「なぁ、ルーク。お母様とお父様に会うの楽しみやな?」

「ん? あ、ああ。まあな・・・・・・詠春さんに会うのは・・・・・・な」

「お母様は嫌なん?」

「・・・・・・・・・・・・どんな事をされるか考えると、頭が痛くなりそうだ」

「アハハハ・・・・・・お母様はルークの事をめっちゃ気にいっとるからなぁ」

「あと、頼むから青山姉妹には会いたくない・・・・・・特に鶴子さん」

「なんで?」

「・・・・・・賞金首になってから会ってないからな・・・・・・・どんな笑顔で御仕置きと称した攻撃をしてくるか・・・・・・」

「ああ〜〜〜〜! そういえば鶴子さんも素子さんもルークの事大好きやったもんな〜」

「勘弁してくれよ・・・・・・何せ、俺の事情を知った7歳の時に、会っていきなり決戦奥義だぜ? そんなのいらねぇーっつーの」

「そ、そういえば、そんな事もありましたね・・・・・・青山師匠は気に入った相手には手加減しませんから」

「素子さんも妙にスキンシップを図ってくるからな・・・・・・ヒナを抜くと攻撃してくるけど」

「ハハハ・・・・・・」

「どっちにしろ、今回はティアがいるんだ・・・・・・アレだけは避けたい」

「アレって・・・・・・ああ! お母様や鶴子さんに素子さんと一緒にお風呂に入ることかぁ

「バっ!? 木乃香、おまっ―――!?」


「ルーク・・・・・・あなた・・・・・・私が悲観に暮れていた頃、浮気してたのね?」


「違うんだ!! ティア!! 聞いてくれ! あれは俺には不可抗力だったんだ! 望んだ結果じゃなかった!!」

「ミュウ?」

「なんですの? ティアさん」

「ミュウファイアよ!」

「わかったですの! ミュウ〜〜〜〜」

「ちょ、マテ〜〜〜〜〜〜〜〜!!」


「ファイア〜〜〜〜〜〜〜〜!!」


「ぎゃあああああああああああああああああああああ!!!」





     第14章 幼馴染の大切なアレ!!

 




『ほんなら、初日は様子見、隙あらばこのかお嬢様をいただくという事で・・・・・・バックアップは任せましたえ』

『はい〜。お給料分はしっかり働きます〜〜』

『わかった』

『・・・・・・油断しない事を勧めるよ。向こうには神鳴流の護衛と、賞金首がいるからね』

『何や新入り、あんたやけに詳しいやないか』

『まあね。僕の仲間も彼に昔から邪魔ばかりされてるから。まさかここで会う事になるとは思ってなかったけど』

『ほんなら、その賞金首はアンタに任せようか。どないや?』

『・・・・・・いいだろう。ただし、やる時は僕の判断でやらせてもらう』

 京都のある場所、ある林の中にて女と子供数名が密談を交わしていた。

 彼等の会話は物騒な事この上ないことだが、それを咎める者は誰もいなかった。

 その中でも新入りと呼ばれていた白髪の少年は、呪譜を取り出してどこかへ連絡を始めていた。

 彼等を率いるメガネをかけた女は、ニタニタと遠くを眺めていた。







「京都ぉ!!」

「これが噂の飛び降りるアレ!!」

 京都に到着した麻帆良学園女子中等部3年生たちは、新幹線から降りると清水寺に到着していた。

 京都の街並みはティアにとって新鮮かつ初めて見るものばかりで、胸ポケットから顔を出して目を輝かせていた。

 京風の武家屋敷や神社仏閣は元の世界にはなかった。ルークにとっても観光は初めてで、ウキウキしながら観ていた。

 こうして清水寺にやって来た訳だが、本堂に差し掛かるとクラスの興奮は最高潮に到達していた。

「誰か、飛び降りれっ!!」

 鳴滝風香がビシッと指さすと、それに反応したのが・・・・・・。

「では拙者が」

「おやめなさい!!」

 いいんちょの雪広あやかが怒鳴って止める。
「じゃあ、俺が!」

「おやめなさいって言ってる―――な〜〜〜〜!?」

「そいやああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

「「「「「「ルーク君が飛び降りた〜〜〜!?」」」」」」

「おい!?」

「拙者もルーク殿に負けぬでござるよ! ニンニン!!」

「ああ〜〜〜!! 楓姉も続いた〜〜〜〜〜〜!!?」

 柿崎たちや亜子、明石ゆうなや大河内が絶叫を上げて大慌てで、長谷川がそれに突っ込みを入れている頃、自殺未遂を計ったクラスメイトを放置して自分の趣味に走っている人がいた。

 ちなみに、ルークと楓はちゃんと着地を決めていて、ティアとミュウはこのかと刹那にしっかり預けてある。

 さらにいえば、ティアとミュウを見たこのかと刹那が我を忘れ、抱きしめて頬擦りしたのは余談だ。

「ここが清水寺の本堂いわゆる『清水の舞台』ですね。本来は本尊の観音様に能や踊りを楽しんでもらうための装置であり国宝にしてされています。有名な『清水の舞台から飛び降りたつもりで・・・』の言葉通り、江戸時代に実際に234件の飛び降り事件が記録されていますが、生存率は85%と意外に高く・・・」

「へぇ〜」

「夕映は神社仏閣マニアだから、詳しいよね」

 意外な知識を見せる夕映の言葉に、ほほうと感心しながら聞く超や村上夏美にティア。

 ティアはその言葉の意味が半分は解らなかったが、解りやすく刹那が教えてくれた。

 すると夕映が耳寄りな情報を漏らした。

「そうそう。ここから先に進むと、恋占いで女性に大人気の地主神社があるです。そしてそこの石段を下ると有名な『音羽の滝』に出ます。あの三筋の水は飲むとそれぞれ健康・学業・縁結びが成就するとか・・・」

「縁結び!? ・・・・・・ではネギ先生、恋占いを私と」

「あ〜! いいんちょ、ズル〜イ! あたしも〜!」

「あ、私も・・・・・・」

「は、はぁ・・・」

 夕映の言葉に敏感に反応した雪広が、ネギを連れて行こうとする。その言葉に佐々木まき絵と宮崎のどか、鳴滝姉妹も反応してネギと雪広の後に続いた。

「じゃあ、我々も行きましょうか」

「そうやなぁ。ウチも音羽の滝の水を飲んで、恋占いしよっと」

(私も・・・・・・ルークと両想いに成れたとはいえ、油断しない方がいいわね・・・・・・そのお水だけでも飲もうかしら?)

 私もやろうかな、と思っている刹那やアスナを背に、ティアは悶々と考え込んでいた。

 一方、清水の舞台から飛び降りたルーク。

 彼は下で楓とぶらつきながら、ネギと合流していた。

「いいところですね、ルークさん」

「ああ、そうだな」

 遠くの方で、ネギく〜んルークく〜んこっちこっち〜、とまき絵や亜子たちが叫んでいる。

 ルークたちは軽く手を振りながら応えると、カモがネギに話しかけてきた。

「だが兄貴、警戒は怠っちゃいけねーぞ! ここは関西呪術協会の本拠地だ。どこで親書と木乃香嬢ちゃんを狙っているか。それに桜咲って奴が怪しい事を忘れたのか?」

「でも、証拠がないのに疑っちゃダメだよ・・・・・・ですよね、ルークさん」

 カモはどうやら桜咲刹那を西のスパイと思っているらしい。出席簿に京都神鳴流と書いてあり、常に木乃香とネギの方を伺っている事から怪しいと踏んでいるようだ。

 そしてルークは苦笑している長瀬楓を尻目に、ネギへ呆れながら言う。

「アホかお前等」

「え?」

「ルークの兄貴は何か知ってるんですかぃ?」

「つーか普通に考えろ。東の本拠地の麻帆良に、しかも木乃香という重要人物の護衛にスパイなんぞ置く訳ないだろ。ちょっと考えれば分かることだろうが」

「だがよぉ」

「くどい。木乃香と刹那が幼馴染という事すら忘れたとは言わせない。普段から仲が良い姿を何度も見ているだろうが。これ以上刹那を疑ってみろ、エロオコジョ、お前を輪切りにするぞ」

「ひぃ!? ス、スマネェ」

 刹那と木乃香の想いを知っているからこそ、ルークはそんな疑いを持つカモを許せない。

 ギロリと睨むとカモはあっさりと意見を翻した。

 恋占いの石があるという神社へ到着すると、そこには3−Aの生徒が全員いた。どうやら噂の恋占いをするようだ。

 参加するのは雪広・宮崎・佐々木・和泉・明石の5名だ。

 その5名は、およそ20メートル先にある恋占いの石へ目を瞑って行き、無事に到着することができると成就するということ。

「いけー!! 左、左!!」

「本屋、そっち違う!!」

「まき絵に50円!」

「いいんちょに100円!」

「亜子に100円!」

 残りの連中は言いたい放題だ。宮崎はフラフラと見当違いの方へ歩き、亜子や明石ゆうなもやはり足取りは頼りない。

 ルークは周囲を警戒している刹那や笑いながら応援している木乃香、アスナたちのいる場所へ近寄った。

「よう、木乃香たちはやらないのか?」

 ・・・・・・ちょっと鈍感な事を聞くルーク。

 彼は自分が好意をもたれている事を、ハッキリとは確信していなかった。

「ん〜、やろうかと思ったけどな、せっちゃんが止めた方がええって」

「私も同じ理由」

「へえ・・・・・・なんでだ?」

「・・・・・・あれです」

 刹那が険しい目を向ける先、そこには落とし穴に嵌った雪広たちの姿が。その穴の中からカエルがわらわらと出てくる。

 ネギは大慌てで生徒たちを穴から助け出していた。

   ・・・・・・またかよ。

「あれはやっぱり・・・・・・」

「ええ、ルークの思ってる通りだと思います」

「なるほどな」

 実にくだらない罠だが、あえて危険な場所に木乃香を向かわせる訳にはいかないのだろう。

 ティアはそれが呪術協会の連中の所業だと気付いていて、彼女も表情は険しい。一方でアスナは首を傾げている。おそらく妙だな、と思っているのだろう。

 多少のパニックがあったものの、その先にいった場所では例の音羽の滝の水だ。

 3本の滝の水が流れていて、健康・学業・恋愛に、それぞれ効果があるらしい。

 ・・・・・・恋愛にしか皆が集中していないのは、まあ、年頃なのだから仕方が無いだろう。

 ちなみにルークとティアは、先に健康から手を出した。

 旅の嗜みで持ってきていた水筒を取り出し、コップに水を汲む。ティアを懐のポッケから取り出し、肩の上に載せる。

「うん・・・・・・やっぱこういうところの水は美味しいな」

「ええ。日本の水道水は不味かったけど、ここの水は美味しいわ」

 大きなサイズのコップを必死に両手で支えながら飲むティア。ルークはそんなよろよろとしているティアを支えてやりながら、そっとコップをもってやる。

 周囲には肩にアクセサリーの人形を乗せた男とか、ティアが京人形としか見えていないようだ。

 まあ、人間だとは普通は思わない。

 そして学業の水を飲み、ふと恋愛の方へ目を向けた時だった。

「な、なんだこりゃ!?」

「これは・・・・・・!?」

 ルークもティアも絶句。

 何故なら、恋愛の水を飲んでいた3−Aのクラスの女子の大半が酔い潰れていたからだ。まるでお酒でも飲んだかのようだ。

 ティアはルークの肩から飛び降り、恋愛の水を鞄から飛び出してきたミュウと一緒に水筒を支えながら酌んでいく。

 そしてそれを一舐め。

「ルーク! これはお酒よ!」

「なに!?」

「美味しいですの!」

 ・・・・・・とりあえず喜んで飲んでいるミュウは放置だ。
 酔い潰れなかった、つまり飲まなかった連中が事態に気がつき、お酒だと気がついたので、夕映を筆頭に雪広たちを叩き起こし始める。

 修学旅行で昼間から酔い潰れたと、引率の新田先生にバレると修学旅行が中止に成りかねない。

「起きてください、いいんちょさん! バレたら停学ですよ!」

 ・・・・・・夕映の起こし方は中々ハードだ。ビビビビビビビビと連続ビンタだ。

 ちなみに飲んだ中に刹那も木乃香もアスナもいない。

 ・・・・・・木乃香が上流へ行って普通の音羽の滝の水を酌んだと知るのは、この後だ。

「おい、和泉! 大河内! 柿崎! 釘宮! 椎名! 明石!」

 ペシペシと頬を叩くルーク。だが椎名と釘宮と大河内の眠りは深いようだ。

 和泉と柿崎と明石はまだ若干の意識がある。

「あ〜〜ルークくん〜〜〜・・・・・・えへへ〜・・・・・・亜子って呼んで〜」

「うぉい! 抱きつくなぁ!」

 亜子が幼児退行をみせ、すりすりと擦り寄ってくる。亜子の香り柔らかさと酒臭さがダイレクトに伝わってくる。

 ・・・・・・唇が俺の首に何度も当たった事は、和泉には、亜子には内緒だ。

「あ〜ん、ルークく〜ん・・・・・・私も〜抱っこ〜〜〜〜」

「柿崎! お前もか! って胸が当たってる!」

「いやん♪ エッチ♪」

「ルークさん! 柿崎や桜咲さんたちだけでなく、私や亜子も見てください!」

「大河内、おまえもか・・・・・・」

 完全に泥酔状態だ。

 これでは今の、いや今日の記憶が曖昧になっていることだろう。

 ネギやアスナは新田先生や源しずな先生たちへの誤魔化しに必死だ。

「一部の生徒達が疲れて寝てしまったみたいで!!」

 ちょっと苦しいな、その言い訳は。








 旅館に運び込まれた3−A一同。

 とりあえず疲れ果てたという事で無理やり押し通し、各部屋へと運び込んだ。

 ルークは5班だが、さすがに寝所まで一緒という訳にもいかないし、先生たちと一緒という訳にもいかない。

 従ってルークは一人用の個室の部屋を当てられたのだが、そこがなかなか広い。

「私、この畳っていうもの気に入ったわ」

「そっか。でもさ、なんかこうしてどこかにティアとミュウと3人で泊まるのって、懐かしいよな」

「はいですの! 懐かしいですの!」

「そうね。なんだか懐かしくて、わくわくするわ」

「普段は同居なんていうもっと凄い事してるくせにな」

「ホントね、フフフ」

 未だに人形サイズから戻らないティアは、テーブルの上から足を突き出す形で座っている。

「そういえば、ここは温泉があるらしいな」

「おんせん?」

「ああ・・・・・・まあ、簡単にいえば効能のあるお湯の情緒ある風呂のことだ」

「へえ・・・・・・入ってみたいわ」

「じゃあ、刹那たちと一緒に入ってくれ。俺は教師陣のネギたちと同じ時間に入らないといけないらしいからさ」

「ええ、わかったわ」

 洗面具と着替えを用意して移動を開始。

 教員の風呂の時間は驚くほど速い。ルークも急がないと風呂に入る時間が無くなってしまう。

「お〜い、木乃香! アスナ!」

「ん? ルーク、どうしたん?」

「俺これから風呂だからさ、ティアの事頼んでいいか? 一緒に風呂に入れてやって欲しいんだ。まだ人形状態から解けないみたいだから」

「ええよ〜。皆酔い潰れとって隠しやすいやろうし」

「そうね。騒がしい連中は皆寝ちゃってるもん」

「そうか。じゃあよろしくな」

「またあとでね、ルーク」

「ああ」

 こうして別れたルーク。

 男風呂と表示されているところへ入り服を脱ぐと、情緒あふれる檜造りの壁が隔てている風呂場に入った。

 すると、そこに先客がいた。

「よお、ネギ」

「あ、ルークさん。お先に失礼してます」

「ああ」

 風呂にはネギとカモが入っていて、何やら真剣な相談をしていたようだ。

 ルークは身体を洗い、髪を備え付けのシャンプーとコンディショナーで洗うと、お湯に浸かった。

 もちろん、頭にはタオルを乗せてある。ルークにとってはこのスタイルは常識だ。

「はぁ〜〜〜〜〜、いいお湯だ」

「あ、あのルークさん」

「なんだ?」

「ルークさんって世界を旅して人助けをしていたんですよね?」

「それがどうかしたか?」

「あの、なんで賞金首になったりしたんですか?」

 前に自分が狙った事で、気になっていたのか、気まずそうに聴いてきた。

「・・・・・・前に言ったけど、目の前に救いを求める人がいた。自分の力を求められた。だから助けようとしたら、敵がいた。その敵は正義と呼べる組織でもあったが命を狙ってきたから殺した。そして救った。気付けばそいつらから賞金をかけられてた。それだけのこと」

「そんなっ・・・・・・!! 人を簡単に殺しちゃダメです! しかも正義の組織を!」

 ネギが湯から立ち上がって、堪らないように叫ぶ。

「偉大なる魔法使いは、人の為に正義の味方の1人として働くものです! それをルークさんみたいに力をもった人が人殺しだなんて!」

 身振り手振りで力説するネギ。そんなネギの言葉をカモは黙って聞いていて、ルークは唖然とした顔で聞いていた。

「僕は・・・・・・今なら、前にルークさんに言われた言葉に返す事ができます! 僕は絶対に人を殺したりせずに父さんのように大勢の人を助けるマギステル・マギになってみせます!」

 その顔は自信に満ち溢れていて、瞳は力強い。よほど自分の答えに自信を持っているのだろう。

 だが、まさかおまえ、とルークは言った。

「まさか・・・・・・英雄、千の呪文の男ナギ・スプリングフィールドが、誰も殺さずに英雄と呼ばれるようになったとでも思っているのか?」

「え・・・・・・・・・・・・?」

 ルークの言葉に硬直するネギ。

 そしてカモの表情が険しくなる。

 その時だった。

 ガラッ。

「んあ? 誰か来たのか?」

 新田先生か? と思って振り返った先には、全裸の刹那。

 ・・・・・・バッチリ前が『全て』見えてしまったのは内緒だ。

「刹那!? なんでここに!?」

「へっ・・・・・・って、ルーク!? どうして女湯に!?」

「は!? って違う!! 俺はそこの男湯から来たっての! つーかタオル巻け! って、見るんじゃねぇ!!」

 ゴキッ!!
「めぎょっ!!」

 カモとネギの首を掴んで180度違う方向へ向けるルーク。硬直していたネギと何やら考え込んでいたカモは刹那が来た事に気がつかなかったようだ。まあ、ギリギリセーフというとこだろう。
 
 だが、ここからが問題だった。

「ルーク・・・・・・もしかして見ました?」

 タオルを巻いた刹那が顔を真っ赤にしながら尋ねてきた。ルークは、うっ、と鼻を押さえながら叫ぶ。

「見てないと言いたい! だが綺麗だったとも言っておく!!」


「それは見たと言ってるんです!! 責任とってください!!


「うぉい!! 責任って、ちょっとマテ!! おま―――」

「ひゃああああああああああああああああああ!?」

 突如、聞こえて来た悲鳴は脱衣所の方から。それも女性側の方からだ。

「このか!!」

「お嬢様!?」

 ルークは湯から飛び出てタオルを腰に巻くと瞬動術を使って脱衣所へとびこんだ。この悲鳴では誰かに襲われているんじゃないだろうか、そう思ったからの行動だった。

 ネギは木乃香の悲鳴により硬直からハッと我に返り、ルークの後を追う。

 ルークと共に駆け出した刹那は、慌てて扉を開いた。

「このちゃん!!」

「大丈夫ですか、このかさん!!」

 扉を開けた先に広がっていた光景は、ルークたちがズルっと転びそうになったものだった。

 おサルだ。

 それも魔力を帯びていて気配が妙な事から、式紙で作られたサルだと判断できる。
 おサルが木乃香とアスナ両名を襲っていたのだ。ティアは2人に纏わり着くサルを引き剥がそうと、小さい体で必死に引っ張っているが、いかんせんサイズが足りない。

「ルーク、サルがっ!!」

「あ〜〜〜!! ルーク、せっちゃん! 助けて〜〜〜!」

「ちょ、なんなのよ、このエロザル!? 下着とらないでよ!!」

 魔法を知り、ちょっとずつ修行を重ねている木乃香。だが治癒術士としてしか修行しておらず、接近されたら非常に弱い。

 必死に身体を捌いて避けているが、なんとか脱がされないようにするだけで精一杯のようだ。

「こ、こ、これはいったい!?」

 ネギは顔を青褪めさせて事態に慌てる。すると、隣からおびただしいほどの殺気を感じる。

 そこにいた鬼は、桜咲刹那。

「・・・・・・このちゃんに、何をするかあああああ! このサルども〜〜〜!!」

「えええええええ!?」

 激怒した刹那は夕凪を抜刀してギラリと構える。ちなみにルークはその華やかな光景に鼻を押さえて首をトントンと叩いていた。

 そんな刹那に反応したのはネギだった。

「ダメです〜〜〜〜! おさるさんを斬っちゃ可哀相ですよ〜〜〜!」

「あ! ちょっと、何をするんですか!」

 刹那の腰にしがみついて留めようとするネギ。刹那はネギのことがよほど嫌いなのか、すごく嫌そうな顔で解こうとしている。

 刹那としてはさっさと式紙のサルを斬って木乃香を救出したいのだ。ましてやあのサルは紙。生きてはいない。

 必死で剥がそうとする刹那に救いの手が出したのは、ルークだった。

「じゃまだっつーの」

「へぅっ!?」

 片手で頭を掴み、もう片方の手で腕を掴んだルーク。全力で握った為に痛みで手を緩めたネギを、そのまま全力で浴場の方へ放り投げた。

 ゴロゴロと転がって、派手に打ち付けていた。

 その隙に刹那とルークは木乃香たちへ駆け寄り、刹那は夕凪で、ルークは傍にあったタワシで攻撃した。

「神鳴流奥義! 百烈桜華斬!!」

「秋沙雨!!」

 無数の連続攻撃により斬り刻まれたサルは、紙へと還った。

「よかった、このちゃん・・・・・・」

「ありがとう、せっちゃん。ルーク」

「ああ、気にすんな。アスナも大丈夫か?」

「ええ・・・・・・ってこっち見ちゃダメ!!」

 あわあわと浴衣で前を隠すアスナ。ルークは慌てて視線を外して口笛を吹いている。

 そんなルークを、跳躍して肩に乗ったティアが頬をつねっているのはご愛嬌だろう。

 だが、視線を外したのがマズかった。

「立てる? このちゃん」

「もちろん。よっと」

「ではこれで前を隠して・・・・・・キャっ!!」

「ぬおっ!!」

 木乃香を抱きかかえていた刹那は、自分もゆっくりと立ち上がったのだが、湯上りで暴れたルークの所為で床が濡れて滑りやすくなっていた事に気がつかなかった。

 おかげで足を捕られて体勢を崩し、ルークを巻き込んで派手に転倒してしまった。

「あたた・・・・・・」

「っつ〜〜〜〜、大丈夫・・・・・・か・・・・・・せ・・・・・・つな?」

「あわわわわわわ」

「なななななななな」

「ル、ルーク!!」

 まず冷静に突っ込もう。

 俺の前に広がる神秘で綺麗かつ無限大、ほのかな良い香りは何だろ?

 そして俺の胸の上に乗ってる柔らかい感触のするモノは、なんだろう?

 っていうか、どうやったら転んだだけでこんな体勢になるんだ、とジェイド辺りに冷静に問い正したい。

 ガイなら間違いなくあの世逝きだろう。

 アッシュなら・・・・・・相手がナタリアなら喜んで鼻血の海に溺死するだろう。

「あっ!?」

「ちょ、これは違うんだ! たしかに見えるけどっ! つか不慮の事故だろ!! っていうか俺の責任か!?」

「あうあうあうあう」

 真っ赤になってタオルで身体を隠し、涙を浮かべる刹那。

 後ろからは黒いオーラを纏ったアスナと、何故か譜術を唱えているティアの姿が。

 木乃香が頬を膨らませて、何故か“刹那を”羨ましがっているが・・・・・・そこは気にしちゃいけない。

(ハハハ・・・・・・さよなら、みんな)

 夜空に別れを告げようと天を見上げるルーク。だが脱衣所の為にあるのは無機質な天井だけ。

「どこを見てんのよ、アンタはあああああああああああああああ!!」


「仇なす者よ、聖なる刻印を刻め! エクレールラルム!!」


「絶対に責任とってくださあああああああああああああああああい!!」


「手加減なしかよおおおおおおおおおおおおおおおお〜〜〜〜〜〜!?」











あとがき。
 タイトル暴走(爆笑)

 ルーク、男にとっての夢の秘境を間近で見る! おめでとーー!!ワッショ━━(∩´∀`)∩´∀`)∩´∀`)∩´∀`)∩━━イ

 え〜っと、ちらりと青山姉妹を話題に出しました。彼女達が出てくるかは、読者さんの反応次第で決めたいと思います。

 ラブひなだけのキャラだ! という意見が多ければ、話題に出てくる程度で止めときます。

 ・・・・・・なんかラブが少なくて、エロが多くなってきた・・・・・・次回はティアとラブラブにしたいと思います。

 執筆中BGM 【shining tears】【ハレ晴れユカイ】【翔べ! イカロス】