「由々しき事態が起こりました・・・・・・」
「そやねぇ・・・・・・ルークも満更じゃなかったし」
「そんな・・・・・・うちだってルーク君の事気になっとったのに」
「あ、あたしは、べ、別に・・・・・・」
「ですが、一つ屋根の下で、あんな・・・・・・クラスナンバー1の那波さんに匹敵する大きさの持ち主が・・・・・・」
「ちょ、それって大きすぎなんじゃないの!?」
「そうです・・・・・・そしてあんなに美人で大人・・・・・・危険です」
「「「「「「危険!?」」」」」」
「ということで、何か対策を練りましょう」
「協力するわ!」
第10章 ティア来訪1日目
―――朝。
ロフトで目を覚ましたルークは、朝から飛び込んで来た凄まじい光景に声にならない悲鳴を上げることになった。
「○£▽@★◇☆×♯〜〜〜〜〜!?」
ズザザザザと後退して壁にぶつかる。口をパクパクさせて顔は真っ赤だ。
実はルークが心地よい朝日を浴びて意識を覚醒させて目をゆっくりと開けた時、まっさきに飛び込んで来たのが、ティアの寝顔だったのだ!
しかも、ルークのTシャツを寝巻き代わりにしていた為、微妙に体のサイズに合っていなくて、襟元からティアのメロンが微妙に見えていたりする。
前の世界ではティアたちと同じ宿で寝泊りすることはもちろんあったが、部屋は別々だった。
こっちの世界でも旅をしていた時、難民キャンプとかでも女の子と同じ部屋で寝ることはあった。
だがそんな事を意識するような空間でもなかったし、雰囲気でもなかった。そしてそんな年齢の子でもなかったのだ。
従って・・・・・・。
「あああああああああああああああああぁぁぁぁ! 煩悩退散! 煩悩退散だっつーの!」
純情ルークは鼻を押さえながら全力で外へと走っていったのであった。
「みゅみゅ!? ご主人様・・・・・・どこかいっちゃったんですの」
その一部始終をバッチリと見ていたのだが、みゅうにはその気持ちがさっぱり解らなかった(笑)
「うわっ!? あ、あれ? あいつって、ルーク?」
目の前を物凄いスピードで自分を抜いていった物を見てアスナはビックリしたが、それが自分が知る、そしてなんだか気になる少年である事に気がついた。
昨日は物凄い戦いをしていて、今日は動けないんじゃないか、休みかもなぁと思っていて、刹那さんたちとの会議で色々と作戦を練っていたが、まさか渦中の人物がこんなに朝早くに現れるとは思ってもみなかった。
ルークの首や腕、頭や足には包帯が巻かれているが、彼の尋常じゃない様子にアスナは戸惑いながら声をかけた。
「ちょっと! ルーク! どうしたのよ!?」
「あ、カグラザカか」
「アスナでいいわよ。で、どうしたのよ。なんだかものすごく慌ててたけど」
「い、いや、巨大メロンが目の前にチラリと」
「? 巨大メロン?」
「い、いや! 何でもありません!」
「・・・・・・ちょっと詳しく教えなさいよ」
ルークの態度と言葉に不穏な気配を感じ取ったのか、アスナはズイッと顔を接近させて吐かせようとする。
「い、いや、その、ほら、なんだ・・・・・・あ! そういえばカグ、じゃなかったアスナ、バイトはいいのか?」
「あっ、そうだった・・・・・・ん〜なんか気になるのよね」
「いやいやいや、どうぞお気になさらず・・・・・・じゃ!」
「あ! こら、ちょっと! 待ちなさいよー! もう・・・・・・後で吐かせるからね!」
「た、ただいま・・・・・・」
「ルーク!!」
やっと落ち着いたのか、ランニングの所為で汗まみれになって帰ってきたルーク。
ルークの声が聞こえたのか、ティアが慌てて駆けつけてきた。彼女の様子に首を傾げる。
「どうかしたのかティア?」
「どうかしたのかじゃないわよ、昨日の今日で心配しないと思ってるの!? 私、また貴方がいなくなったと思って不安で・・・・・・」
ティアが悲しそうな顔を浮かべてルークに懇願していた。
ルークはこの時初めて知った。
自分が消滅して、あれだけ冷静かつ表に感情を出さなかったティアが、どれだけ感情面が起伏が激しくそして弱くなったかということに。
「ご、ごめんティア・・・・・・」
すまなそうにしていると、そこへみゅうがやってきた。
「ティアさん! ご主人様は煩悩退散がどうのとか言って走っていったですの! きっとマラソンですの!」
「!!」
「煩悩?」
みゅうの言葉にギクリとなるルーク。
ティアはその言葉があまり良い意味がないので、首を傾げて問い詰めた。
「・・・・・・ルーク、どういう意味?」
「い、いや、起きたら目の前にティアの寝顔があって、それで可愛いかったから・・・・・・」
「え・・・・・・///」
嘘つくなよルーク。
いや、一応本音も混ざってるか・・・・・・。
「も、もぅ・・・・・・恥ずかしいから、あまり見ないでよね」
「わ、わかった」
なんとかごまかしに成功したみたいだ。
昨晩は女子寮に住んでる事を説明するのにすごく時間がかかったし、ご機嫌とりも大変だったのだ。
いらぬ言葉、というかセクハラな発言は避けるべきだろう。
ルークは若干の挙動不審な行動を見せながらもシャワーを浴びに風呂へと入っていった。
風呂から上がり、キッチンへ顔を出すとそこにはコンロの使い方が解らず困り果てていたティアの姿が。
ルークはティアに丁寧に説明しながら、仲睦まじく朝ごはんを作ったのである。
そして、そんな2人をみゅうはとても嬉しそうに眺めていた。
朝ごはんを食べ終わると、強襲をかけるかのごとく刹那・木乃香・アスナ・長瀬・龍宮・学園長・タカミチ・そしてエヴァンジェリンと茶々丸がやってきた。
刹那たちが「何もありませんでしたよね?」と問い詰めてきたが、俺から言わせればそんなことに答えられる訳がない。よって誤魔化した訳だ。
ルークとティアがお茶を人数分用意して配り席に着くと、近衛学園長が口を開いた。
「ふむ、昨晩はご苦労じゃったなルーク君。君が無事で安心したわい」
「ありがとうございます」
「君が始末した連中はワシ等に任せればよいからの。それで聞きたいのは君が戦闘した中で、瓜二つの男のこと、そして持っていた武器のことなんじゃが・・・・・・」
学園長が示唆する気持ちはよくわかる。あれがもしこの世のどこかにあって、それが悪人の手に渡れば間違いなく世界は終わる。
だから聞いておかねばならなかったのだろう。
「あの武器は『ローレライの鍵』というものです」
「ローレライ?」
全員が首を傾げる。エヴァンジェリンは興味深そうな表情だ。
「まあ簡単にいえば、世界を創造した神の力の結晶とでもいいましょうか」
かなり大雑把だし、微妙に意味合いは違うのだが、それでも本質的には間違っていないはずだ。
ティアがルークの言葉に付け加えるように言った。
「ですがあの男については大丈夫です。彼はこの世界にはいませんから」
「ちょ、ちょっと! 創造した神だとか、この世界だとか訳解んない事言って、馬鹿にしてんの!?」
アスナが興奮気味にテーブルを叩いて立ち上がる。
そんなアスナを、意外にもエヴァが諌めた。
「おい馬鹿レッド。いちいち怒鳴るな、突っかかるな。お前は本当にサルか? 解らないなら解るように努力したらどうだ」
「うぐ・・・・・・」
ちなみに馬鹿レッドとは、3年A組の最強馬鹿5人衆・バカレンジャーの1人という意味だ。
まあ、たしかにアスナの頭はお世辞にも良いとはいえないからなぁ・・・・・・。
学園長はこの世界にない、という言葉に安堵する。
「ふむ・・・・・・それなら安心かのぉ」
「ええ。正直いってあのマジックアイテム・・・・・・いえ、ローレライの鍵は桁外れです。ナギの全力の魔法力でもあれには及ばないでしょう」
タカミチが解り易い例えで、簡潔に自分の考えを述べる。
エヴァンジェリンもその意見には同意らしく、コクリと頷いた。
だが。
「あ〜、すいません。実はローレライの鍵は俺ももってるんです」
「「「「「「「なっ!?」」」」」」」
「いえ、だってあの相手は、あの術は記憶の戦いを再現するものでしたでしょ? だからあれは本物じゃないんですよ」
ルークの言葉にタカミチは焦りながら問う。
「じゃ、じゃあキミはいつでもあれを出せるというのかい?」
「いえ、俺の体の中にあるんで、なんともいえないんですが・・・・・・どうなんだろ」
「・・・・・・ますます、キミを保護しなければならんの」
学園長はふぅ、と溜息を吐いた。
それは面倒だという意味ではなく、少々呆れた意味がこもっていた。
すると、それまで黙って話しを聞いていたエヴァが口を開いた。
「だがルークはそれに追随する力を持っているのだろう? あの激突の瞬間、お前にもあれに匹敵する、いや下手したら上回る力の波動を感じた」
全員がその激突の瞬間を思い出したのか、ゴクリ、と唾を飲む音が広がった。
それほどあの激突は危険かつヤバかったということだろう。
エヴァでさえ、内心は震えが来るほど恐れたのだから。
「あれは・・・・・・」
「ダメよ、ルーク。それは言っちゃダメ」
ティアがルークの言葉を遮った。ティアには何を使ったのか容易に想像できたからだ。
エヴァがギロリと睨むが、ティアも負けてはいない。
「何て言おうがダメです。この情報だけは、力だけは洩らす訳にはいかないの」
それは第2超振動と呼ばれる最高の力。
ティアはこの世界の事をルークに大雑把に聞いて、何となく予測を付けていた。
何故、魔力しかないはずの世界で『ティアが』譜歌を唱える事ができたのか。ルークの予想では中にあるローレライが還元していると思っていたのに。
ティアの考えはこうだ。
この世界にも魔力や系統がいくつかあって、自分達の第1音素がこの世界の何かの魔力に該当する、おそらくまだその系統が発覚していないだけなのだと。
第7音素にあたる魔力系統が、魔法界でも発見されていないだけなのだ。
エヴァとティアの間に微妙な雰囲気が漂い始めた時、やはりKYな学園長は口を挟んできた。
「フォッフォッフォ。まあ良いじゃろ。ではフェンデ君は住居はどうしたいのじゃ?」
「ええ。私はここに住みたいと思っています」
「ふむ、いいじゃろ。そちらの方がこっちとしても都合が良いからの」
「「「学園長(おじいちゃん)!!」」」
なんだか不満の声が上がってるな・・・・・・なんでだ?
しかもティアがなぜか俺に殺気を向けてきてるし(汗)
くそ、エヴァめ。ニヤニヤしやがって。
だが学園長の暴走スキルの前には彼女たちの不満など暖簾に腕押し、馬耳東風に等しい。
ゴリ押しでティアの住居も決まり、ティアの生活費を揃える為にこれまでのルークの働きのバイト料が渡された。
これまでは無償奉仕で木乃香を狙う連中からも守っていたので、ちょうど良い機会じゃ、と言って渡してきたのだ。
学園長とタカミチが帰ってからが本当の地獄だったと、ルークは痛感することになった。
まずティアの日用品を一通り揃える必要があると判断し、こちらの世界のものを買いに出かけた。
ティアも鞄にいろいろと詰めていたとはいえ、それは戦闘用の道具やアイテムだったり、ハブラシやタオルといった生活必需品だけだ。
化粧道具すらないし、衣服も替えは一着しかない。しかも戦闘用の服である。
それはあちらの世界ではそんな余裕がなかったというティアの心境を顕著に表していたのだが、こちらの世界の住人にはそれが我慢ならなかったようだ。
木乃香たちが揃って連れ出した訳だが・・・・・・何故かルークまで道連れになったのだ。
しかも彼女達自身も服を着たりとファッションショーの様な感じになっていき、その度に感想を求めてくるのだ。
ティアの傍で、である。
しかも腕を絡めてくるし(主に木乃香が)
妙に近いところに寄り従ってくるし(主に刹那が)
何故か顔をほのかに紅くして服の感想を事あるごとに求めてくるし。(主にアスナが)
その度に凍てつく波動が発せられるし(ティアのみから)
みゅうは意味不明に俺のポシェットの中で(隠すのが目的)なぜか大喜びだし。
全てのステータスが正常に戻った俺には、この状況は辛かったよ・・・・・・母上。近衛木乃葉母上。
「この世界はほんとに音機関が進んでるわね・・・・・・」
「いや、音じゃないんだって」
「じゃあ何の動力で動いてるの?」
「ほとんどが電気」
「?」
あ〜! もう!
首を傾げるこのしぐさ! 可愛いなぁ!
ルークは内心湧き上がる衝動を必死に抑え込んで壁を造った。
だが決壊してしまった!(はやっ!)
「「「なななっ!?」」」
「〜〜〜〜〜〜っ!?」
「ティアさん、うらやましいですの〜! みゅうもしてほしいですの〜!!」
「はっ!?」
やべ〜〜〜! 意識が飛んでた! つーか、ティアが顔真っ赤だ!
そう! ティアは今は俺の腕の中だ。
あ〜、でもティアは良い匂いがするなぁ〜。暖かいし、髪もサラサラだし・・・・・・。
俺は女好きじゃなかったぞ? アッシュのナタリア狂じゃあるまいし。
だがな、なんとなくその気持ちも解ってきた。
ティア狂になりそうだっ!
「「「ルーク!! いつまでくっついてんの(よ)!?」」」
「ぬおっ!?」
3人が俺とティアを引き剥がすように、ぐいっと引っ張った。なんかアスナと刹那がめちゃくちゃ怒ってるし。
つーか、ティアが残念そうな顔してるっつーのは、どういうことだ?
すると、クイクイと袖を引っ張られる感触が。
それは木乃香だった。
なんだか俯いていて、表情が伺えない。
「ど、どうしたんだ木乃香?」
「ル、ルークぅ・・・・・・」
「!」
顔を上げた木乃香は目を、ウルルン、と潤ませて上目遣いに見てきて言ったのだった。
「うちも、ぎゅっとしてほしぃなぁ」
ぐはぁっ!!!!!!!!
母上・・・・・・木乃葉母上・・・・・・俺の理性はそろそろ限界です。
「もちろん!!!!!!!」
そして交わされる抱擁。
それはティアの時と変わらぬ抱擁。
木乃香は嬉しそうにぎゅっと抱きしめ返してきて、刹那とアスナは「な・・・・・・な・・・・・・」と固まっている。
ティアは先ほどの俺のいきなりの抱擁で固まってしまっていて、気付いていない・・・・・・ような気がする。
「あんたぁ! 木乃香に何してんのよ!!!」
「ぐはぁ!!」
アスナの強烈なアッパーを食らった俺、ルーク・フォン・ファブレは綺麗に空を舞った。
最後に一言。
ツルペタだけどティアとはまた別の良さがある!!!
あとがき。
あれ・・・・・・・・ルークのキャラが違う?
とにかく、あけましておめでとうございます!
元旦深夜にうpします!
今年もみなさんに、ティアの温もりのような幸せがありますように\(≧▽≦)/
執筆中BGM 【ハレ晴れユカイ】←知ってる人は・・・・・・もちろんたくさんいるよね?(笑)