか。
あとがき。
少しお疲れ気味な投稿。
さすがに意外な乱入者が出てきたと思います。
この中で何人が成功するのか、それはお楽しみに。
ルークのご冥福をお祈りください。
執筆中BGM 【未来への咆哮】【Reason:玉置成実】【quiet night C.E73:ミーア・キャンベル】