「―――ってな訳でさ、何か良い案はないかな、学園長?」
「むぅ・・・・・・そうじゃのぉ・・・・・・おお! これがあるのをすっかり忘れとったわい」
「なんだそれ?」
「これはの、メイクドールという魔法の飴玉なんじゃが・・・・・・なかなか面白い効果があっての」
「どんな効果があるんだ?」
「なんと、飲んだ者が・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・人形サイズになるんじゃ!!」
「ハァ!?」
「修学旅行も学業の一環じゃからな、大っぴらにフェンデ君を同行させることはできんが、これならできるじゃろ!」
「・・・・・・・・・・・・本音は?」
「美人のミニチュアサイズというのも観てみたいではないか!!」
「死nっ!!・・・・・・・・・・・・・・・・・・たしかに」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・お主も男よのぉ」
「ほっとけつーの!!」
第13章 原宿パニック!!
「・・・・・・なんで俺はここにいるんだっけ?」
呆然として呟いたのは、竹下通りの上部の入り口で佇むルーク。
昨夜はティアと色々と話しをしていて寝るのが遅かった。だから今朝は木乃香と和泉が来てどこかへ行くと言ってきたので、寝惚け半分で支度したのだ。
そしてやっと意識が復活したと思ったら、自分の隣にティアがいて、反対の腕に木乃香が腕を絡めてきている。後ろには刹那とアスナと和泉がいる状態だ。
うむ。ティアの本日の服はお洒落なワンピースにスカート。そしてブランドのバッグ。現代の女子大生のような格好だ。だが質素な印象が強いが、真逆の格好でもとても可愛らしい。
亜子も木乃香も刹那もアスナもそれぞれ外出用の可愛らしい格好だ。
「あの洋服ええんちゃう?」
「あ、ティアお姉さんの服、あれなら似合うんやないかなぁ?」
「このちゃん! 待ってください!」
「ちょっと木乃香! 亜子! あんたたち、今日は修学旅行の為の買い物に来た事忘れてんじゃない!?」
木乃香は相変わらず無邪気で元気だ。うんうん、やっぱ可愛いよな。
だが、1つ突っ込ませて欲しい。
・・・・・・・・・ティア“お姉さん”って何だ?
和泉の奴、いつの間にかティアと仲良くなってんだもんな。これには驚きだ。
「あ、そういえばティアさんって下着あんまりもってないんちゃう?」
「下着!?」
「・・・・・・そうね。数は少ないかも」
驚愕の表情を浮かべるルーク。
「じゃあ、いいところ知っとるから、そこへ行こう?」
「お願いするわ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おお〜〜〜〜い」
「ほら、ルーク。置いていきますよ!」
呆然としたままのルークを刹那が引っ張っていく。
そう。
ランジェリーショップへ(笑)
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「・・・・・・辛すぎる」
店内は実に煌びやかな場所。派手で鮮やか、女性特有の場所、そして“男が立ち入る事はできない”雰囲気が充満していた。
そこに、店員やお客の女性の視線を集めている1人の『男』
その哀れな男の名はルーク・フォン・ファブレ。
ルークの顔は既に耳まで真っ赤だ。
女性達の視線は戸惑いや軽蔑、迷惑そうな視線もあるが、彼の童話の中の王子様のような外見に熱を帯びた視線も多い。
なら店から出ればいいじゃないかという話しだが、ルークが混乱している事もあるし、木乃香から随時話題を振られるので、外に出るタイミングを逃している理由もあった。
こういう時は、自分の優れた容姿に感謝したいルークである。
そして自分を連れてきた問題の人物たちはというと、目の前でブラジャーやらショーツやらを選んでいた。
亜子はルークがいる事が恥ずかしいようだが、それでもティアに似合いそうなものを選ぶのが楽しいようだ。
そしてティアたちは試着室へ。
なんだか賑やかな話し声が聞こえて・・・・・・。
「ルーク! ウチどう? 似合うてる?」
「ぬぉ!!」
「ちょ、木乃香! あんたそれは流石にまずいって!」
「ルーク、あなた何凝視してるの!!」
「ぶはっ!?」
「ティアお姉さん! お姉さんも見られちゃってますって!」
「―――!?」
「あ、ルーク! 鼻血が!」
とりあえず鼻血を出してトイレに駆け込んだルークは置いといて。
木乃香もアスナも刹那も亜子も、もちろんティアも下着姿。
刹那と木乃香は胸はそこまで無いために控えめな色合いのブラ。だがそれが妙にマッチしていて、首筋から鎖骨へ、そして滑らかな曲線を描く胸の形がハッキリ見えていた。
アスナと亜子。2人はそこそこだが胸はある。そしてそれに相応しいようにピンクの色の派手なデザイン、つまり勝負下着とも取れるデザインの下着だった。そしてそれは若干透き通った部分があり、2人の胸でも一番重要な場所がうっすらとだが見えてしまった。
そして何よりもティアだ。
彼女の胸はあまりにもデカかった。
アニスがメロンメロンといっていた言葉の意味が、今ならよく解る。
店内には下着も色々なサイズが置かれていて、その中でも一番大きなサイズのブラをティアはとっていた。
それは白と淡いグリーンの2つ。
今試着しているのは淡いグリーンの方なんだが・・・・・・・・・・・・ぶっちゃけ、破壊力がありすぎました。
ふくよかな曲線を描く胸元から括れた腰や妙に色気がある首筋や鎖骨。それは余りにもルークにとって威力がありすぎた。
どれくらいあったかというと・・・・・・。
「鼻血がっ! 鼻血が止まらない!」
トイレで未だにドバドバと流れ続けている鼻血の量が、それを物語っているだろう。男性諸君の皆さん、一緒に想像してみましょう、さんハイ!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「このままじゃ、失血死するってーの!」
・・・・・・激しく同意。
「やっほー! 良い天気!」
「ん〜、ホント♪」
原宿へやってきた椎名桜子に柿崎美紗。そして釘宮円のチアリーディング部の3人組。
「よっし! ほにゃらばカラオケ行くよ〜〜!! 9時間耐久!」
「よ〜〜〜〜し! 歌っちゃうよぉ、いくらでも!」
「こらこら、違うでしょ。良い天気とか言っといてカラオケかい。今日は明後日の修学旅行の自由行動で着る服探しにきたんでしょ。予算も少ないんだからいつもみたく適当に遊んでると―――」
「あ、ゴーヤクレープ一丁!」
「あ、私も!」
「話聞けー! そこのバカ2人!」
釘宮はとても苦労しているようだ。
それからは結局、釘宮もクレープを買って3人仲良く食べるという事になってしまったのだが、3人は仲良く服を選んでいた。
そして場所を中央交差点から竹下通りに入った時、柿崎の目にある人物達が飛び込んできた。
「ん? ね、ねえ、アレ!」
「どうしたのよ、美紗」
「あーーーーー!!」
柿崎の言葉に首を傾げる釘宮だったが、椎名桜子が指をさした事により、何の事か発覚した。
それは、ランジェリーショップから出てきたルーク達御一行である。
アスナや木乃香、刹那に亜子といった顔馴染みのメンバーに、ルークとそして昔の女と思しき女性。
皆ワイワイとしながら出てきて、とりあえず昼にしよう、とか話している。
ちなみに、ティアは未だに顔が真っ赤だ。よほどルークに見られたのが恥ずかしかったらしい。
一方でルークはというと。
「「「?」」」
柿崎たちは、妙にグッタリとしていて、鼻にティッシュを詰めているルークを見て首を傾げた。
どうやら失血死は免れたらしい。
「ま、まさか・・・・・・集団デート?」
「で、でもランジェリーショップから出てきたよ・・・・・・あわ、わわわわわわわわわ!」
「むう・・・・・・やるわね、木乃香たち。私もせっかく彼氏振ってフリーになったんだから困るんだけどな」
コッソリと後を追う柿崎たち。
6人の雰囲気はなんだかとても微笑ましい。木乃香がルークの腕に抱きついたり、アスナがらしくない位に傍によりそっていたり、刹那がとても優しく微笑んでいたり、亜子も反対の腕に抱きついたり。
そしてルークがデレっとする度にティアが、コホン、と唸ってルークをビクッとさせたり。
周囲の人、特に男連中がルークへと向ける視線はどれも攻撃的なものばかりだ。
「やっぱりルーク君って、カッコイイよね」
「うん。それに、なんていうか、普通じゃないっていうか、こう滲み出る優しさっていうか」
「あ、それ分かる。やっぱそこら辺の男共とはどこか違うのようね」
「それにさ、あの人。ルーク君と一緒の部屋で暮らしてるらしいよ?」
「え・・・・・・そ、そんな大人な世界が広がりそうな予感がする事に!?」
「う、うわぁ・・・・・・同棲って奴? ルーク君バレたらマズイよー。退学ものだよ!」
などと好き勝手に妄想を繰り広げて盛り上がっている釘宮たちの先では、ルークたちは移動していた。
ルークたちは昼御飯を食べに喫茶店に入ると、ゆっくりと談笑を始めた。
会話内容もごく普通のもので、修学旅行の自由行動でどこにいくのか、など色々話している。
ちなみに、ルークとアスナと刹那はサンドウィッチ。亜子と木乃香はパスタ。そして何故かティアは『お子様ランチ』を頼んでいた。ティア曰く旗とか描かれていた模様とかクマとかが可愛かったかららしい。
可愛いものに弱いティアらしい理由だが、美女がお子様ランチというのは実にミスマッチで、でもなんだか庇護欲をそそられる光景だった。
そんなティアを、亜子やアスナたちは、なんてかわいらしい人なんだろう、と思ったとか。
「可愛い・・・・・・はっ!? マズイわ! このままじゃ、ルーク君をとられちゃう!」
「ど、どうするの?」
「決まってるでしょ! 2人の、いや全員の恋路の邪魔をするのよ! 3−Aチアリーディング部の名にかけて!」
「おお―――――!!」
「なんで私だけこんな格好・・・・・・」
ノリノリの柿崎と椎名は一昔前のギャル系女子高生の格好をし、なぜか釘宮が学ランに男装という格好。
哀れ・・・・・・釘宮。
という訳で始まった彼女たちの妨害(?)大作戦。
ルークと木乃香の顔が接近しようものなら・・・・・・。
「あ〜〜〜!! クギオ君! 私コレが欲しい!!」
ドガっ!!
「ぐはっ!」
勢いで吹き飛ばされたルークは亜子の胸へダイブし、
「あ、ちょ、ルーク君! って、あん♪」
何故か胸を揉みしだいたり。
アスナがツンデレを発揮し、ルークがアスナの我が侭を聞いてあげて頭を撫でようなら・・・・・・。
「あ〜! クギオ君、あっちのアレ観た〜〜〜い!!」
「ハハハ! じゃあ行こうか!」
ドカ!
「ぶへっ!!」
弾かれたルークが刹那を押し倒す格好になり、
「ちょ、ルーク! あ・・・・・・そんなところに押し付けないで下さい!」
刹那の首筋に唇を押し付ける感じになり、勢いで跡をつけたり。
亜子が嬉しそうにルークの腕に絡めば・・・・・・。
「おっと、ごめんよ!」
「クギオ君、待って〜〜〜〜〜〜〜!!」
ドカっ!
「ゲホァ!!」
超特急暴走車に轢かれた弾き飛ばされたルークは、木乃香へダイブすることになり、
「や〜ん! ルークぅ・・・・・・こんな街中でそんな所に顔突っ込まんといてぇ!」
木乃香を押し倒して、スカートの中に顔を突っ込んだ形になり。
ティアがルークと指輪を見ようものなら・・・・・・。
「クギオく〜ん! あたしこれが欲しい〜〜〜〜〜〜〜♪」
「ハッハッハ! お安いご用さ!」
ドカッ!!
「ヌロンパ!!」
手に持っていたモノを強奪された挙句、ぶっ飛ばされたルークはアスナへダイビング!
「きゃっ・・・・・・って、なっ!? あんたどこ触ってんのよって・・・・・・あん、ちょっと、そんなに触らないで」
アスナの胸の谷間へ顔を埋める事になったルークは、離れる為に手で退けようとするがアスナの胸を掴んでしまい、そのまま揉みまくり。
そして刹那が可愛い白い羽の髪留めを見て、それを「似合ってるじゃん」と話しているものなら・・・・・・。
「あ〜〜〜〜〜!! 私あれが―――(以下同文)」
「任しておきたまえ!! ハッハッハッハッハー!!」
ドグシャ!!
「エアバーック!!」
まだ在庫があるのに、手に取ってあった髪留めだけを奪われて弾き飛ばされたルークはティアへと特攻することになり・・・・・・。
「ん!? んん・・・・・・ちゅ・・・・・・ルークぅ」
「「「「あ〜〜〜〜〜〜!!!」」」」
ティアと街中であつ〜いキスをする事になったりした。
ちなみにティアはその後、ポーッとして頬を赤らめ、ときどき思い出すように身をくねらせて唇をなぞっていた。
木乃香がキスをねだったのは、ルークにとって限界だったようだ。
折角とまった鼻血が再び大噴射。
ルークはついに貧血で倒れてしまった!(笑)
「わたしたちって邪魔になってないんじゃ・・・・・・」(柿崎)
「むしろ手助けしてたような・・・・・・」(椎名)
「というか、下手したらルーク君が嫌われてるよ、今の。まあアスナたちが嬉しそうなのはおかしいと思うけど」(釘宮)
そんな空回りがあり、ルークも何とか輸血により復活した。
その後、修学旅行の為の買い物をなんとか終えたルーク達は、アスナの誕生日プレゼントの靴や服をプレゼントした。
「ありがとう、みんな。あたし、嬉しいよ」
「アスナが泣くなんて、明日は嵐かもな」
「もう、ルーク! そんないぢわるなこといっちゃあかんえ?」
「そうですよ、ルーク。ところでルークは何を上げるんですか?」
「ああ、俺は何を買っていいのかとか分からなかったから、ティアと一緒にアスナ用に改造したこれだ」
「・・・・・うわ、これすごい綺麗・・・・・・でも、高そうな腕輪」
ルークとティアがお互いを見合って頷き、差し出してきた箱の中に入っていたのは、一つの腕輪。
だがただの腕輪ではない。
フォニッククレストという、腕輪の中では2番目に守備力が高い代物だ。ちなみに1番はアスナがつけても意味がない為にこれになった。
その腕輪に、宝石のブラックオニキスとマジックミストとアレキサンドライトという3つの宝石を装着した、改造腕輪だ。
ブラックオニキスは体力を30%も向上させ、マジックミストは逃走速度の上昇、アレキサンドライトは体力と魔力を25%も向上させるものだ。
まさにめちゃくちゃかつ最強な腕輪である。ちなみにこの腕輪は茶々丸に協力してもらって、こちらの世界の科学の力のおかげで実現した。
この世界ならではの腕輪と言おうか。
そのデザインもセンス良く、ティアがカッコ良くデザインしたものだ。
・・・・・・ちなみに、これはアスナの個人情報から得た、後の為に手を打っておく、という意味も強かったが、それはアスナは知らない。
「ありがとう、ルーク、ティアさん。大切にするね」
アスナは嬉しそうに腕輪を装着する。魔法無効化能力でどうかと思ったが、やはり装備系は無効化できないようだ。
もっとも、それが魔力を帯びている事には木乃香や刹那も気付いていたが、何も言わなかった。
こうして、ちょっとしんみりした雰囲気が漂いつつあった中、突然物陰から飛び出してきた人物たちがいた。
当然、これまでこっそりと尾行していた柿崎たちである。
「「「アスナー! 誕生日おめでと〜〜〜!!」」」
「わっ! 柿崎たち!? あんたたちいたの!? いつから!?」
「ま、まあ、そんな事はどうでもいいじゃん。それよりこれからアスナの誕生日を祝ってカラオケへGO〜〜〜〜!!」
「え、ええ〜〜!?」
知らぬが仏、バレたら地獄行き確定だ。柿崎たちは懸命に隠しながらアスナを連れ去る。
絶叫を上げながら連行されるアスナを見ながら、彼女たちの尾行に気が付いていたルークたちも苦笑しながらついていった。
その日は結局、帰るのが深夜になった。
明後日の翌朝。7時に起きたルークとティアは早速準備にとりかかっていた。
荷物はティアのものも合わせてルークの鞄に1つに纏めた。
そして装備品や回復アイテムなども袋に詰めていく。完全に準備が終わると、8時になっていた。
ちなみに一昨日の帰ってきた晩と昨日は大変だった。
急展開のキスで激しくテレていたティアは、ルークとまともに顔を合わせてくれないし、ミュウは拗ねてるし。
2人(?)と普通の状態へ戻るのに、とても苦労したルークであった。
―――それにしても、ティアの唇は柔らかかったなぁ・・・・・・かなり名残惜しいっつーの。
ティアとの初キスを反芻しているルーク。こちらもしばらくは重傷だ。
玄関に来ると、ティアはルークから昨日に受け取った薬を手に確認してきた。
「この飴玉を舐めるといいのね?」
「ああ、そしたら小さくなるらしいけど」
「ティアさんもミュウと同じくらいになるですの? なんだか楽しみですの!」
ルークの肩に乗っていたミュウは、ワクワクしながらティアに言う。ティアは最初は躊躇していたが、思い切ってその飴を口に入れた。
するとどうだ?
しばらくすると、ポン、という音と共に白い煙が上がり、その中から20センチ程度まで小さくなったティアがいるではないか!
「う、うお・・・・・・可愛い」
「ル、ルークっ・・・・・・やめて、恥ずかしいわ」
小さくなったティアはお人形のようだ。ティアは自分の身体に異常がないかさぐり、大丈夫そうだと確認すると安堵するように溜息を吐いた。
ルークはティアへそっと手を伸ばし、彼女を包み込むように掴む。
自分の胸ポケットに入れる為だ、誤解しないように!
だが。
フヨン♪
(な、なんか指に柔らかな感触が・・・・・・うぐっ、やばい、また鼻血が出そうだ)
「ルーク、どうかした?」
感触で分かっているはずなのに、こういう事には鈍感なティア。彼女の態度にルークは慌てて胸ポケットへ運ぶ。そして上着を着て見えにくいようにした。
「な、なんでもない。あ、息苦しくないか、ティア?」
「大丈夫。むしろなんだか心地良いくらい」
「そっか。それは良かった」
「ええ」
麻帆良学園の男子制服を着たルークは、朝っぱらから邪な想いを抱えたまま出発した。
「ふふ・・・・・・」
大宮の駅が集合場所になっているので、そこへ向かっている最中だった。
突然ティアがおかしそうに笑った。
「どうかしたのか、ティア?」
「ええ、なんか小さくなるとこんなに視点が変わるものなんだなって」
ルークを見上げながら話すティア。少し首が辛そうだ。
「そうなのか?」
「そうなのよ。それに・・・・・・」
「?」
「暖かい・・・・・・ルークが。なんだか、嬉しくって・・・・・いい匂い」
そっとへばり付いてくるティア。
その言葉に、ルークは何も言わずにティアの頭を人差し指でそっと撫でた。
大宮の駅へ着くと、時刻は8時半。
まだ集合時間の30前と、結構早めのはずなのだが・・・・・・。
「「「「あ、ルーク君! おはよう!!」」」」
「おはよう、和泉。みんなはやいな」
すでにクラスの大半が集まっている。というか、一番遅いかもしれない。
そして皆のテンションは異常に高い。高すぎるといってもいい。
「なんだ、俺が一番遅いのか。これでも早くきたつもりだったんだけどな。明石や大河内たちは何時に来たんだ?」
「えーとね・・・・・・始発できたから・・・・・・4時半くらいかな」
「はやっ!! そりゃ早すぎだろ!!」
「それはちょっと早すぎね」
ルークのキレのいい突っ込みに照れる明石ゆうなと大河内たち。待ちきれなかったらしい。
ティアも同じようで、少しビックリした顔をしている。
そうこうしているうちに号令の時間となり、全員が速やかに新幹線へ乗り込む。
「あれ、そういえば、俺ってどこの班なんだ?」
「あ、ルークさんの班はですね、5班になります」
「お、ネギ。そうなのか?」
「はい。師匠、エヴァンジェリンさんや茶々丸さんが来れないようなんで、本当は6班だったのが解体されて各班へ組み込まれたんです」
「なるほどね」
「・・・・・・あと、木乃香さんの笑顔の脅迫で」
「は?」
「い、いえ、何でもありません!」
そういって走り去っていくネギ。なんていったのか聴こえなかったが・・・・・・・。
あ、ネギが雪広に捕まった。あ、引きずり込まれていく。
ま、がんばれ。
ルークは南〜無〜と祈ってから木乃香たちの座る席へ向かう。
「あ、ルークやっときた。な? 言ったとおりやろ? 同じ班やって」
「ああ、ほんとにな。知らなかったからビックリした」
「ウチがネギ君に頼んだからな。友好的に決まったわ」
「? そうか」
木乃香の言葉に少しひっかかりながらもルークは隣へ座る。
隣には刹那もいて、そこへアスナも加わり4人でペラペラと喋りながら新幹線は発進した。
しばらくすると、カードゲームでお菓子を賭けた争いが起ったり、歌ったりとどんどん賑やかになってくる。
(さてと・・・・・・そろそろ注意しておかないとな)
ルークは通路を横切る人に警戒しながら、アスナたちと談笑する。
すると、ついに事が起った。
「キャ―――――――――――――!!」
突如起った悲鳴に、ルークはさっと起き上がり、そこへ駆けつける。
何が起こったのかと思うと、そこには大量のカエルが。そのカエルの所為で辺りは大混乱だ。
「・・・・・・なんでカエルだよ」
ゲコゲコとカエルの合唱がすさまじい。
というより五月蠅いくらいだ。
ルークはくだらない“妨害行為”に呆れてしまい、馬鹿らしくて収拾つけずにネギに押し付けて席へ戻った。
「なんなの、あのカエル・・・・・・」
アスナは呆気にとられているようだ。まあ、その気持ちはよく分かる。
ルークは席に座ると、ふとこの騒ぎでも何も言わないティアに気になり、そっと懐を覗き込んだ。
「クー・・・・・・クー・・・・・・」
彼女はお休み中。
ルークの胸元が温かくて心地よかった所為か、ぐっすりと寝ていた。
寝顔も普段見ていた綺麗とかではなく、とても可愛らしい。人形サイズになったティアは子供みたいだ。ちなみにミュウもカバンの中で睡眠中だ。
ルークはティアの寝顔を愛しそうに眺めながら、跳んできたツバメを叩き落したり、木乃香とトランプしたりしながら過ごした。
ゆっくりと、新幹線は京都へ向かっていた。
そう。
関西呪術協会総本山がある地へ。
あとがき。
TODDC発売!! おめでと〜〜〜〜!!
その記念にUP☆
そしてついに、ルークとティアの初キス!!
・・・・・・ムードも糞もへったくれもねぇ(笑)
まあ、それがネギまらしいと思いますし、そっちの方が面白いかなぁと思ったのは内緒です。
そして本編は少し暴走しております。リハビリの効果は少しはあったのか!?www
・・・・・・でもなんか、文章が変態じみてるような・・・・・・・・・・・・(汗)
注意:管理人は普通嗜好の普通の感性の持ち主であり、作中に描かれている描写を望んでいる訳ではありません。
執筆中BGM 【夢であるように】【ハレ晴れユカイ】